第十話 「戻レナイ日常④」
「き、きゃあああああああああああああああ」
ユウの悲鳴がどこまでも響くようだった。
「な、に、こ……れ……」
ツナギは言葉を失っている。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ」
ツナギから手を離したナルは冷や汗が止まらないまま、その場に立ち尽くす。
「き…………ら?」
「っ!」
直後、ナルは背後に気配を感じ、とっさにそれを飛び越えて後ろに跳び、ツナギ達から離れる。
ブンッッ
何かが空中を切るような音を立てた。
「ありゃ~残念~」
その音を立てた人物は、場に似合わないのんびりとした口調で失敗を口にする。
「え…………?」
悲鳴をあげ、泣きになりそうな顔を両手で覆い、その状況にただただ震える足で突っ立っていたユウは、手の隙間から見えた人物に驚きを隠せないでいた。
「……秋叶?」
「……シュウ、ちゃん……」
ユウがその人物の名前をあげると同時にツナギも彼女の名前を呟く。
「ツーちゃん、それからユーちゃんも、大丈夫?」
そう二人に聞くシュウカの持っている大鎌からは、赤い液体が滴っていた。
「シュ、シュウちゃんが、やったの?」
震える声でツナギは聞いた。
「そうだよ~?」
シュウカはそれがどうしたのか?という顔で首をかしげている。
「な……なんで──」
「なにしてんの!?!?!?」
ツナギの言葉を、ユウの叫びに近い怒号が遮る。
「なにって……?」
「だって!ねえ!なにもこんな……っ、うっ……」
呆然としていたユウは、現実に戻って自分の足元にある死体を見てしまい、手で口を覆う。
「ねぇ……シュウちゃん……?」
ツナギも震えながらシュウカに声をかける。
「でも、シウが来なかったらツーちゃんも、ユーちゃんも、殺されてたよ?」
「だからって……」
「シウは嫌だよ?」
「………………」
黙り込む二人。
「ねぇ」
「?」
後ろから声がした。
「お前が……」
その声は信じられないほど低く震えていた。
「だったら、なんですか?」
「っっ!殺すっ!」
幾つもの青い光がシュウカ達の方へ向かってきた。
「!!」
ツナギとユウはとっさに目をつむる。
カンッカンッキンッカンッ
「?」
二人が目を開けるとシュウカの目の前で鎌が回転しながら楯のようになっており、向かってきた矢を全て弾き返していた。
「くっ……」
跳ね返ってきた矢がナルの足元にも刺さり、ナルは攻撃を中断せざるをえなかった。
その隙をシュウカは逃さず、ナルの側に瞬時に移動する。
「!?」
ブンッ
ガキンッッ
シュウカは鎌を凪いだが、ナルがとっさに横に避け、持っていたクロスボウだけが飛んでいった。
バランスを崩し、ナルは転んでしまう。
そのナルに対し、シュウカは鎌を振り被った。
「やめてえええええええ」
シュウカは頭上に鎌を持ち上げたまま制止する。そして叫んだツナギの方へ顔を向ける。
「ねえ、シュウちゃん、お願い、やめて?」
「…………」
「こんな、ことしても、何にも得しないよ?」
「……だから、お願い……やめてぇ……」
ツナギはボロボロと涙がこぼれる。
「…………さっき」
「?」
シュウカは体勢はそのままに、ナルの方へ向き直す。
「さっき、なに言おうとした?」
「…………」
ナルは座って顔を俯かせたまま黙っている。
「シュウ……ちゃん?」
「……ねぇ、さっきツーちゃんになんて言おうとしたの?」
「え……?」
「…………」
「黙ってないで答えなよ」
「……ははは。そうか、そういうことか。」
「?」
状況が全くわからないツナギとユウ。
そしてナルは理解する。
理解したナルをシュウカは見下ろしている。
「君は────」
ザシュッッ
シャァァァァァ
「!!!!」
「な…………」
シュウカは鎌をナルの頭から突き刺した。
「ひ、い、やあああああああああああああああ」
目の前の光景にツナギは叫ぶ。
「………………」
ユウはもう言葉すら出なくなっていた。
「…………帰ろう」
シュウカは二人に言う。
二人は他にどうすることもできずに、促されるまま家へ帰ることしかできなかった。
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