第47話:このポンコツどもがっ

「待てジョーイ俺のスキルが、なんだって?」

「え?キンジのスキルって、【貯蓄】のことかい?それがどうしたんだい?」

ジョーイの野郎、何を当たり前のことをとでも言わんばかりに首をかしげてやがる。


俺はこいつらに、スキルの話はしていないはずだ。

いや、断じて話してなんかいない。


このポンコツどもにそれを言って、デメリットはあってもメリットなんてあるわけないからな。

それなのに、こいつはどうして【貯蓄】の事を知っている?


「あ、そうか。まだ言ってなかったっけ。今回のレベルアップで、君たちのステータスが見られるようになったみたいなんだ。

それで、キンジのスキルも知ったんだ。

いやぁ〜、キンジの強さの秘密がしれて良かっ――――」

のんきにそう言うジョーイの胸ぐらを、俺は掴んだ。


「ぐっ・・・ジョ、ジョーイ・・・そのこと、ぜ、絶対に他人に漏らす、なよ。絶対にだっ!ぐっ・・・」

締まる『奴隷の首輪』を無視して俺はジョーイへと告げ、ジョーイをベッドへと投げる。


「はぁ、はぁ、はぁ」

ジョーイを離したことによって『奴隷の首輪』の締め付けから開放された俺は、求めるように空気を吸い込む。


「「大丈夫か、キンジ!?」」


締め付けられていた首のせいで苦しんでいた俺に、ジョーイのミーシアは心配するような言葉を投げかけてきやがる。


さっきまで胸ぐらを掴まれていたジョーイも、そしてジョーイ大好きなミーシアも、俺に文句の1つもない。

それどころか心底心配している顔を俺へと向けている。


それがさらに腹立たしい。

このポンコツどもが。


「俺はなぁ、お前ら2人を信用してねぇんだよ!だからこそ、スキルのことだって話さなかった!

それなのに、そんな俺を心配なんかしてんじゃねぇよ!!!」


「キンジ、何もそこまで言わなくても!」

ミーシアが少し怒ったように怒鳴っている。

そうそう、それが正しい反応なんだよ。


そんなミーシアを、ジョーイが静止する。


「ミーシア、キンジを怒らないでやってくれ。

キンジ、すまなかった!キンジが隠していたスキルを、僕は何も考えずに話してしまった。確かに迂闊だった。本当にすまない!」

ジョーイはそう言って、頭を下げた。


クソ!ここまで素直に謝られたら、怒ってる俺がバカみてぇじゃねぇかよ!


「私も悪かった。キンジの想いなど考えもせずに、怒鳴ってしまって。

きっとキンジは、私達への成長を促そうと思ってそんなふうに言ってくれたんだよな」

ミーシアもそう言って頭を下げている。


だが俺は、ジョーイの謝罪によって落ち着きはじめていた心がミーシアの言葉で沸き立った。


「そういうところもムカつくんだよ!俺の想いとか、勝手に良い方に考えてんじゃねぇよ!言葉のままなんだよ!!

お前らポンコツ2人、信用してねぇから話さなかっただけなんだよ!!!

いいかお前ら!これからは俺の言葉はそのままの意味で受け取れ!

勝手にその奥まで考えようとかすんな!ポンコツ2人がそんなことしても、意味ねぇんだよっ!!!」


俺は、怒鳴った。

初めて思ったことを全部言ったかもしれない。

これで愛想をつかしてくれるといいんだけどな。


そんな想いとは裏腹に、2人の顔は笑顔に包まれる。


「キンジ、僕らのことをそこまで心配してくれるんだね!」

「それにジョセフ様聞きましたか!?こうは言っても、キンジはまだ我々と一緒に行動をしてくれるようですよ!?」


解せぬ。

何故こうなる。


いや確かに、ミーシアの言う通り今のは俺のミスだ。

ミーシアちゃんと、俺の言葉をそのまま受け取っている。


確かに俺は言ったな。

『これからは』って。


「はぁ。俺はそもそも、このクソったれな首輪のせいでジョーイに死なれては困る。

だから仕方なくお前らと行動は共にする。今のジョーイのスキルならそう簡単に死にはしないだろうが、それでもお前らポンコツ2人だけだと、ジョーイに万一のことがある可能性が百一くらいになっちまうからな。

だが勘違いするなよ。俺は本当はお前らなんかと行動したくなんてない。

お前らといるのは、あくまでも俺自身のためだ。そこは理解しとけよ!」

言ってて思ったが、俺めちゃくちゃツンデレみたいなこと言ってんな。


「それにジョーイ!あの化け物みたいな魔王の相手は、お前がやれよ!あんな奴、俺は絶対に相手になんかしないからな!!」


「「あ、そうだった!キンジ、昨日の魔王の話をプリーズ!!」」

「話の腰を折ってんじゃねぇよポンコツがぁっ!!!」


「お前らいい加減にしゃがれ!他の客の迷惑になんだろうがっ!!」

「「「すみませんでしたっ!!!」」」


騒ぎ続けていたことに業を煮やしたこの宿の主、モージャに叱られたことで、俺達は仲良くモージャへと頭を下げた。

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