第27話 甲第7号証
この頃から、僕が積極的に証拠作りに関わります。
どこの世界でもそうですが、「やれ」とか、「こうしろ」とか言われると人は中々素直に動きませんが、「そんなにいうならお前がやれ」ってのはわりと言いやすいセリフのように思います。
W先生が確実な証拠が欲しいと僕に言ったのは、間違いなく事件への僕の介入を希望していました。
どうやらこの頃W先生は刑事を一本、高額の商取引に関する案件を一本抱えていたので、こちらの方がお留守になってきたと自覚したのでしょう。
そのころ僕は、それまで勤めていた弁護士事務所をやめて、おっさんのくせに学生をしていたものですから月に1日や2日の時間は作り出せました。
そんなわけで最初から、注意深くそれぞれの写真を見ると、Bの車両であるトヨタ86の左サイドミラーの背面カバー部(鏡面の反対側)に黒い筋がついているのを見つけました。
この色を印象(つける。ぐらいの意味です)出来るのは、アクアのサイドミラー鏡面を縁取っている樹脂のシールしかありません。
それで両車のサイドミラーを測ってみたところ、高さがピッタリ同じであることが判りました。
そこで両車種を販売しているトヨタのディーラーに行き、事情を話して、二台の車を並べて貰いました。
すると、まさしく86のミラーの背面が、アクアの鏡の面に当たることが判明したのです。
このまま86を前に動かすと、間違いなくアクアのミラーを縁取る黒い樹脂が、86のサイドミラーの背中部分に印象されることでしょう。
僕はミラーを手動で倒せる限界までを4回刻みに倒して貰い、写真に写しました。
勿論、2台は新車ですから、ミラーどうしは実際に接触はしていません。それでもそれは、間違いなくこうなるだろうと予想するに充分な展開写真ができたので、これを、甲7号証として添付しました。
また、姉が加入している保険会社のアジャスターの方にも、アクアの傷は全て後から前に擦られた傷である。という報告書を書いてもらい、これを別紙として準備書面にファイルしました。
※ すみません。ヨウは急用ができ、しばらくベースから離れます。8日には戻って参りますので、28話はそれからになるかと……。
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