第48話:豚に呼ばれました

モージャからめちゃくちゃ怒られたあと、俺は昨日の魔王の話をポンコツどもジョーイとミーシアへと話した。


特にジョーイは、魔王の招待についてめちゃくちゃ驚いていた。

まぁ、そりゃそうだよな。


ちなみにその招待に応じるかについては、


「「「一旦保留で!」」」


ということで落ち着いた。

あくまでも現時点では正式に招待されたわけじゃないからな。


そんな話をしていると、再びモージャが部屋へとやって来た。


「なんだよモージャ。今はそんなに騒いでねぇだろ?」

俺のそんな言葉にモージャは首を横に振る。


「いや、お前らに城からの伝言を受けた。今すぐに城に来いだとよ。儂は伝えたからな」

モージャはそう言うとすぐに部屋をあとにした。


「だってよ?勇者様」

「え、僕に振る!?」


「いやお前以外にいねぇだろうが!あの豚が用があるのは勇者のお前であって、奴隷の俺なわけねぇだろうが!

ちったぁその小さな脳味噌で考えろよポンコツが!」

「キンジ、ジョセフ様に向かって『小さな脳味噌』は失礼だぞ!」

あ、ポンコツはいいんだ。

っていうか2人とも、さっきから俺がポンコツって呼んでも全然気にしてないんだよな。


それはそれでムカつくんだが。


「キンジの言う通り、豚じゃなくて王様が用があるのは僕かもしれない。だけど、もちろんキンジも着いてきてくれるよね?」

「は?なんで俺がそんなこと―――」


「王様の用というのは、あの魔族を倒したことなんじゃないかなと思うんだ。キンジが、というか魔王が言っていた話だと、魔王を除いて魔族最強らしいし、その報奨金でも出るんじゃないかな?」

「おいポンコツども!なにボサッとしてんだよ!豚様が呼んでいるんだ!さっさと報奨金貰いに行くぞ!!」


俺はソッコーで宿を出発した。


「ジョセフ様、キンジの扱いがお上手で」

「え?なんのこと?僕はただ思ったことを言っただけだけど・・・っていうかキンジもういなくなっちゃってるよ!?ミーシア、僕らも急ごう!」


(天然でキンジを上手く扱うとはっ!なにも分かっていない様子のジョセフ様もまた良きっ!!)


などとミーシアが悶絶していることなど、俺は知りもしなかったが、結局追いついた2人からそのやり取りとミーシアのクソったれな感想まで聞かされて、気分が悪くなったのはここだけの話だ。



そんなこんなで城へと到着した俺達は、城の兵の蔑む視線(主に俺への)を掻い潜って豚の前へとやって来た。

相変わらず肥えた体で偉そうにしてやがる。

しかも今回は初めて一緒に来たミーシアもいる。


豚はミーシアに、下心丸出しの視線を送ってやがる。


ふざけんじゃねぇぞ豚が!

その視線は俺だけが送っていい視線なんだよ!

って言ってて寂しくなるわボケがっ!

さっさと出すもん出しやがれ!!


「よく来たな勇者よ」

豚の野郎、相変わらず俺は無視かよ。


「今日はお主にやってもらうことができてな。その依頼のためにこの場に呼んだのだ」

「は?」

「へ?」


豚の言葉に、俺とジョーイが声を漏らした。


ついでにジョーイの野郎は、汗までかいてやがる。

ありゃ冷や汗だな。

この俺に報奨金が出るとか見当外れな事を言ったことに気がついたらしい。


「お、王様。先日我々は、魔王軍の幹部を倒しました。そ、それについての報奨金などは・・・」

お、ジョーイ頑張るじゃねぇか。

まぁ、このままだと俺から怒られるとか思ってんだろうな。


いや、怒んねぇよ?

ただぶっ飛ばすだけだからな。


「ふむ。おかしな事を言う勇者だ。あれは国から出した依頼だったはず。そしてお主は、あの依頼の報酬を既に受け取ったと聞く。これ以上まだ報酬を望むのは筋違いではないか?」


「おいちょっと待てよ!」

豚の発言に俺は声を荒げる。


「勇者よ、奴隷に発言を許した覚えはないぞ?」

しかし豚はそんな俺を無視。

クソ、ムカつくな。


しかし苛つく俺を、ジョーイが静止した。


「王様。今回我々が倒した魔族、彼は魔王軍四天王最強の男だったそうです。それならば、追加での報酬もあり得るのではないでしょうか?」

おぉ、ジョーイが本当に頑張っている!

なにが頑張っているかって、ボルケーノを倒したのを俺だと言わず、とボカしている。


コイツ、やればできるじゃねぇか。

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