第五話 「友達トノ日々②」

キーンコーンカーンコーン……


「んー!終わったー!」

 ユウが席で腕を大きく伸ばし、解放された喜びの声をあげる。その周りにいるツナギとシュウカ。他のクラスメイトはそれぞれ帰宅の準備や部活の準備をしている。

「今日も疲れたね~、というかツーちゃん一回怒られてなかった?」

「あー、あはは。なんか今日どうも眠くて……」

ツナギは笑って誤魔化す。

「そっかぁ……」

シュウカの表情は少しツナギの様子を気にしているようだった。

「あ、シュウちゃんさ、朝言ってたパンケーキ屋さん。どうする?」

「えーなになにー?パンケーキ?」

「そう。なんか近くに新しくできたって朝シュウちゃんが……シュウちゃん?」


「ほぇ?」

名前を再度呼ばれてシュウカは自分のことだと気づいた。

「あ、ぼーっとしてた~えっと?」

「ふふ、ほらパンケーキ!朝言ってたでしょ?」

「あー!うん!これかな!ふへへ~美味しそうでしょ~」

お店のホームページを見せびらかすシュウカ。

「いやなんかすでに顔が食べた感だしてるじゃん」

「ユウちゃんも行く~?」

「行きたいのは山々なんだけどなぁー、今日、ちょっと部活の頃の先輩に呼び出されてて……」

「うえー残念……」

急に萎れるシュウカ。

「あはは、じゃあまた三人で行けるときに行こっか。」

「そうだね~二人で行ったらユーちゃんかわいそうだもんね~」

「かわいそうとはなんだかわいそうとは」

じゃれ合うシュウカとユウ、そしてそれを見守るツナギ。いつもの光景。


「先輩の呼び出しってなんの用事?」

「あ、なんか他校の部活見学みたいなんだけど……なんかアドバイザー的な感じに呼ばれたらしくて……」

「ほ~ユーちゃんすごーい!」

「あはは、って言っても言葉だけじゃね!私語彙力ないしなぁ……」

その言葉には少し悔やみが込もっていたようにとれた。

 ユウは元々校内の陸上部でエース。つまり大会も毎回出て優勝するような選手だった。ツナギたちと仲良くなったのは車椅子になってから。ツナギたちはそれ以前のことはあまりよく知らない。だから新鮮な態度も取られる。その事自体本人はあまり気にしていないようなフリをしている。それに気づいている二人もまた気にしないようにしていた。

「っとそろそろ先輩との時間だ。じゃあまた明日ねー」

「うん!また明日~」

手を大きく振るシュウカ。

「また明日。」

ツナギも手をあげ、ユウは車椅子を転がし教室から出ていった。


「うーん、パンケーキ……はダメだったし、今日はお家に帰る?」

シュウカは自分達の行き先を決めれずに困っていた。

「そうだねー、あ……」

「うん?」

真流まりのところ……寄ってもいいかな?」

「うん!いいよ~」

「ありがとうシュウちゃん」

帰りの行き先も決まり、二人は帰宅の準備をし教室を後にした。

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