第六話 「友達トノ日々③」

「マリちゃん、もう一年くらい経つんだっけ……?」

 ふと病院へのバス内でシュウカが聞いた。

「そうだね、ちょうどくらいかな?」

「そっかぁ」

 病院へ向かうバスというものは何か物を発してはいけない空気にさらされる。普段おしゃべりな分、シュウカにはそれが少し苦痛だったのだろう。それでもその後は無言が続いた。


 『前倉まえくら 真流まり』ツナギのひとつしたの妹で去年の初夏、事故に遭い、病院で寝たきりでいる。まだ目は覚ましていない。

ツナギは自分の時間が空いていればマリの病室に通っていた。シュウカもよく付き添っている。

病院へ着き受付などを済ましマリの病室に行く。


 寝たきりのマリ。前回来たときから特に変わった様子もなさそうだった。

(もう一年かぁ……)

ツナギはマリの前髪を撫でるように人肌を確認した。


「お花は……あ、まだ新しいみたい」

通り道の花屋で買った花を生けるために花瓶を確認したシュウカ。

「親が先に来てたのかもね」

ツナギは今こそシュウカと暮らしているが、特に両親との仲が悪いわけではない。むしろ仲は良い方だった。

シュウカの親が仕事でしばらく家を空けており、シュウカ一人だとなにかと大変だろうとツナギがその間暮らすことにしていた。


「花瓶いっぱいになっちゃうね……どうしよう」

「うーん、今日は持って帰ろっか。」

「残念。マリちゃんに似合うと思ったのにな。」

 黄色いマリーゴールドを束ねた小さな花束を抱えてしょんぼりするシュウカ。

「代わりにお家で飾ろっか。飾ってあげないとお花ももったいないし」

「うん!」

シュウカは顔をあげ、えへへとばかりに笑顔になった。

(相変わらず喜怒哀楽がわかりやすいなー、それがシュウちゃんの良いところだけど)

ツナギも少し微笑んだ。


「真流の様子も見れたし、今日は帰ろっか。」

「うん……マリちゃん早く起きれたらいいね……」

「そうだね。でも私たちに出来ることはないし、シュウちゃんがそう思ってくれるだけでも嬉しいよ」

「うん……」

そんな会話をしながら病室を出る二人。

出る間際、マリの方をチラ見しツナギには聞こえない声でシュウカが呟く。

「本当に似合うと思ったのにな。




「……ツーちゃん!今日のお夕飯は何にする?」

「えーそうだなーんー、ハンバーグとか?」

「ひき肉買って帰らなきゃだね!」

「そうだね。スーパーに寄って帰ろう」

「うん!」

 その日二人はスーパーに寄り、ひき肉やその他の材料を調達して家路についた。

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