第六話 「強サト弱サ③」

「ボボボボボボ」

 ソレは今まで見てきたタイプと違い、塊の下辺りに口のような部位があり、そこから不気味な音を出していた。

「ひゃ~……」

「いつにもまして気持ち悪いね……」

二人は錬金少女になり、それぞれ武器を持って身構える。

「!?」

バシャッ

ソレの塊の両側がブクブクとしたかと思いきや、内側の方から何かが伸びてきた。

「なぁにあれ」

「腕?」

先日、分裂したソレと対峙したときに地面から生えてきたモノに似ていた。

ソレはさらに後方部分からも何かを生やす。

「足?」

と思った刹那、ソレは生やした腕のようなモノと足のようなモノをまるで四足歩行動物かのように使いツナギ達に突進してきた。

「早っ」

ツナギ達は横に跳びかわしたが、ソレも跳びながら方向転換をし、また突進してくる。

ガッ

ツナギの方へ体当たりするソレを、剣で抑えるように受ける。

「ぐぬぬぬ……重……」

少しでも気を抜くと押し倒されそうな勢いだった。

「ツーちゃん!」

シュウカがソレの後ろから攻撃を仕掛けようとする。

「□×#※△」

するとソレは音を発しながらツナギから離れ、攻撃を避ける。

「はぁ、助かった」

息をつくツナギ。隣へ来たシュウカは少し考え込む。

「……見られた」

「え?」

「あれ……」

ソレを指差すシュウカ。

「うわ……」

ソレを見て唖然とするツナギ。

ソレにはさっきまでなかった斑点がいくつも浮き出ていた。斑点に見えるものはすべて人間の目のようにも見える。

「あいつらも進化するってこと?」

「わかんないけど……早く倒さないと……」

「▲○#×°※□」

「なんか言ってる……?」

「うるさいなぁ……」

「え?シュウちゃ──」


 ツナギがシュウカに声をかけようと隣を向いた。隣にはすでにシュウカはいなく、風が吹き抜けた。

[我ハ土ナルモノ 土ノ力ニ基ヅキソノ姿ヲ変化サセル]

シュウカはソレに一気に近づき、武器を変化させる。

持っていた大鎌が増える。一つ、二つ……どんどん増え複数になった鎌をずらし、ソレへと投げる。

「ボベボッ!?」

ソレは逃げようとするが、行く手行く手に鎌を投げられ突き刺さった鎌で逃げ道をなくす。

ソレが上を向いた瞬間、鎌を振りかざしたシュウカが上から飛び降りてきた。

「ベッッッッ」

短い音が聞こえ、ソレの動きは停止した。

「シュウちゃん……?」

ツナギも近くに寄ってくる。

顔をあげたシュウカはいつものにへら笑いをしていた。

「終わったよ~帰ろ~」

「あ、うん……」

その時シュウカの足元のソレが少し動いた。すかさずシュウカは鎌を刺し直す。ソレは砂になって消え去った。


「…………え」

「? どうしたのツーちゃん?」

シュウカは元の姿に戻り、先に歩きだしていた。

「いや……なんでも……」

ツナギもシュウカの後を追い、姿を戻し駆け寄る。

(気のせい……だったのかな)

ツナギはソレにシュウカが最後鎌を突き刺す瞬間、人間の声を聞いた気がしていた。


「「だずげ──」」


(でも、ソレが言葉を話したわけじゃないだろうし……)

少しの気がかりながらも、倒したからまぁいいか。とツナギはシュウカと共に家に帰るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る