第16話:誘拐犯の前ではお静かに
武器と防具を揃えた俺達は、王都からしばらく歩いた所にある洞窟の前にいる。
あのガキが言うには、誘拐犯のアジトはこの洞窟らしい。
ちなみに、あのガキは王都に置いてきた。
というか、ジョセフが同行を頑なに拒否していた。
「君には危険すぎる!後は僕達に任せるんだ!」
だとさ。
そこは
しかし、わざわざ置いていかなくてもいいじゃねーか。
いざとなったら、あのガキをおとりにして逃げることができるかもしれねーのによ。
流石は勇者様だよ。
「犯人はどうやら4人程のようだな」
隣のジョセフが俺に囁きかけてきた。
「しかも、かなり連携しているような・・・ま、まさか彼らは、噂に聞く『無職狩り』!?」
いや『無職狩り』て。まんまじゃねーかよ。
「またの名を・・・」
おっ、またの名があったよ。
「『無職の狩人』」
結局まんまじゃねーかよ!しかも若干ニュアンス変わるし。
『無職の狩人』だと、職のない奴が狩人してるみたいじゃねーかよ。
っていうか、狩人も立派な仕事だよ!
俺はそうツッコみながらジョセフの手元に目を向けると、ジョセフ緊張のためか、ギュッと剣を握っていた。
人の金で買った剣で、緊張をほぐそうとするなよな。
っていうか、さっさとその剣と宿の代金返せよ?
「あ!!」
そこで俺は思い出した。
そういえばこいつ、魔王討伐の報奨金がいくらなのか、聞いてねーじゃねーか!
いや、俺はほら、なんかめちゃくちゃ見下されてイライラしてたし?
そんな事聞く余裕とかないじゃん?
っていうか、あの
俺が1人、誰にともなく言い訳をしていると。
「ちょっ、キンジ!騒いだら見つかるだろう!?」
ジョセフが怒鳴ってきた。
「いや、お前だってうるさいだろ!?っていうかお前、あの
「いや忘れてたけど!今じゃないよね!?絶対それは今じゃないよね!?」
「うるせーっ!俺にとってはそっちの方があのガキの親父助けるよりも大事なんだよっ!」
「なっ、君という奴は!人の心というものを―――」
「お前達、ここで何をしている」
「「あ・・・・・」」
いつの間にか俺達は、4人の男達に取り囲まれていた。
ジョセフのせいで。
いや、俺は悪くない。
全ては報奨金の事を聞かなかったジョセフのせいだ。
「か、観光、かな?」
ジョセフが苦し紛れにそう言って男たちを見ていた。
いや、流石にそれは無理があるだろ。
「お前、それは流石に無理があるだろ」
あ、かぶった。
「こいつらもあそこに押し込んでおけ!」
リーダー格の男がそう言うと、周りの男達がジリジリと近づいてきた。
捕まってたまるかよっ!
俺はリーダー格の男に向かって、殴りかかった。
さぁ、反撃してこい。お前の攻撃、しっかり【貯蓄】してやるよ!
俺が笑いながら殴りかかろうとすると、リーダー格の男は手を俺の方にかざし、
「バカが」
そう呟いた。
その瞬間、俺の意識は遠のいていった。
・・・・・ここはどこだ?
いつの間にか眠っていた俺が目を覚ますと、周りは薄暗かった。
「キンジ、目を覚ましたのかい?」
ジョセフが心配そうに、俺の顔を覗き込んできた。
「一体何が起きた?」
「キンジ、君はあの男のスキルにやられたんだよ」
「スキルだと?」
おかしい。俺はあいつの攻撃を【貯蓄】するつもりだったんだぞ?
何故【貯蓄】も出来ずに攻撃を受けたんだ。
「あぁ。おそらくあいつは、魔法系のスキルを持っているんだろうな。君に雷を落としていたよ」
俺の言葉に、ジョセフはそう頷き返した。
魔法系のスキル、だと?
つまりは魔法攻撃ってことか?
だから、物理攻撃を設定している【貯蓄】では、貯蓄できなかったってことか?
「ジョセフ、スキルってのは他にどんなものがある?」
「こんな時に何を―――」
「いいから、教えろ」
「わ、わかったよ」
俺が睨みつけると、ジョセフは渋々ながらもスキルについて簡単に話しだした。
どうやらスキルは、【攻撃系】【魔法系】【能力向上系】【特殊】の4つに分かれるらしい。
【攻撃系】はその名の通り。
剣などの武器と併用するものから、物理的な技を出すものまで、その種類は様々にあるようだ。
しかしどのスキルも、物理的に相手にダメージを与えることに変わりはないらしい。
【魔法系】もその名の通りだ。
火や水、あのリーダー格の男のような雷など、属性に応じたスキルがあるらしい。
ジョセフの言うところでは、あのリーダー格の男のスキルは【雷魔法】ってことらしい。
【能力向上系】は、スキルの持ち主の能力を常時向上させるスキルらしい。
要はパッシブスキルだな。
ジョセフの【落下ダメージ無効】【物理ダメージ半減】【魔法ダメージ半減】なんかはこれに当たるらしい。
【特殊】ってのは【攻撃系】【魔法系】【能力向上系】の3つのスキルに当てはまらないスキルらしい。
おそらく、俺の【貯蓄】なんかがこれなんだろう。
【特殊】ってのはいまいち他にどんなスキルがあるかはわからんが、とりあえず抑えるべきは、物理攻撃と魔法攻撃ってことか。
俺はしばらく考えて、そっと目を閉じた。
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