第3話 道交法一時停止違反
この話の1部は 拙著、「私が幸せになるために」のインターンの項でエピソードの1部として書いたのでダブっているのだけど、姪や姉の性格を如実に表しているので、敢えて掲載する。
だいぶ前のことだ。
姪っ子に東部スポーツアリーナまで車で送るように頼まれた。
当時姪っ子は中学3年生で、テニスのナンチャラ大会がありそれに出るらしい。
どうでもいい試合ではないらしいのに、時間観念が適当だ。「遅れちゃうよ」と泣きついてきた。
時間が無いというので下田川の堤防を走った。この道は橋のたもとに一時停止の標識がある。
見通しの良いところなので前も左右にも車が居ないことは判っているのだが相手は優先道路だ。一時停止をしてから、おもむろに左折する。
すると「ヨウちゃん」と声がかかった。姪は私のことをヨウちゃんと呼ぶ。そこには年長者に対するリスペクトの欠片も無い。が、それはまあいい。才気煥発と、とっておこう。
「さっきなんで止まったの。他の車なんか居なかったのに」と言う。
「そりゃあ一時停止しなさいという道交法の標識があったからだ」と、真っ当な返事をする。
「でも他の車居なかったじゃ無い。一時停止ってさ、左右の安全を確認するために一旦止まりなさいってことでしょう。あんなに開けてて見通しが良くて他の車が居ないことが判って安全が確認出来たのに止まったせいで遅刻したら、私泣いちゃうよ」
少女よ。例えお前が100リットルの涙を流したとしてもあの標識は撤去されないだろう。したがって私が一時停止を無視することはないし、お前が遅刻したとしてもけっして一時停止のせいではない……と、声には出さずテレパシーを送った。
「大丈夫。あそこで遅れた秒数ぐらい、すぐ取り返せるから」
そう言って加速するためバックミラーを見ると、いつのまにか後にパトカーがついている。しかもその時走っている道路は学校地域で速度制限が30キロだ。
今日は日曜だ。小学生の姿は無い。道路の安全は確認出来る。しかし後にはパトカーがついている。
「ねえ。ヨウちゃん。マジ遅れるよもっと早く走って」
「いや。今、うしろにパトがいるだろ。これで加速って無理だから。大丈夫、あれはすぐにどこかへ行くから」
しかしパトは何処までもどこまでもついてくるのだ。えっ俺何かやったか。もしかしたら一時停止見張られていた?停止時間が短かった?若しスピード出したら速攻検挙するつもりとか。
私の後にはパトカーが居てその後には五~六台の車が連なっている。
「じゃあヨウちゃんは大平原に信号があって赤だったら止まるのね。砂漠の真ん中に一時停止の標識があったら止まるんだ」
いよいよ泣きそうな声で言う。
そりゃあ、そんなとこに信号や標識があったら、勿論とまる――どころか、降りて周りを見回すぜ。だって不思議で珍しいだろ。
これも声には出さずテレパシーで送っておいた。
とうとうパトカーはアリーナまでついてきた。つまり、警備に来たお巡りさんだったのだ。
姪は何も言わずにべそを掻きながらパトカーのところにいき、「警察なんか大嫌い」と言って駈けて行った。
訳が判らず唖然とする警察官に僕は、ごめんなさいと頭を下げた。これもイメージと心の声でだけれど。
愛する姪よ。若しお前が大人になって、いつかある日、今日のことを思い出したら、この世にある法の全てがお前を守る為にある事をしるだろう。但しお前が法を守ったら、だけど。
まあ帰りにアイスでも食わせておけば機嫌は直るはず。とそう思っていたのだが……。
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