第九話 「ある少女の追憶④」
ツーちゃんは翌日とてもショックを受けていた。
だからわたしは意味ないって言ったのにな。と思いつつ、話を聞いていた。
帰り道、忘れ物をしたと嘘をついてわたしは病院の方へと向かった。
もちろん、前倉真流を殺すために。
もともと意識がなかったし、一番簡単だったかも。
その最中にツーちゃんから電話が掛かってきた。
今日は家に帰らないらしい。
わたしは、ちょうどいいなと思い、了承した。
そして病院での事を終えると、わたしはもう一人の錬金少女を探しに、そして下見しに行った。
といっても、誰かはもう分かっていて、ただ周りの警備が厳重なだけ、作戦を立てなくてはいけなかったから。
次の日、本当は学校を休んでもう一人の錬金少女、角ノ森白世を殺しに行こうとしていた。
けれど、注意してた二人、鳳来南瑠と音無綺楽が動き出したため、急遽予定を変える。
マークしておいて正解だった。二人はツーちゃんとユーちゃんを呼び出していた。
外から様子を見ていたら、結界のようなものが辺りを包む。
たぶん、別の契約を結んだんだろう。と推測、問題はない。
しばらく身を潜めて話を聞いていると、鳳来南瑠が、本来教えられることのない情報をツーちゃんに話していた。
(ソレのことはツーちゃんが知っても問題ない。けど……)
「なんで、津凪ちゃん、なんだろうね?」
その言葉を聞いてわたしは飛び出し、手前にいた音無綺楽の首を切り落とした。
三人は混乱していた。
わたしはそのまま鳳来南瑠の首も落とそうとする。
ブンッッ
空振りに終わる。
「ありゃ~残念~」
「……秋叶?」
「……シュウ、ちゃん……」
二人が驚いた様子でこちらを見てた。
「ツーちゃん、それからユーちゃんも、大丈夫?」
「シュ、シュウちゃんが、やったの?」
ツーちゃんの声は震えていた。
「そうだよ~?」
わたしは当たり前の事をしただけなので、そんなに驚かれると思ってなかった。
「な……なんで──」
「なにしてんの!?!?!?」
ユーちゃんが怒鳴る。
「なにって……?」
「だって!ねえ!なにもこんな……っ、うっ……」
「でも、シウが来なかったらツーちゃんも、ユーちゃんも、殺されてたよ?」
「だからって……」
「シウは嫌だよ?」
「………………」
二人は黙り込んだ。
「ねぇ」
「?」
後ろから声がした。
「お前が……」
「だったら、なんですか?」
「っっ!殺すっ!」
幾つもの青い光がわたし達の方へ向かってくる。
「仕方ないなぁ」
[我ハ土ナルモノ 土ノ力ニ基ヅキソノ姿ヲ変化サセル]
鎌を一回り大きくさせ、それを回転させた。
カンッカンッキンッカンッ
そして向かってきた矢を全部弾き返す。
「くっ……」
攻撃が止まったから、足に力を溜め、敵の側に瞬時に跳んだ。
「!?」
ブンッ
ガキンッッ
(あれ、外しちゃった)
(それでも、まぁ転んでくれたしラッキー)
そしてわたしは、転んで倒れた鳳来南瑠の頭上に鎌を振り被る。
すると叫び声がした。
「やめてえええええええ」
ツーちゃんだった。
「ねえ、シュウちゃん、お願い、やめて?」
「…………」
「こんな、ことしても、何にも得しないよ?」
「……だから、お願い……やめてぇ……」
ツーちゃんはボロボロ泣いていた。
わたしは鳳来南瑠に質問する。
「さっき、なに言おうとした?」
「…………」
相手は俯いたまま黙っていた。
「……ねぇ、さっきツーちゃんになんて言おうとしたの?」
「…………」
「黙ってないで答えなよ」
「……ははは。そうか、そういうことか。」
もうダメか。
わたしは鎌を振り下ろす。
「君は────」
ザシュッッ
シャァァァァァ
わたしは返り血を浴びた。
「ひ、い、やあああああああああああああああ」
ツーちゃんは叫んでたし、ユーちゃんは叫ぶ気力もなくなってた。
しばらくそのままでいた。
