第15話:武器と防具は装備しないと意味がないよ
王都のギルドでガキに絡まれた俺達は、結局そのガキの話を聞く羽目になった。
俺はそっとその話の輪から外れるつもりだったが、
「キンジも助けてくれるだろう?」
そう言って縋るような目を向けられた途端、クソったれ首輪が俺の首を締め付けやがった。
この首輪、ジョセフの命令だけでなくお願いにも反応するのか?
だとしたらマジで面倒な代物だ。
とにかく、ガキの話を簡単に纏めると、どうやら親父さんが何者かに誘拐されたらしい。
いや、普通こういう時は美女とかが誘拐されるとこだろ。
なんでオッサンばっかり助けなきゃいけないんだよ。
いや、それ以前に、なぜ俺が人助けなんかしなきゃならない?
しかも誘拐犯だぞ?
絶対危ないじゃないか。
それ以上に面倒臭い。
話に聞いたところガキとその親父、無一文らしい。
なんでも、親父さんは無職らしい。
いや、仕事してないんじゃなくて、持って生まれるはずの【職業】がないんだと。
そういうやつはたまにいるらしく、やはり周りからは虐げられるらしい。
しかしそんな【無職】よりも、【奴隷】が下らしい。
いや、おかしくないか?
一応職あるってのに、なんで【奴隷】の方が下なんだよ。
まぁおそらく、【無職】よりもさらに数の少ない【奴隷】を低い地位にすることで、【無職】の奴らのうっぷんを晴らすのが目的だろうな。
ほんとにくだらねー。
【職業】なんかに縛られてたまるかっての。
ほんとクソみたいな世界だな。
まぁ、俺みたいなクソ人間にはもってこいの世界ってことか。
ってそんなことはいいんだよ。
ガキの話を聞かされたって話だったよな?
まぁ、聞いてたのはジョセフだったわけだけど。
っていうかこのあのガキ、俺の方になんて見向きもしないでやんの。
【奴隷】になんて話し掛けるつもりもないみたいだな。
こっちだって、文無しのガキになんて用はねぇんだよ。
ギルドにいたモヒカン男の言うことは正しいな。
助けて欲しけりゃ、金を準備しろってんだよ。
と、俺がどれだけ考えたところでウチの
ガキの話を聞いて、助けに行く気満々になりやがった。
で、もちろん俺を見るという。
で、俺はというと首輪に締め付けられて、ジョセフと一緒に金にもならない人助けをする羽目になったわけだ。
「じゃぁクリオ君、犯人達のアジトの場所を教えてくれっ!」
そう言って立ち上がるジョセフの首根っこを、俺は掴んだ。
聞いたらすぐにでも走り出しそうだったからな。
「何するんだキンジ!早くクリオ君のお父上を助けに行かないと!」
どうやら、ガキの名前はクリオと言うらしい。
まぁ、どうでもいいけど。
「おまえバカか?誘拐するような奴らが相手だぞ?いくらお前のスキルでも、丸腰で行くのは危ないんじゃないのか?」
「・・・・・・・・あ」
こいつ、マジで何も考えてねーのか。
この首輪、ジョセフが自分から死地に飛び込んで死んでも、俺を道連れにしないでくれねーかな。
(主人が寿命以外で死んだ場合、奴隷は自動的に死を迎えます)
はいはい、わざわざありがとうございます!
この声、オフにできねーのかな?
スゲームカつくんですけど。
とにかく俺達はその足で、武器と防具を買いに行くことにした。
金、足りるのか?
っていうか、俺が言った以上ジョセフの分まで買わねーといけないじゃないか。
ま、そりゃ自業自得か。
ちゃんと返済させるしな。
とりあえずガキの案内で店に到着した俺達は、各々好きな武器と防具を選んだ。
俺は革でできた手甲と鎧を選んだ。
せっかくこんな世界に来たんだから、本当は剣を買いたかったさ。
ただ、今のところ【返済】は、殴る時にしか使っていない。
剣で効果があるのか分からなかったから、とりあえず手甲にした。
手甲自体の攻撃力はそれほどでも無いようだが、無いよりはマシだろう。
金属製の武器と防具もあったが、いかんせん高い。
流石に予算がオーバーするだろう。
そう思いながらジョセフに目を向けると、ジョセフは剣と盾、そして金属製の鎧を身に纏っていた。
「って、予算オーバーじゃねーか!ジョセフ、お前その鎧は諦めろ」
「えぇ!?だって、キンジは鎧、着ているじゃないか!?」
「俺はいいんだよ!俺の金だぞ?それにお前にはスキルがあるだろ!?盾がありゃぁ、お前なら大丈夫だよ!」
俺は無理矢理ジョセフから鎧を剥ぎ取って、支払いを済ませた。
結局、予算ギリギリだったじゃねーかよ!
俺の鎧も諦めるか?
いや、駄目だ。
それじゃ今までと変わらない。
金も大事だが、命も大事だ。
これは必要経費ってやつだ。
ふっ。この俺が必要経費なんていうことになるとはな。
俺も成長したみたいだな。
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