第45話:勇者ジョセフの新たなスキル

ジョーイを張り倒したあと、頬の腫れたままの野郎を部屋から追い出した俺は【時間】の【貯蓄】でいろいろと試していた。

ある程度の区切りがついた頃、


「キンジ、大変だ!」


何故かもう頬が正常に戻っているジョーイがそう叫びながら部屋へと入ってきた。

っていうかこいつ、昨日のこと何も聞いてこないけど大丈夫なのか?

魔王の話とか気にしていないのだろうか。


いや、多分今の『大変だ』ってのがその辺に関係してくるんだろう。

俺はため息をつきつつ、ジョーイに続きを促す。


「僕のすごくレベルが上がったんだけど・・・」

いや、その話既に終わってますけど!?

昨日十分に騒いでいたじゃねぇかよ!


【勇者】であるジョーイは、魔王が言うところの魔素ってやつを魔物やらを倒して取り込まなくても、他人から感謝されるだけでレベルが上がる。

しかも、職業である【勇者】の方がだ。


俺の素晴らしい機転によってこのへっぽこ【勇者】様は、昨日ボルケーノ討伐のおかげで周りからあり得ないほどの感謝を受け、その結果レベルが20まで跳ね上がっている。

ってこの回想自体が無駄なんだよ!

もう昨日数話前で終わってる話なんだよ!!!!


「スキルもめっちゃ増えてた!」


あ、違った。終わってない話があった。

いやスキルも増えてんのかい!


「っていうかお前、それ昨日言っとけよ」

「いや、突然の大量レベルアップでスキルを確認していなくて・・・」

相変わらずポンコツだなぁ勇者よ!


「ジョセフ様、どうされたのですか!?」

部屋に入ってくるときの大声に驚いたのか、ミーシアも部屋へと入ってきた。


あ、ミーシア昨日のショックからは立ち直ってるみたいだな。

まぁ、もうどうでもいいけど。


「ミーシア、騒がしくてすまない。僕のスキルが増えていたんだ」

「ジョセフ様が好き!じゃなかった、ジョセフ様のスキルが!?」


いやミーシア、なんか聞きたくなかったフレーズ聞こえたんですけど。

まぁもう分かってるからいいんだけどよ。


「っていうかお前ら、昨日魔王が来た件は話さなくていいのかよ」

「「あ」」


なんかもうすべてが面倒くさくなった俺の投げやりな言葉に、二人の声が重なった。

なんか腹立つな。


っていうかこいつら、完全に昨日のこと忘れてんじゃねぇかよ!

揃いも揃ってポンコツが!!!


「そ、そうだった。昨日なぜか途中から記憶がないんだ。キンジ、昨日のことを話してくれないか?」

そりゃお前、気絶してたからな!


「わ、私も魔王さま・・・じゃなくて魔王が来てから記憶がないんだ。キンジ、頼む」

ミーシアもあのまま気絶してたんかい!


・・・・クソっ!!!

このポンコツ二人がお似合いとか思っちまったじゃねぇか!!!


「面倒くせぇから先にお前のスキルの説明よろ」

若干の自己嫌悪に陥った俺は、昨日の話をする気にもなれずにジョーイにそう言ってベッドに腰を下ろした。


「あ、あぁ。キンジがそういうなら、先に僕の話を」

ジョーイはそう言うと、語りだした。


ジョーイのこれまでのスキルは【落下ダメージ無効】【物理ダメージ半減】【魔法ダメージ半減】という【勇者】チートなスキルと、【巻き込みゴメン】という【勇者】になる前から持っていたクソスキルだった。


「それで、現在のスキルがこちらになります」

どこの営業だよ。


心の中でツッコみつつ、ジョーイが紙に羅列したスキルをのぞき込む。



【落下ダメージ無効】

【物理ダメージ無効】New!

【魔法ダメージ無効】New!

【巻き込みゴメン Lv.10(Max)】New!

【逃走時脚力10倍】New!

【自然治癒力10倍】New!

【カリスマ】New!

【全魔法の才能】New!


派生スキル

【スキル譲渡】




いやなんなの!?

なんかもうツッコむところばっかで追いつかねぇよ!!!


ちなみに、「New!」という表現もジョーイによるものだ。

ってもう、そんなことどうでもいいんだよ!


「お前、本当に【勇者】か?ほぼ攻撃のスキルがねぇじゃんか」

とりあえず俺は、ツッコみをひねり出した。


「【全魔法の才能】!?魔法を使う者ならば皆が憧れるあのスキルを!?」

お、歩く辞書ミーシア先生の説明きた。


まぁ、これに関しては内容聞かなくても意味は分かるけど。

それにしても【全魔法の才能】か。ポンコツ【勇者】初めての攻撃に使えそうなスキルだな。

うらやましい。俺も欲しいな。いや、待てよ?


「ジョーイ、その【スキル譲渡】ってのはなんなんだ?」

「これかい?読んで字のごとく、スキルを譲渡できるみたいなんだ。ただし、【勇者の従者】の職業を持った者限定らしいのだが」


ってことは、俺に【全魔法の才能】のスキルを【譲渡】してもらうことも可能なんじゃないだろうか。


「おいジョーイ」

「そこで僕は考えたんだ。僕の【全魔法の才能】を、ミーシアに【譲渡】したい」


「はぁ!?」

「えっ・・・」


俺とミーシアが同時に声を出す。

文句を言おうとした俺だったが、その間を挟ませないようにジョーイは続けた。



ーーーーーーーーー

あとがき


【物理ダメージ無効】がありながら、何故ビンタのダメージを受けたんだ、ジョーイよ。

その理由は次回明らかに!?

(大した理由ではありません)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る