第53話 緋糸だよⅥ 初ドライブ(4)
私がこうやって書いているのはヨウのパソコンで、ヨウのアカウントだ。だから、ヨウのことを書くのは変な気がする。
だが、「俺が書けない穴を埋めといてくれ」と頼まれた、ときどき緋糸の部分で、私のエッセイの積もりで書いていますから、ややこしいけど我慢して下さいね。
さて、
途中でヨウと徳島市内の有名なカツ屋さんに入りました。
ここはヨウの大好きなお店なので、お礼の意味でヨウの好きなヒレカツ定食を私が奢ります。
幸いっていうか、ヨウは女性に奢られることに全然抵抗がないらしいの。但しデートのとき以外だけど。まあガソリン代にもならないだろうけど、免許取得祝いだからこれでいいよね。
ごまをすり鉢ですりながら、質問する。(このお店は胡麻だれをお客さんが好みに合わせて自分で作るのです。深い意味はありません)
「ねえ、ヨウちゃん。2車線道路でよく片側車線を工事とかで規制することがあるでしょう」
「あるな」
「あれ、何キロか手前で、速度を落とすように注意が出てるよね」
「そうだな」
「それで渋滞している」
「当然だな」
「あれ、おかしいと思う」
「何が」
「だって車線が減るなら速度落とさず、スピード上げなくちゃ駄目でしょう」
「へっ」
ヨウがワサビを直接食べたような顔をした。え~。私なんか変なこと言ってる?
少し間を置いたヨウが、
「緋糸が言いたいことは、こう言うことかな。川幅が広い所ではゆっくり流れている水が、川幅が狭いところでは速く流れる。だから車の速度もそうしたら渋滞がなくなるのではないか」」
「うん。そう。そう言いたかったの。それから高速道路でさ、制限速度決めるのっておかしくない」
「ふむ。それはどういうことだ」
ここがママとヨウちゃんの違うところだ。
ヨウちゃんはまず私の言葉を聞いてくれる。そして何が言いたいのか。自分が受け取った意味が合っているのか、確認してから自分の意見を言う。
「くるまって凄く種類が有って性能がバラバラでしょう。それに運転する人の能力がそれぞれだよね。だから自分に合った速度で走ればいいんじゃないかな」
「よし。分かった。では一番目の狭いところではスピードを出すという問題だけど、俺もそう思う。確かにそうすれば渋滞は無くなると思う。例えば高速道路で事故が発生した場合、一車線確保したとしても何キロもの渋滞が発生するのが現状だ。それどころか事故を発生していない対向車線まで渋滞をおこす。これは事故現場を見物するために、スピードを緩めるからなんだが、これを野次馬渋滞とか、見物渋滞っていう」
ビックリした。
「そんな言葉があるんだ」
「正式な名称ではないけど、警察や道路公団でよく使ってるな。そうなるとこれはモラルとか国民性を考えなければいけないと思われる。それと次の車の性能と個人の能力で自由に速度を選ぶという意見だけど、素晴らしいと思うぞ」
「どうすれば実現するかということだよね」
「そうやってる国に見習うことだろうな。フランスの高速道路。ドイツのアウトバーンはそうなってる。レーン毎に走る速度が決められているから、走りたい速度のレーンに入れば良い。それからヨーロッパの古い道路には信号が少ない。ロータリー方式って知ってるか」
「聞いた事があるわ」
「じゃあいつか、それらの利点と欠点を調べて、どうすれば日本の交通事情を改善出来るか調べてみてくれるか。ヒントは国の広さだ」
「わかった」
それから私は最後の質問をした。
私の友達で高知の子がいるんだけど、その子の問題だ。
「冬に帰省する子のことなんだけどね、大豊っていうところがよく雪が降るらしいのね」
「うん」
「それで高速道路が閉鎖されて、一般道に降りなくてはいけなくなるんだけど、一般道は大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)っていう名前が付く昔からの交通難所らしいの」
「行ったことがあるぞ。今は観光地になってる」
「そうなんだ。でもどうして道幅が広くて坂道が無くて除雪車もある高速道路から降ろして、危険な一般道を走らせるのかしら」
「それは道路の管理者の問題だな。高速道路は安全対策としてまず速度規制をする。次にタイヤ規制だろうな。夏タイヤでは走らせない。それでもどんどん雪が降ってくると、道路を閉鎖する。高速を降りた車がどうするかは公団の問題ではない。という認識だな」
「だって同じ道路仲間でしょう」
「残念ながら同じじゃ無いし彼らは仲間じゃ無い。高速道路はもし壊れると莫大な工事費が必要になる。その金の流れはもう複雑怪奇というほかはない。多分論文が3本は書けるぞ。やってみるか」
「院生になってやることが無ければやってみようかなあ」
そんな感じでお祖母ちゃんと物々交換をして、無事に帰り着きミッションは終了しました。
初ドライブは緊張しすぎて道路と他の車だけしか見てなかったけど、ヨウはそれでいいのだといいます。
いつまでも苦手意識を持つことが安全運転に繋がると言われました。
それにしてもママに借りた日本の軽って、なんて素晴らしいんだろ。と認識を新たにして私のレポートを絞めさせて頂きます。お読み下さり有り難うございました。
by緋糸
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