第45話 知って損のない話3 癌の治療2

『効果が証明されて免疫療法』は、『自由診療として行われる免疫療法』と、臨床試験や治験などの『研究段階の医療として行われる免疫療法』の二つに分けることができます。

 

 このうち、一部の民間のクリニックや病院に於いて、『自由診療として行われる免疫療法』は効果が証明されておらず、医療として確立されたものではありません。

 このため、治療費は患者が全額自費で支払う必要があります。


 自由診療で行われる民間の病院、クリニックで行われるANK免疫療法は、概ね次のような手順で行われ、実費がかかります。


 ① 予約をした当日。初診、相談。血液採取、分析。分析結果によるアドバイス。

時間約4時間。費用およそ5~6万円

 

 ② ANK療法を決心した場合。

 1クール分(12回)370万円~440万円(各クリニック、病院によって自由に設定。相場はない)を最初に払い込む。


 ③ 1週間後、血液採取。殆どのクリニックには細胞の分離培養の設備がないので、京都のJASCなどの企業でリンパ球採血、NK細胞の培養を依頼する。

 培養期間2週間。毎回16万~18万円(価格は企業が自由に設定)


 ④ 培養された細胞と血液を点滴で体内に戻す。このとき、自分の血液なので拒否反応は無いが、発熱、悪寒、強い倦怠感などを感じることが多い。

 点滴費用 毎回5500円


 概算ですが約660万円です。


 免疫療法の自由診療には他に、がんペプチドワクチンや、樹状細胞じゅじょうさいぼうワクチンを使う、がんワクチン療法などもありますが、いずれも『効果が証明されていない免疫療法』で、医療として確立されたものではなく、そのような大金をかけても確実に治る保証はありません。


 また、多くの民間施設では、効果が証明されている、エフェクターT細胞療法を治療項目にあげていません。


 これは前述したように、①T細胞を体外に取りだし、遺伝子を組み込み、攻撃目標を認識させる。②培養して癌への攻撃力を強める。③T細胞と血液を体内に戻し、経過観察をする。④T細胞の攻撃力が弱まる時期に、癌の発信する攻撃するな信号を止める阻害薬を投入する。

⑤経過観察をして突発的な副作用に備える。


 などの、複雑で手間暇をかける設備も機器も持ってないからですが、やはり一番の理由は直接利益に結びつかないからだと思います。

 


 免疫療法はそのメカニズムを聞き、副作用の少ないことや苦痛が少ないことを理論的に説明されると、とても魅力のある治療方法です。


 特に今現在、痛みや副作用に苦しんでいる人は藁にも縋りたいという表現が身近に感じられるのではないでしょうか。


 しかし、「効果が証明免疫療法」であってさえも、全身にさまざまな副作用が起こる可能性は潜在しています。

 また、個人差が大きく、いつ、どんな副作用が起こるか予測がつきません。

 免疫療法には治療直後に起こる副作用のほかに、治療が終了してから数週間から数カ月後に副作用が起こる人があることが報告されています。

 そのときにちゃんと対応ができる施設であるかどうかも大事な選択肢となります。


 今回Kさんが訪れたクリニックは、検査機器と治療機器以外、入院設備のない、個人の経営する日帰り診療施設で、緊急時の対応ができる状態にないことが解りました。


 また、予後の副作用についても『無い』と言い切っています。(これまでの治療件数と治癒症例を何件持っているかは不明でした。また治癒までに何クールを必要とするかも不明です)


 その結果、公的医療機関で「効果が証明された免疫療法」として位置づけられている『T細胞』を、補助的なものとして脇役に回した治療をしています。


 確かにT細胞はその効果を持続させることについて扱いにくい細胞ですが、僕としては、免疫療法に於ける最強、最有力なアイテムであると考えていますので、今後、医療機関がこれらをどう扱っているかが、治療機関を探す一つの判断材料、指標になるのではないかと思います。


 帰りの車の中でKさんが言いました。


「いま、感謝眼鏡をかけて生きています」


「ここまで生きてきた」を、「ここまで生かされてきた」にかえるだけ。

 それだけで、楽しいこと、嬉しいことが増えていく。

 そしたら身体が軽くなったといいます。


 僕は、彼女は楽しい毎日のせいでNK細胞が増殖したのではないかと思っています。


「隣のお爺さんが可笑しいの」とKさんが笑いました。


「ひとりなの。だから、お昼にご飯とかおかずを持っていってあげてるのだけど……」

 それを3週間続けた。


「そのあいだね、ひとっ言もありがとうって言わないから、好みに合わないとか、ありがた迷惑だと思っているのかも……と思い、持っていくのを止めたの」

 

 すると、庭から侵入してきて、窓から中を覘いたらしい。

 

 彼女はおにぎりを渡し「お爺さん。私が倒れていたら救急車呼べる?」

 そう訊くと、「馬鹿にするな。119だろ」と言ったらしい。


 彼女は「とりあえず私が倒れたときの通報者は餌で釣り上げたよ」と言って笑った。


「可笑しくねーぞ」そう言って僕達も笑った。


 どうぞ皆さんも日々を楽しく笑ってお過ごしください。

 それが一番自然に免疫細胞を増やすことになるのだと、僕は勝手に思っています。 



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