第44話 知って損のない話2 癌の治療

 がんの治療法については凡そ次の六つがあります。


 手術(外科治療)

 薬物療法

 放射線治療

 造血幹細胞移植

 集学的治療

 免疫療法

 などですが、各項目の詳細については説明を省きます。

 詳しく知りたい方は既にネットで検索するなりしているだろうし、知識が真に必要な人であれば、医師から聞いているはずだからです。

 ですからここでの説明としては『常識或いは予備知識として』の程度に留めます。


 手術(外科治療)

 広範囲に転移したもの。内臓に癒着して切除が不可能なもの以外の癌細胞が対象になります。

 癌に対して直接的に作用し、可能なかぎり切除を検討します。癌の転移を防ぐために、発症した臓器やその周辺も切除されることがあります。

 

 放射線治療。

 これは外科治療のように直接癌を取り除いたりせず、患部に高エネルギー放射線を照射して癌細胞を破壊して治療します。(治療用放射線としては、電子線、陽子線、重粒子線、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などが用いられています)

 この治療法は近年、コンピューターや機器が急速に進歩したせいで、高い治療効果が得られるようになりました。

 発症した癌の周囲の正常組織をできる限り壊さず、局所にピンポイントで照射する方法が開発されたり、外部からの照射に限らず、放射性物質を体内に挿入する方法や、飲み薬や注射で投与する内部照射という方法も開発されています。

 但し、真に効果がある先進医療は、発症が比較的初期で細胞が小さい時期でなければならないとか、先進医療なので保険が適用されず治療費が高額になるなどの問題も抱えています。


 薬物療法は体内に抗がん剤を投与します。

 投与された抗がん剤は血液などによって身体の細部まで行き渡り癌細胞に作用しますから、転移した、或いは転移を抑制するために投与されます。

 但し、この作用は正常な細胞の発育をも阻害するので、毛髪が育たない。 吐き気やおう吐、便秘や下痢、食欲不振、しびれなどの副作用があります。


 ですが、抗がん剤の種類は今や百数種に及び、癌細胞に対して効果があり尚且つ当事者に最も苦痛がない抗がん剤を選ぶことが可能になってはいます。

 ここのところは、癌の種類と薬の性質について専門医の深い見識と、製薬会社の真摯な努力に期待したいところです。


 集学的治療といわれるものは、これら複数の治療法を組み合わせて行われます。

 

今回Kさんが考えているのは免疫療法で、ANK自己リンパ球免疫療法(ANK療法)と、T細胞(Tリンパ球)という癌細胞を攻撃する性質を持った細胞を使い、自分の治癒力を高めて癌細胞に対抗するという方法です。

 

 インターネットで検索すると、これは抗がん剤と違って、体を傷つけることなく完治する可能性を秘めているので、患者のQOL(Quality Off Life)に対しても効果が期待出来ると書いてあります。


 ANKのNKというのは、43話にも書いたナチュラル・キラー細胞のことで、ネットにおける免疫治療の説明では、NK細胞は本来がん細胞を見つけると攻撃して始末することができる、リンパ球の最強細胞であり、これを一度体外に取り出し活性化・増殖させて体内に戻すことで、培養されたNK細胞がさらに強力になってがん細胞を攻撃する。とあり、またT細胞は、増殖しようとする癌細胞についてタイプを記憶させれば、その癌細胞を直接攻撃する性質がある。ということですから、これらの免疫細胞を使えば、すぐにも癌を克服出来るように感じられる書き方が多く見られます。

 ところが、実際にはそれ程簡単なものではないようで、有効とする免疫細胞についても、NK細胞有効説とT細胞有効説があります。


 癌細胞に有効に働くのはNK細胞であり、T細胞は一定の攻撃をした後、攻撃力が鈍り能力が低下する。だから能力的には補助的だとするNK細胞有効説がある一方で、そうではなく、T細胞の攻撃が低下するのは癌細胞から、自分は異物では無い、とする信号物質が出されるせいだから、それを阻害すれば攻撃力そのものはT細胞のほうがあるとする、T細胞有効説の両方があります。


 そして、とても大事な事ですが、実は効果が証明されている免疫療法というのは、それほど多くはありません。 


 一つは阻害薬を使う免疫療法。


 癌細胞から「自分は異物では無い」という信号がでたとき、その信号に対する阻害薬を投入して、T細胞による攻撃力を維持させます。

 これは癌の種類を悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫というように分類して、阻害薬の種類とのマッチングを適切にすることで、効果があることが認められています。

 


 二つ目の免疫療法は、癌攻撃細胞であるT細胞を体外に取り出し、T細胞にがん細胞の目印を見分ける遺伝子を組み入れて増やしてから、再び体の中に戻します。攻撃力が強まり癌細胞の発信する異物では無い。攻撃するなという信号に惑わされなくなったT細胞を使う方法で、エフェクターT細胞療法といいます。

 

現在、国内で保険診療として受けることができるエフェクターT細胞療法は、がん細胞の目印を見分ける遺伝子としてCAR(キメラ抗原受容体遺伝子)を用いるCAR-T(カーティー)療法のみです。この治療法は、血圧や酸素濃度の低下、心臓、肺、肝臓などのさまざまな臓器に障害が起こるサイトカイン放出症候群、意識障害などの強い副作用が起きやすいため、入院して治療しなければなりません。


 これらが現在、効果が証明されている免疫療法で、保険診療の対象となっています。


 では、効果が証明されていない免疫療法とは何でしょう


 副作用も治療をした当日だけと少なく、治療効果があるとする、所謂、自由診療免疫療法。

 本当に効果があるのでしょうか。


 次回は、幾つかの民間のクリニックや病院で行われている免疫療法のうち、効果が証明されてない自由診療について見てみたいと思います。

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