第19話 訴状 

 裁判を始める最初の作業は、訴状を書くことから始まります。


 定型用紙があるわけではないのですが、概ね以下の書式(公文書の)で書きます。



                  訴  状

                         令和〇年〇月〇日

 〇〇簡易裁判所 御 中

               原告訴訟代理人 弁護士 〇〇 〇〇〇


 原告の住所〇〇

原 告  〇 野  〇 助


被告及び裁判所からの連絡、及び書類の送達場所


 被告の住所〇〇

  被告 被告の名前


 損害賠償請求事件

 訴訟物の価格 金20万4000円

 貼用印紙額   金3000円


 第1 請求の趣旨

 1 被告(以下Bという)は原告(以下Aという)に対し、金20万4000円及びこれに対する令和〇年〇月〇日から支払いすみまで年5分の割合による金印を支払え。


  2 訴訟費用は被告の負担とする。

   との判決並びに仮執行の宣言を求める。

 第2 請求の原因

  1 交通事故の発生(甲1)以下本件事故という。

  日 時 : 平成〇年〇月〇日午後6時20分ごろ

 場 所 : 〇〇市〇〇町〇番〇〇号の路上

  被害車両: 原告所有で運転中の普通自動車

  加害車両: 被告運転の普通自動車

  事故態様: Aが本件事故現場を時速約50キロメートルで左車線を東進してい

        たところ、Aの後方から右車線をAより早い速度で走行していた

        Bが突然車線変更したため、Aの右側面とBの左側面が衝突した。 

  2 責任原因

  Bは前方を注視し、不用意に車線変更するべきではないにもかかわらず、

    Bは前方注視義務を怠り、本件事故を発生させたものであり、Bには民法

709条に基づきAに生じた損害を賠償する責任がある。


   3 過失割合

   Aは法定速度を遵守して走行していたところ、後方から接近してきたBに衝突     されたという事故態様からして、Aが本件事故を予見して回避することは不可能であった。したがって、本件事故の過失割合はB10割、A0割が相当である。

   4 A車の損害 略

   5 損害金の支払いについて、弁護士費用その他利息を含む計算額 略


 第3 証拠方法

    証拠説明書

 第4 添付書類

  1 訴状副本    

 2 証拠説明書

  3 甲号証

  4 委任状

 以上


 

 書式について、文字中央。日付は右揃え、宛ては左揃えなどの最低限の決まりはあるのですが、カクヨムの記法ではどうしてもスペースが入らず、更新とか表示にすると文字位置がずれてしまいます。行ごとに文字を左右、中央に振り分ける方法をご存じの方、教えて下さい。


 さて、本文です。

 勿論これは誰が書いても不備が無ければ裁判所は受け付けてくれます。

 ただし書き方によっては裁判官が受ける印象が随分変わり、判決に差が出るので注意が必要です。

 僕はこれらの控えをファックスで受け取っているわけですが、内容に関してはだいぶ抑えた書き方になっていると感じました。


 例えば事故態様の項目では、……Aより速い速度で走行していたBが……となっていますが、僕なら、……Aより速い速度で接近してきたBが……と書きます。 


 走行していたBが……と

 接近してきたBが……では随分と印象が変わります。『いた』と『きた』。たった一字ですが、裁判官が初めて読む訴状には今後のイメージがつきまといますから、特に気をつけなければなりません。


 もう一つは文字の大きさです。

 役所関係の文書は概ね10.5ポイントで、この訴状も10.5ポイントで書かれていました。

 でも、私の所属していた事務所では12ポイントを使います。

 これは裁判官は年寄りが多いから読みやすくしてあげる……という意味ではもちろんなくて、読みやすい=こちらの主張が通りやすい。ことには異論がないからです。


 しかしそんな些末な端々は別にしても、事故態様を読む限りでは姉であるAの主張になんの問題もなく、主張はとおるはず……でしたが、相手は思いがけない手で反論してきました。


 続きます。

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