第39話:魔王軍最強の男

「ってことで【返済】っ!!」


俺はスキルの実験をすべくスキルを発動した。


俺が【貯蓄】した【怪我】を相手に【返済】した場合、その怪我が相手の防御力に対してどう影響するのかという実験を。


そしてその結果は。


「うぐっ・・・うがぁぁぁぁぁっ!痛いっ!痛いぃぃぃっ!!

なんだこれは!?何故突然っ!!ぐぁぁぁぁあっっ!!!」


ボルケーノは絶叫していた。


よし、いける!

どうやら【怪我】の返済は、俺が受けた怪我をそのまま相手に、しかも防御力を無視して【返済】することができるみたいだ。


「うがぁぁぁぁぁっっっ!!」


なんか思った以上のダメージっぽいけど。

いや確かに、あの高い崖から落ちた【怪我】だからダメージも半端ないとは思うけども。


にしてもさっきから、いちいち俺の【返済】が予想以上の威力な気がする。


それと・・・・


なんかすげぇ気分良いの。

あいつに攻撃するたびに、さっきからちょくちょく現れるあのドス黒い感情が浄化されるような、なんとも言えない爽快な気分に襲われる。


まるで誰かが、あいつに攻撃することを臨んでいるかのような、そんな感じだ。


待てよ・・・


ってことはもしかして、この黒い感情を全部【返済】に乗せることができたら、あいつに勝てたりなんかしちゃうんじゃないのか?


そう考えた俺は、先程ボルケーノに吹き飛ばされたときに突っ込んだ木々にぶつかったときの【怪我】を、あいつに【返済】してみることにした。


(憎い・・・あいつを、殺せぇーーーーっ!!)


頭の中に渦巻くドス黒い感情をほんのちょっと乗せて。


「ぎぃやぁぁぁぁーーーーーっ!!!」


元々俺が崖から落ちた【怪我】で悶えていたボルケーノは、さらなる【返済】で更に叫んでいた。


おっふ。


こりゃビンゴだわ。


明らかに俺自身が受けていた怪我よりもひどい状態になっているボルケーノの姿に、俺は確信した。


よく分かんねぇけど、このドス黒い感情、使えるわ。


じゃぁまぁ、もう面倒くせぇし、四天王最弱様にはそろそろご退場いただこうかね。


そして俺は、ボルケーノから殴られたときの【物理攻撃】を【返済】すべく、スキルを発動した。


((((殺せぇーーーーーっ!!!))))


幾重にも重なる声とともに溢れるドス黒い感情を込めて。


「とりあえず、消えろ四天王最弱っ!」


そしてそのまま俺は、未だ悶えるボルケーノを殴りつけた。


うわぁ。


俺の拳が当たった瞬間、ボルケーノは爆散した。

その直後にその体は黒い霧になって消えたから良かったものの、一瞬明らかにグロかった。


「や、やったのか!?」

ボルケーノの最後に呆気にとられているミーシアに抱かれたままのジョーイが、そんなフラグくさいセリフを口にしていた。


が、そんなフラグクソ喰らえだ。

ボルケーノが復活することはなく、そしてさらなる四天王なんかが現れることもなく、俺たちはなんとかこの窮地を脱した。



一方その頃の魔王城


「ボルケーノが、死んだ」

魔王城の一室で、四天王と呼ばれる3人の魔族達は、同じく四天王と呼ばれるボルケーノの死を感じ取っていた。


「ボルケーノなど、四天王最弱。奴が死んだとて、我ら魔王軍にとっては少しの痛みもないわ」

「ククククク・・・」


3人の魔族は、ボルケーノの死を悼むこともなく、肩を震わせて笑っていた。


かに見えた。


しかしよくよく見ると3人の魔族、その目からは涙が溢れていた。


「と、ボルケーノならば仰るでしょうな」

骸骨のような魔族の1人が目からは鼻からと、色んな液体を垂れ流しなが呟くと、


「そうでしょうな。あの御方はいつも仰っていた。

同じ四天王と呼ばれながら、我ら3人のと自分とでは、出来が違うのだと」

別の3つ目の魔族が、3つの瞳から血の涙を流して応えた。


「『あなた方が居るからこそ、我ら魔族があるのです。私など、ただ武力があるだけの落ちこぼれ』

それが、ボルケーノ様の口癖でしたな」

残った鬼型の1人の魔族も、悲しげにそう口にしていた。


四天王の3人はしばし、思い思いに涙を流し、四天王の男の死を、悼んでいた。


そして、鬼型の魔族が口を開いた。


「こうなれば、我らの取るべき行動は1つ」

その言葉に、残りの2人も頷いていた。


「復しゅ―――」

「「魔王様に相談しよう!!」」


「あ、うん。魔王に相談だ!!」

1人流れに乗り遅れた骸骨型の魔族が慌てて言う言葉が、魔族城の一室に響いていた。

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