第46話:スキル【全魔法の才能】の行方と

「キンジは、あのボルケーノって人を倒しのを見ても分かるように既に強い。僕も、今回得たスキルで防御に関しては、多分とんでもないことになっている」

ジョーイはそういいながら俺に同意を促すようにうなずいている。


対する俺は、それに応えることなく舌打ちを返した。


クソ、ジョーイの野郎。普段大してまともなこと考えているわけでもないくせに、俺が【全魔法の才能】なんて聞くからにチート級なスキル欲しがっているときに限って余計なことを考えやがる。


「もちろん僕自身、未だに戦闘で足を引っ張っている自覚はある」

っていうか、何の役にも立ってねぇけどな。


「というか、何の役にも立ってはいない、だね」

相変わらず俺の心の声と被せてくるな、おい!

いい加減気持ち悪ぃぞ!!


「だけどこれからは違う。今の僕のスキルなら、君たちの盾になることならできるはずだ」

まぁ、物理ダメージも魔法ダメージも無効化するなら、そりゃもってこいの盾だわな。

これ勇者としてはどうなのよ。


「盾となる最前線の僕と、前衛後衛どちらもこなせるキンジ。そこに魔法が使えるミーシアがいたら、僕らはなかなか良いパーティーになると思わないかい?

しかもミーシアは魔族だ。魔族は元々魔法との親和性が高いと聞く。であれば、【全魔法の才能】を使うのにこれほどの適任はいないじゃないか!」


・・・・ジョーイのくせに、中途半端に頭使いやがって。


「どうだろうか、ミーシ・・・ミーシア!?」

ジョーイが突然慌てるように声を上げた。


つられた俺もミーシアに目を向ける。


泣いている。ミーシアがものっすごい勢いで泣いている。

なんだろうか。すっごく嫌な予感がする。


「ミーシア!?気を悪くしたかい!?」

「ちっ、違うんです、ジョセフ様!わたし、嬉しくて・・・【職業】も【スキル】も無かった私が、ジョセフ様のおかげで【職業】を得ることができて・・・そのうえそんなご提案まで・・・しかし、本当に私がそのようなスキルを・・いいのでしょうか」


「もちろんさ。むしろ、ミーシアにもらってもらいたい」

「ジョセフ様・・・」


ほらな。これもう完全にあれだ。

ミーシアはジョーイの虜だ。

そりゃそうだよな。【職業】も【スキル】も無くて虐げられていたミーシアがその2つともジョーイのお陰で手に入るところなんだから。


とはいえ、このままミーシアがジョーイの提案を受けちまったら、俺が【全魔法の才能】をもらえなくなりそうだな。

そう考えた俺は、口を開く。


「おいお前ら、勝手に話を進めるなよ?そもそもなぁジョーイ。なに勝手に俺まで組み込んだパーティー考えてんだよ。

それにお前ら、自分のことちゃんとわかってるか?お前らなぁ、2人ともポンコツなんだぞポンコツ。

ジョーイの考えた構成だと、俺はポンコツ2人に挟まれるわけだ。俺に死ねって言ってんのか!?

そういうのはなぁ、もっと役に立てるようになってから言いやがれてんだよ!!!」


「「・・・・・・・・」」


2人とも言い返せずに黙り込んでやがる。

これでミーシアへの【スキル譲渡】は無しに―――――」


「キンジ、ありがとう」

ん?ジョーイが何故かお礼言ってるぞ?


「キンジはもう、僕らパーティーの動きまで考えているんだね。だからこそ、今の僕らではまだまだキンジの足手まといになることが分かるんだよね。だからこそ、そんな風に言って僕らに成長を促そうと・・・」

え、いや、そうではなくてですね。


「ジョセフ様の言う通り、今の私では確かにキンジの足を引っ張るだろう。だが私も魔族!キンジにそうまで言われては、魔族の名折れ!ジョセフ様さえよろしければ、是非とも【全魔法の才能】をお預かりし、それを使いこなしてジョセフ様とキンジの矛となりましょう!!!」

いやいやいや。なんか2人とも盛り上がってんですけど?


おかしいな。俺の気持ち、届いてねぇのかな?


「そういえばミーシア、『預ける』って言ってたけど、【スキル譲渡】で渡したスキルは、もう返せないみたいだからね?だからスキルは『預ける』んじゃなくて、『あげる』だから」

「そ、そんな、ジョセフ様!【全魔法の才能】のようなもの凄いスキルをそんな簡単にあげるなどと・・・」


「でも、いろいろと考えたけどこれが僕らにとって一番良いと思うからさ」

「あぁ、ジョセフ様!私は一生、あなた様についていきます!!!」


あー、もうなんか面倒くせぇ。

っていうかジョーイ。【スキル譲渡】を使ったらそのスキル返せないって、そういう大事なことサラッと言うなよな!!


「ってことで、はい!【スキル譲渡】っと」

おぃぃぃぃーーーーーっ!!!


さらにサラッと【スキル譲渡】しやがったなこの野郎!!!!

くそ、こうなったら!!


「おいジョーイ、俺にも何か譲渡してくれよ!」

「あぁ、それなんだが・・・キンジ、すまない!キミは僕の【奴隷】扱いらしく、【スキル譲渡】の対象にできないみたいなんだ」


くそったれが!!!!

どうやっても俺はスキル貰えなかったんじゃねぇかよ!


ムカついた俺は、すまないと頭を下げているジョーイの頭を殴りつけた。


が、どうやら【物理ダメージ無効】で防がれたようだ。

ん?待てよ?


「おいジョーイ。お前今、俺が殴ろうとしているのを【物理ダメージ無効】で防いだよな?

でもさっきは、俺のスキ・・・じゃなくてビンタ、普通にくらってただろ?」

危ねぇ。こいつらにスキルのこと言うつもりなかったのに、言うところだった。


「あぁ、そのことかい?この【物理ダメージ無効】、自分の攻撃だけは防ぐことができないみたいなんだ。さっきのビンタ、あれはキンジが【貯蓄】ってスキルで僕のビンタを【貯蓄】して【返済】したものなんだろう?だから、自分自身の攻撃としてみなされて、【物理ダメージ無効】が発動しなかったんだと思うよ?」


「は?」

「え?」

「ちょ、【貯蓄】??」


俺とジョーイ、そしてミーシアがそれぞれ声を漏らした。

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