けれどそういうわけにもいかないし、わたしは二人に「帰ろう」と言った。
もうすぐ、終わるんだ。
わたしの長い戦いも。
そう思うと少しだけ希望が見えた気がした。
家に帰るとツーちゃんは部屋に閉じ籠ってしまった。
「まぁ、しょうがないか……」
わたしがしたことを思えば、そうなんだろう。
まだやることは残っているから、わたしはまた出掛けた。
「……どうやって入ったの?」
高層ビルの一室。窓際に立っていた小学生くらいの女の子はわたしに聞いた。
「…………」
「……聞いても無意味ね。」
「……ねぇ、ひとつ聞いてもいい?」
わたしは目の前の女の子に話しかける。
「…………」
「余計なこと言ったの、きみかな?」
「…………」
「答えなよ」
「……答えても、結末は変わらないでしょう?」
「…………」
ずいぶんと話し方も大人ぶってるなぁっていう印象。
「……止めることは、出来なかったのね」
「……なんの話し?」
「……いえ、なんでもないわ。」
「………………」
「……やるならやりなさい。」
「…………」
「でも、後悔しないような結末に──」
グサッッ
「…………あっけな」
もっと抵抗するかと思った。
「……帰ろう」
期限は明日。
もうあと少し。
それだけが心の支えだった。
思った通りにユーちゃんはツーちゃんを呼び出した。
今日は朝からユーちゃんを見張り、そしてその時が来るのを待っていた。
ユーちゃんの首筋に鎌を当てる。
「…………秋、叶」
「ユーちゃんが銃を撃つのと、シウがこの首かっ切るの、どっちが早いと思う?」
「……シュウちゃんやめて」
「ねぇ、競争しよ?よ~い……」
「やめてって言ってるでしょ!!!!!」
ツーちゃんが怒鳴った。
わたしはビックリしてツーちゃんの方を見る。
「やめて……もう、いいよ……」
「なにが~?」
「っ……私っ……なんでもするからっ……ひっく……だからもうやめてぇ……」
「……私、殺されていいから……だから、もう争わないでぇ……」
「……津凪……」
「……なんでっ、なんで私なの?って思ってるけど、それより、なによりもっ!友達が殺し合うなんて……嫌だよぉ……」
ツーちゃんは、誰よりも優しかった。
自分が殺されても良いなんて普通、言えないよ。
わたしがこんなにツーちゃんのために頑張ってるのに。
だからこそ、ツーちゃんには生きててもらわないといけない。
「…………ごめんね」
「うん」
ユーちゃんが引き金にかけていた指に力をいれる。
「今までありがとう」
「うん」
わたしはそのまま鎌を横にひいた。
バンッ
ブシャァァァァァ
血飛沫が雨のようにわたしとツーちゃんに降り注ぐ。
「え………………」
ゴトンッバタンッ
「ひっいやああああああああああああああああああ」
「いやあああああああ」
ツーちゃんの叫び声が痛かった。
「なんで!シュウちゃん!!!ねえっ!!なんで!!!!」
「?」
「なんでって、そういう《儀式》だから」
「え……なに言ってんの……」
「そんな、そんなことで友達を殺さないでしょ!!!!?!」
「友達?シウの友達はツーちゃんだけだよ?」
そう、最初から最後まで、わたしの友達はツーちゃんだけ。
「は??なに、言ってるの??」
わたしはユーちゃんから落ちた銃を手に取った。
「ひっっっっ」
「これで、儀式は完成する。」
「やっと、やっとだよ?長かったなぁ~」
涙が出そうなくらい嬉しかった。
「なに言って……」
「……胴体、腕、足、目、声、そして──」
わたしは銃を自分の頭に突きつけた。
「なに……して……」
「そして、頭。これで全部だっ──」
ああ、やっとツーちゃんを生き返らせることができる。
笑顔のままわたしは引き金を引いた。
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