第八話 「強サト弱サ⑤」
「──私には─────ない」
「────はもう────」
「───まで────らない」
「─────しても───わない───」
翌朝、夜のうちに雨が増したのか窓の外からは雨水が地面に当たる音ばかり聞こえる。
「雨……」
寝起きの働かない頭で呟くツナギ。
「起きなきゃなぁ……」
んーっと声を出し身体を伸ばす。
(雨だとシュウちゃん大変なんだよなぁ……)
同居人のことを思いながら支度を始めた。
「ツーちゃん、ツーちゃん~」
扉が開くとそこには半泣きのシュウカが。片手にブラシを持ってそのまま部屋に入ってくる。
「ふぇ~ん何回やってもうまくいかないよぉ~」
シュウカの髪は柔らかいため癖がつきやすく、雨の日はいつもこうだった。
「はいはい、ちょっと待ってね。着替え終わったらやってあげるから」
これもまた日常。ソレに襲われ錬金少女になった時には、もうこんな日常も送れないのかと思っていたがどうやら杞憂だったらしい。とツナギは頼ってくるシュウカに可愛げを見いだす。
シュウカの髪をとかしながら、ふと昨日やそれ以前の錬金少女をしているシュウカの変貌ぶりを思い浮かべる。
(シュウちゃん運動とかも苦手だったような……)
ソレと対峙している時のシュウカはまるで別人のようによく動く。
日常生活では自分のほうが世話をしていることが多いが、錬金少女の時はまるで自分の方が守られてるみたいにも思える。ツナギは普段との違いを疑問に感じシュウカに聞いてみることにした。
「ふぇ?錬金少女の時のシウ?」
「そう、ほら、シュウちゃん運動とかも普段は苦手でしょ?なにが違うのかなーって」
「うーん、よくわかんないけど~、ほらツーちゃんだって、変身すると普段より高く跳べたりするでしょ~?それで、思ってる通りに動けるというか~こう、シュババババッってイメージするとその通りになるというか~」
「あんまり……てかよくわかんないけど。なんとなく、わかったよ」
シュウカの独特の説明に苦笑いのツナギ。でもそれがシュウカの強みなのかもしれないと思った。
「はいできた!」
「わぁ~ツーちゃんありがとー!」
「どういたしまして」
そのいつものふやけた笑顔でお礼をいわれると、世話をやきたくなってしまう。本当はいろいろ考えていて、そういう風に誘導してるのかもしれないけど。とツナギは頭のなかで冗談半分に思ってみる。
「雨だから早めに出ようか」
「そうだね~じゃあご飯の支度してくるね!」
振り返りさまにツナギにつけてもらった石の髪飾りが蛍光灯の光に反射して煌めく。ルンルンと擬音がつけれそうな様子でシュウカは部屋をあとにした。
「さて、私も用意の続きしなきゃ」
シュウカが来て中断されていた身支度をするツナギ。机に置いてあった石のネックレスを手に取り首にかける。制服の下に隠すようにしまう。
それぞれが、それぞれの強さと弱さを補いながらこの先もずっと友達で、一緒にいれたらいいな。と願いながら。
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