第二話 「ある少女の回想②」
それからその子はことあるごとにわたしに話しかけてきた。
その子の周りにいた子達は、どうやらその子がわたしに話しかけるのをやめてもらいたいらしい。何回も止めようとする姿も見てきた。
わたしも、話しかけてこられても何を話していいかわからないし、お互い無縁でいた方が、お互い幸せなんじゃないかと思っていたからその子達には同情する。
一週間くらいしつこく話しかけてきていた。
すると止めようとしていた子達は諦め、その子から離れるようになった。
わざわざ友達を減らすような真似してなにしてるんだろう?と、心底その子のことがわからなかった。
わたしが持ってないものをいっぱい持ってるくせに、それを意図も容易く捨てようとしてるなんて、なんだか腹立たしかった。
帰り道も同じ方面だったらしく、通学路で見かけると話しかけてくる。わたしは思いきって聞いた。
「ねぇ、なんで話しかけてくるの?」
「なんで?んー、話したいから?」
聞きたかった答えじゃなかった。
「……そうじゃなくて、あなた最近クラスから無視られはじめてるんだよ?なのに、なんで──」
「あーそんなこと。」
「言ったでしょ?後悔したくないって。」
ニコッと笑いかけられた。
「……余計に、後悔するんじゃないの?友達もどんどんいなくなってって──」
「その子達って、私の、友達だったのかな?」
「えっ」
その言葉にビックリして歩くのを止めてしまった。
「……話してたなら、友達じゃないの?」
「んーーー…………」
彼女は長く唸って考えている。
「……じゃあ、大元さんは友達ってなんだと思う?」
「……そんなの、」
「毎日話し合うのが友達?、私と仲良くしておけば先生の印象があがるかもと思ってるのが友達?、私が仲良くなりたい子と話そうとしたら離れてくのが友達?」
「…………」
「私は、自分が仲良くなりたい子と仲良くできたらなぁーって思ってるけど……」
そういってわたしの方を見て言った。
「大元さんはどう?私と仲良くなりたくない?ないなら諦めるけど……」
「わた、しは……」
もちろん話せる友達なんてネットのSNSくらいしかいなかったから、リアルでのしかも同じクラスで、憧れてたような子と友達になれるのなら、なりたい。
けどそれは、結局彼女が言っているような子達と変わらない動機なんじゃないかって思った。
そんな悩んで黙っていたわたしの心を見ていたかのように言う。
「大丈夫だよ!大元さんなら。そんな子達とは違うって私、信じてるから!」
とびきりの笑顔で。
「っ!!」
わたしはその場でポロポロ涙をこぼしてしまった。
「ふぇ……」
「わわっどうしたの?お腹痛かった!?」
本気で心配しはじめた彼女がとても面白く思えて、涙も自然にまった。
「ううん、ずびっ、ありがとう……」
「はい、ティッシュ。どういたしまして。」
もらったティッシュで顔を拭き、鼻をかんだ。
「ふふふ」
「にゃに……?」
泣いていた声で噛んでしまった。
「ううん、ふわふわして可愛いなぁって」
「……そんなこと」
「きっとみんな大元さんが可愛いから嫉妬してるんだね」
「……しゅうか……」
「え?」
「しゅうかで、いいよ……」
そう言ったら彼女の目は大きく見開き、とても嬉しそうに答えた。
「私!前倉 津凪!」
「……知ってる」
「あはは、そっか。よろしくねシュウちゃん!」
「……うん、ツナギ、ちゃん」
「うーん、私がシュウちゃんって呼んでるのに、そのままってなんかまだ距離感じるなぁ?」
「え…………」
「シュウちゃんって、シューって伸ばしてるように聞こえるから、私のこともツーちゃんにしない?」
「ツー、ちゃん?」
「うん!そのほうがいいな!はっ今日、妹の勉強みるんだった……」
「妹さん……?」
「うん、ひとつしたで真流っていうんだけど、ほら受験生だから」
「あ、そうなんだ……」
「……よかったらシュウちゃんも家に寄っていく?」
「えっ、お邪魔になっちゃうよ」
「いーのいーの!今日出された課題一緒にやろうよ」
「でも……」
「私ね、誰かと一緒に勉強するの、夢だったの」
「え…………」
「ちっぽけな夢でしょ、でも、一人でやるより楽しいのかなって。もちろん妹のもみるけど……」
「……ツーちゃんが、よければ」
「やったー!じゃあ行こう!」
「あっ……」
わたしの手を握り、ツーちゃんは駆け出した。
その手はとても暖かかった。
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