第十一話 「イツモノ日常ノ終ワリ①」
いつもの日常は、いつも通りに始まる。そしていつも通りに終わる。それがいつもの日常だからだ。
「───もう───」
「始まって──────が─」
「───早く───手遅れ──」
「────のままが────」
「今すぐ───なたが──」
「──おも──ださ──と──」
「ツーちゃん?」
「うんー……わっ」
目を開けると視界めいっぱいにシュウカが見えた。
「ち、近いよシュウちゃん……」
「ごめんね?驚かしちゃった?」
顔を離し、首を傾けるシュウカ。
「ツーちゃん、なかなか起きてこないし、うなされてたから心配になって……」
「またうなされてた?」
「うん」
「そっか、ごめんね。でも全然覚えてないからわかんないや……」
「そう?それならいいんだけど……ここんとこ毎日だよね~」
ツナギは上半身を起き上がらせベッドに座る。
「うーん、でもなにか悪い夢を見ていたわけじゃない……と思うし、気にしなくて大丈夫だよ」
「ちゃんと寝れてないのかな~一緒に寝る~?」
「それシュウちゃんが一緒に寝たいだけなんじゃ?」
「そーともいうね~」
「あはは、着替えて下に行くよ。先行ってて」
「うん~」
シュウカの足音が遠のく。
ツナギは冗談交えながら『気にしなくて大丈夫』とシュウカに言ったものの、ツナギ自身違和感を覚えてはいた。
授業中、普段ほとんど居眠りなどしなかったが、最近はほぼ毎日眠気が襲う。その度になにかを忘れているような感覚に陥る。なにかと言われてもなにかなんて分からないのだけれども。
(はぁなんか疲れてるのかなー)
自分の不甲斐なさに落ち込みながらツナギは身支度を済ませ、シュウカの作った朝ごはんを食べに部屋をでた。
「おはよー」
「はよー」
朝の挨拶がクラスメイトによって連呼される教室。ツナギ達もまたその中に混じっていた。
チョウチョがツナギの横を過ぎ去る。
「あ、冬乃さんおはよう」
「…………」
チョウチョはツナギを横目に見ただけで無表情のまま自分の席に行ってしまう。
「あはは……」
無視された形になったツナギは苦笑いで事を流す。
「ツーちゃん、ツーちゃん、朝の体育、外だって~」
シュウカが横から飛びついてくる。
「おー毎度のごとくお熱いですなぁ~」
ユウも反対後ろから登校してきた。
「あ、夕おはよう」
「おはよ!」
くっついてるシュウカはそのままにユウと三人で話す。
「シウ、体育きらーい……」
「元でも運動部前にそれを言うか……」
「ふぇだってシウ、いつも遅いし~楽しくないもん~」
「じゃあ今度、夕と鳳来さんにでも教わる?」
「ツーちゃんまでーそうやって~」
拗ねて膨れるシュウカ。
「秋叶のそれもほんとズルいよねー」
と言いながらシュウカの頬っぺたの膨らみをつつくユウ。
「あはは」
いつも通りだけどこの空気が好きだなと思うツナギ。
「あ、着替えてこなくちゃね」
「じゃああたしは教室で待ってるよ」
「えーシウも着替えたくない~」
「ほらほら行くよー」
「津凪がんばれー」
「え、そこシウじゃないの~?」
ツナギは嫌々になっているシュウカを引っ張りながら更衣室へ向かい、ユウは自分の席へ戻る。
「…………」
そんな様子を教室の端の席からチョウチョは眺めていた。
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