第24話:勇者ジョセフの失態

結局俺はその後、再度ヒールを、その後に4度、ハイヒールを受け、


「もういい。治っていないんだから、お布施とやらは無しだな」

そう神父に言い残して、教会を後にした。


【返済】


俺は直ぐに、【貯蓄】したヒールを腕の傷へと向けて【返済】した。


よし、これでいい。

この方法なら、無料タダで治癒魔法を【貯蓄】できるな。

唯一の難点は、1回分使っちまうことくらいか。


クソ。ジョーイの野郎、勇者なんだから治癒魔法くらい使えるようになれってんだ。


俺は心の中でジョーイに悪態を付きながら、ジョーイとミーシアの待つギルドへと向かった。



「魔族だ!魔族がいるぞ!!」


ギルドに近付いてくると、そう叫びながら、何人かの奴らが走って逃げていた。


ミーシアじゃありませんように、ミーシアじゃありませんように・・・


俺は祈ったね。


教会の帰りに祈るってのも変な話だけどな。


でも、多分この祈りは届かないんだろうな。


俺は諦めの境地でギルドへとたどり着いた。


そこにいたのは、やはりミーシアだった。


頭に巻いていたはずのターバンはそこになく、ミーシアの足元にはミーシアの頭にあるはずのターバンを手に持ったジョーイが、アホみたいに倒れ込んでいた。


あー。はいはい。

あれね。バカジョーイがなにかのはずみに転んで、間違ってミーシアのターバン掴んで倒れちゃったわけね。


・・・・・あのクソ野郎っ!!


なんであいつはいつも、何か問題を起こすんだよ!!

起こすならテメーだけで起こせよ!

俺やミーシア巻き込んでんじゃねーぞ!!


俺はため息をつきながら、人波を掻き分けてミーシアの元へと向かった。


倒れ込むジョーイを踏みつけ、その手からターバンを奪い取った俺は、それをミーシアへと手渡して周りに目を向けた。


「安心しろ。こいつに害はない。確かにこいつは魔族だが、何のスキルもない役立たずだ。

それに、ここに倒れているアホ勇者の従者になった。

だから騒ぐな、うっとおしい」


俺が周りの奴らにそう言うと、


「き、聞いたか?スキル無しだとよ」

「本当か?しかし、魔族であることに変わりはないぞ?」

「しかし、勇者様の従者だとか・・・」

「流石は勇者様だ。魔族すらも配下に収めるとは・・・」


よし。なんとかこの場は切り抜けられそうだな。


場の空気が変わったのを確認した俺は、未だに俺の足の下で倒れているジョーイの背中を踏みしめた。


「ぐぉっ!キンジっ!痛いじゃないか!」

ジョーイはそう言いながら立ち上がった。


「それに、聞いていたぞ!?役立たずだなんて、ミーシアに失礼だろ!?」

「あぁ、そうだよな、悪い悪い。役立たずってのは、転んだ拍子に人のターバン掴むようなヤツのことをいうんだよなぁ?」

俺はそう言って、ジョーイを睨みつけた。


「うっ・・・それは・・・だって、転びそうになったら何か掴みたくなるじゃないか・・・」


はい、予想通りでした。


こいつ、マジで早く寿命で死んでくんねーかな?


「いいのです、ジョセフ様。キンジは、私を助けようとしてそう言ってくれたまでです」

ミーシアはそう言いながら、俺へと向いた。


「キンジ、キミのお陰で助かった。礼を言う」

ミーシアは深々と、俺に頭を下げた。


まぁ助けたのは事実だが、役立たずだと思っているのもまた事実だ。


昨日まではそんなこと、思ってもいなかった。


だが、今はもう違う。


ヤレない女。しかもスキルが当たり前のこの世界において何のスキルも持たないミーシアは、俺にとっては最早ただの役立たずだ。


もう気を使う気にもならない。


「そんなこといいから、さっさとそれ巻いておけ。また騒ぎになったら面倒だ」

俺はミーシアにそう言うと、さっさとギルドの中へと歩みを進みた。


「おい。ジョーイも早く来い。さっさと依頼とやらを受けて、金を稼ぐぞ。ジョーイもミーシアも、俺に借金があるのを忘れるな」


「わ、わかってるよ」

「ジョセフ様、大丈夫ですか?」

トボトボと歩くジョーイに、ミーシア甲斐甲斐しく連れ添っでギルドへと入って来た。


ちっ。イライラする。


やはりミーシアとは、ここで別れるべきか?


あの2人を見ていると、俺の精神衛生上よくないな。


仲良く歩く2人に舌打ちをしながら、俺はポアロ嬢のまつカウンターへと向かった。


あぁ、ポアロ嬢。

俺の癒やしはあなただけだ。


「いらっしゃいませ。ジョセフ様、キンジ様。それから・・・・今の騒ぎを聞いていましたが、そちらの方は本当に魔族なのですか?」

ポアロ嬢は不安そうな目をミーシアに向けた。

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