第12話:いざ、城へ

王都に着いた翌日、俺はジョセフと共に王に会いにいくことになった。


っていうか、何故俺が一緒に行く必要がある。

何が『1人じゃ心細い!キンジ、ついてきてくれよ!』だ。


お陰でこいつにまた首を締められたじゃねーか。

俺はそう思いながら、首に首元へと手をやった。


ジョセフにナメた口きいても反応しねーくせに、こういう時ばっかり反応しやがる。忌々しい首輪め。


「はっはっは、キンジ、そんなに怒らないでくれよ」

前を歩くジョセフは振り返って、俺に笑顔を向けながら爽やかに言ってきた。


ムカつく。

誰のせいでこんなことになってると思ってんだよ。

1人で王のところへ行けと言われた時は、なきそうな顔してたくせによ。


今俺は、無性にイライラしている。


それは、ジョセフの態度にも原因はあるが、それ以上にムカつくのが、周りの女どもの目だ。


ジョセフが笑顔をを振りまくと、周りの女達は熱い視線をジョセフに送っている。


ただ笑うだけで、だぞ?


こっちは昨日から、女を抱きたいのを我慢してるっていうのに、コイツは笑うだけでいつでも女を抱けそうだ。


そのくせ一切そんなことをには気付かず、ジョセフはただ笑顔を振りまいていた。

コイツはあれか?鈍感ハーレム系勇者なのか?


あー、こいつの寿命、あと何日なのかな。

さっさと寿命で死んでくんねーかな。


俺はイライラをジョセフの背を殴ることで解消しながら、その後について城へと進んでいった。


城の入口でジョセフが自分は勇者だと告げると、門番は半信半疑の目をジョセフに向けながら近くの門番に何やら声をかけていた。


分かる。分かるぞ、門番よ。

こんな奴が勇者だなんて、信じられないよな。


こんなアホ面が勇者だなんて、もうこの世界は終わったようなものだからな。


「・・・・キンジ、聞こえてるからね?」

ジョセフがジト目で俺を見つめながらそんなことを言ってきた。


また声に出ていたようだ。


ジョセフとそんなやり取りをしていると、門番の一人が水晶のような物を持ってジョセフを手招きした。


ジョセフが言われたとおりに水晶に手をかざすと、青白く光った水晶を覗き込んだ門番の態度が一変した。


「も、申し訳ございませんでした!今すぐ、王様にお取次ぎいたします!」

門番はそう言って、走り去っていった。


顔を見合わせた俺とジョセフがそのまま進もうとすると。


「あー、すまない。君は勇者様の仲間かい?」

残った門番が、俺に話しかけてきた。


「・・・・・・いや、仲間ではない」

「いや、仲間ですよ仲間!ちょっとキンジ!僕達は仲間だろう!?」

そう言って見つめてくるジョセフは、門番に連れられて先へと進んでいった。


違う。断じて違う。

俺は勇者の仲間なんかではない。

仲間と判断されたら、俺まで魔王の討伐戦とやらにつきあわされかねないからな。


「すまないが、君も一応『職見しょくけんの玉』で職業を確認させてもらうよ。規則なんでね」

門番がそう言いながら、俺にさっきの水晶を差し出してきた。


なるほど。あれは職業を確認するための水晶か。

ちっ。俺が【勇者の奴隷】だとバレてしまうじゃないか。


こんなクソみてーな職業見られるなんてな。

このまま帰っちゃだめか?


ぐっ。クソ、また首輪が締めつけてきやがる。

はいはい分かりましたよ!


俺は締まる首輪にイライラしながら、水晶に手をかざした。

すると、水晶がまた青白く光った。


「【勇者の奴隷】?」

水晶を覗き込んだ門番がそう呟いて、突然おれを冷ややかな目で睨んだ。


「奴隷職とは珍しい。しかし、奴隷の分際で隨分偉そうじゃないか」

その言葉と共に、俺の頬に痛みが走った。


どうやら俺は、コイツに殴られたらしい。

ちっ。【貯蓄】はオート発動ではないらしい。

まさか殴れるなんて思っても見なかったから、スキルを使う余裕もなかったじゃーねか。


俺は痛みに耐えながら、門番を睨みつけた。


「ちっ。奴隷のくせに、なんて目で睨みやがる!」

門番はそう言いながら、また俺を殴ろうとした。


俺は今度こそ、門番の拳を【貯蓄】で受け止めた。


「な、なに!?奴隷風情が、私の拳を受け止めるだと?」

俺の目の前で止まった拳に、門番はそんな声を上げていた。


これ、【返済おかえし】しても良い案件だよな?

俺は門番を睨みながら、拳を握った。その時。


「キンジっ!!」

先を行ったはずのジョセフが、叫びながら戻ってきた。


「なんだ、先に行ったんじゃねーのかよ。少し待ってろ。コイツに一発返さねーと、気が済まない」

「や、辞めるんだキンジっ!」

ジョセフはそう言いながら、俺を止めた。


「おい離せ」

「頼むキンジ、今は抑えてくれ!」

そんな俺達のやり取りを見ていた門番が、


「勇者様。奴隷の躾くらいしっかりとやった方が良いと思いますよ?

奴隷職のくせにこんな態度では、いつか必ず勇者様のご迷惑になります」

そう吐き捨ててその場を去っていった。


「・・・・・・・」

ジョセフはその言葉に、ただ項垂れていた。


いや、こっちの方こそ項垂れたいわ!

なんだよ!俺無駄に殴られたじゃねーか!

そんなに奴隷は下なのかよ!!


「おいジョセフ―――」

「すまないキンジ。後で説明する」

ジョセフはそう言って城へと進み、俺はこのイライラをどこにもぶつけることが出来ず、ただモンモンとした気持ちでその後へと続いた。

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