第11話 洗濯物の干し方についての考察
大した問題でもない日常を語るとき、タイトルは大袈裟な方が良い。
だから考察なんて書いてみたが、これは本当にどうでもいい話なのだ。
僕が洗濯物を干しているとき、緋糸が来た。
「ヨウちゃん。その干し方は駄目よ」
「そうなのか?」
一応考えながら干しているんだけどね。
「生地が厚い大きいタオルは乾きにくいから、日が良く当たる外側に干すの。薄くて小さいハンカチなんかはすぐに乾くから内側で良いのよ」
「いや、違うと思うけどな。薄くて小さなハンカチやソックスは外側に干した方がすぐに乾くし、風に揺れるから影になっても大きなタオルへの影響が少ない。太陽位置も変わるからトータルの時間で見ると結局この方が早い筈だ」
「そんなことないよ。両端をタオルに囲まれたら、間に上昇気流が発生するのよ。だから私が言ってるやり方の方が早く乾くわ」
まあ、いつだって14時ごろには全部乾くからどうでも良いのだけどね。
「俺はどっちでも良いから、文句があるなら、お前のやり方でこれ干しといてくれ」
「え~。嫌」
僕は少しイラつきながら、じゃあ黙っててくれよと思うのだ。
もしこれが恋人との会話だったらどうだろう。
きっとイチャイチャと楽しい会話になるに違いない。
そして「ヨウちゃん賢いね~」とか、いや、〇〇の考え方も一利はある、とか言って両方が妥協したりするのかも知れない。
だが結婚したらどうだろう。「文句があるならあなたが干して」というのは間違いなく妻の(かなりの苛立ちを含んだ)セリフになるはずなのだ。
これは、洗濯物に限ったことではない。
全ての物事は、任せる者の能力に応じて任せて、あとは相手の裁量に委ねるべきなのだ。だから、横から口を出すべきではないと考えると、やはり一言居士である僕は、世界の安寧のためにも、結婚不適格者にあまんじるべきであると思うのだ。
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