第14話:冒険者ギルドへ

ひとまず話し終えた俺とジョセフは今、ギルドとやらに来ている。


あのと言うことを聞くのもシャクだが、どうやらジョセフをさっさと強くするには、ここで依頼とやらを受けるのが一番らしい。


なんてったって勇者様は、人助けしただけでもレベルアップするらしいからな。


そこで俺達は、ギルドの受付、ポロア嬢から一通りの説明を受けた。

ちなみにこのポロア嬢、でかい胸を惜しげもなく披露してくれている猫の獣人だ。


あぁ、ムラムラする。


なんでこう、受付ってのはいい女が多いんだよ。


俺がポロア嬢から目を逸らしてその奥に目を向けると、そこでは暗そうな男がひとりで黙々と事務作業していた。


・・・・・よし、少し落ち着いた。助かったぞ、暗い男!


「では、冒険者の登録をさせて頂きます」

そんな俺と、礼儀正しく話を聞いていたジョセフにポロア嬢がそう言って見たことのある水晶を取り出した。


嫌な予感がする。


「職業を確認させて頂きますので、こちらに手をかざして下さい」

ポロア嬢はそう言って、満面の笑みを浮かべていた。


可愛いな。

じゃない。またこのパターンかよ。

ポロア嬢に見下されるは・・・・

いや、それはそれで・・・


俺の新たな扉が開かれようとしている内に、俺に気を遣ったジョセフが直ぐに水晶へと手をかざしていた。


「ゆ、勇者?」

ポロアはそう呟いたのと同時に、顔を赤くしていた。


「あなたが伝説の勇者なのですね!お、お会いできて光栄ですっ!」

ポロア嬢はそう言って、ジョセフに熱烈な視線を送っていた。


いや、こいつ伝説になんかなれるのか?

しかし、俺の職業を知った時、この表情がどう変わるのかは楽しみだな。


俺はそんなことを考えながら、水晶へと手をかざした。


「勇者の、ど、奴隷!?」


さぁ、俺を見下してくれポロア嬢っ!


俺が水晶から視線を上に上げるとそこには、ポロア嬢ではなく後ろにいたはずの暗い男がいた。

俺に道端の石ころでも見るような目を向けて。


お前じゃねーよ!

お前の視線とか求めてねーんだよっ!!


俺が男を睨みつけると、男は俺を無視してジョセフへと話しかけた。


「申し訳ございませんが、奴隷は登録出来ない事になっております。登録は、勇者様だけさせて頂きます」


「な、何故だ!?彼は職業こそ奴隷だが、私の友人なんですよ!?」

ジョセフは男へと食って掛かった。


おぉジョセフ、少しはやるじゃないか。

それよりも、あの一瞬でポロア嬢の姿が消えたぞ。

ポロア嬢、俺に石ころを見るような視線をくれよ。


「申し訳ございませんが、規則ですので。奴隷が冒険者となることを許可された前例もありませんし」

男はそう言って裏へ消え、直ぐに1枚のカードを持って戻って来た。


「これが、勇者様のギルドカードとなります。こちらの説明は、ポロアからさせますので」

男はそう言うと、奥の席へと戻っていった。


ちっ。あいつ、最初に俺を見た以外は一切こっちを見なかったな。


「あ、えっと・・・」

いつの間にか俺達の前に再び姿を現したポロア嬢が、申し訳無さそうな表情でこちらを見つめていた。


違う。俺が見たいのはそんな表情なんかじゃない!!


そんな俺の心の叫びなどつゆ知らず、ポロア嬢はジョセフへと目を向けた。


「申し訳ございませんでした。規則とはいえ、こんな事になってしまって・・・

ただ、奴隷職の方には冒険者の受けた依頼を手伝って頂く事は可能となっております」

直後、ポロア嬢は後ろの暗い男を気にしながら小声で言った。


(冒険者は複数の依頼を受けることも可能となっています。ジョセフ様が受けた依頼をキンジさんだけで受けることも、規則上問題ではありませんから)

ポロア嬢はそう言って、俺にウインクした。


なんということだ。

ポロア嬢、見た目だけでなく性格も素晴らしいときたもんだ。


まぁ確かに、死ぬ前の世界でもみんながみんな、差別してたって訳じゃなかったからな。

こういう素晴らしい人もたまにはいるんだな。


俺が1人、感動に浸っていると。


「うごっ!」

突然ジョセフの背中に、何かが思いっきりぶつかった。


「いてててて・・・・」

ジョセフにぶつかってきたガキは、そう呟きながら立ち上がっていた。


「だ、大丈夫かい?」

背中に思いっきりガキがぶつかったにも関わらず、ジョセフは心配そうにガキに目を向けていた。


「兄ちゃん、勇者なのか!?だったら、オイラの父ちゃんを探してくれよっ!!」

ジョセフの背に、そんな声が掛けられた。


ガキは真剣な眼差しでジョセフを見つめていた。


「おいガキ、お前まだ殴られ足りないのか?職無しの文無しにが来る所じゃねぇっていつも言ってんだろうが!」


おぉ、なんか酒瓶持ったモヒカンの男が怒鳴ってんなぁ。

昼間っから酒飲んで、良いご身分だな。

こいつがこのガキを殴り飛ばしたのか?


「と、あの男は言っているが?」

俺はモヒカン男を指さしながらガキに語りかけると、


「うるさいっ!オイラは勇者様に話しかけてるんだ!奴隷は黙ってろよ!」

少年はそう言って俺を睨んできた。


おーおー。

こんなガキまで奴隷を見下してんのかよ。

ここの教育はどうなってんだ?

少しはポロア嬢を見習えってんだ。


俺はそんなことを考えながらポロアに目を向けると、ポロア嬢はオロオロしながらジョセフとガキ、

そして俺を交互に見ていた。


オロオロする姿も可愛いじゃないか。


「話を、聞こう」


ニタニタしている俺を無視して、ジョセフはガキにそう返事をしていた。

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