第七話 「戻レナイ日常①」
ツナギがユウの家に泊まった翌朝。
ユウ宛にナルから届いたメッセージを確認した二人。
「……どうする?津凪」
「……どうするって言われても……」
ツナギは少しだけ考え込んだが、顔を上げ言った。
「私、儀式のこととかなにも知らないし、もし鳳来さん達が知ってるのなら教えてもらいたいと思う」
「…………」
「だって話し合いって書いてあるし……」
「……罠、だったら?そしたらあたしだけでいくのも──」
「それじゃあ夕が心配だよ!」
本気で心配になり声が大きくなるツナギ。
「あたしは……大丈夫だよ……きっと」
それに対して小声で答えるユウ。
「そんなのわかんないよ……」
「それに、シュウちゃん……」
「秋叶がどうかしたの?」
「えっあ、ううんなんでも!」
シュウカも錬金少女ということはユウは知らない。昨日あの場に居たのはツナギだけだった。
(シュウちゃんのこと話したら、余計こんがらがると思うし、夕に余分に心配かけさせたくないもんね……)
ツナギは誰に言うわけもなく心のなかに留める。
(誰も知らないし、シュウちゃんが襲われることはないよね……。シュウちゃん、錬金少女になると強いから、大丈夫だとは思うけど……)
「…………」
一人で思考を繰り広げてるツナギをユウは横目に見ていた。
「とりあえず、学校いく仕度しようか」
「あっそうだね、もうこんな時間だ……」
二人は学校へ行くための準備を始める。ユウは車椅子のために用意の時間が少しかかる。ツナギも手伝ったりしてギリギリになったがなんとか遅刻せずになりそうだった。
キーンコーンカーンコーン……
「はぁーセーフ」
「よかったぁ間に合って」
「津凪もギリギリになっちゃってごめんね」
「大丈夫だよ!間に合ったんだし……」
そう言いながらツナギはクラスを見渡す。
「あれ……シュウちゃん……?」
クラスには毎日側に居た友達の姿が見えなかった。
「早く席に着けーHR始めるぞー」
「あ、はい……」
担任に促され教室内で散らばっていた生徒は皆、席に着く。
「出席ー、えーっと、空いてる席は……」
「四つ……?例の三人と、もう一つは、大元か」
「連絡は来てなかったけどな。誰かなにか知らないかー」
「…………」
少し教室内がざわめいただけで、答える生徒はいなかった。
(シュウちゃん……)
ツナギにも特に連絡はないため、なにもわからずにいた。
「そうかー、まぁ家からも連絡があるわけではないし、とりあえず欠席か」
担任は自分のノートに印を付ける。
「じゃあなにか連絡つく奴がいたら教えてくれー」
残りの連絡事項を伝え、朝のHRは終わりになる。
「──以上。じゃあちゃんと授業の準備しろよー」
教室から大人がいなくなる。
すると安心したように、それぞれ生徒の私語が少しずつ増えていった。
「夕……」
「……あたしにも連絡は来てないよ」
ツナギはとても心配そうな顔をする。
「でも昨日の夜は電話にでたんでしょ?じゃあ少し体調悪いだけなんじゃないかな?」
「そう、だね……」
「そもそも昨日の件に秋叶は関係ないんだし……」
「…………」
「授業始まっちゃうよ。とりあえずお昼くらいに連絡してみたら?」
「……うん。そうする」
そうして午前の授業を受け終え、昼休みになる。
プルルルルプルルルル
〔留守番電話サービスに接続します。ピーと音がなり次第用件を──〕
「…………」
「ダメ?でない?」
「うん……」
「もしかして寝てるのかもよ」
「うん……」
「……とりあえず、お弁当、食べようよ」
「そうだね。せっかく夕のお母さんが作ってくれたんだし」
少しだけはにかんでみせるツナギ。
「うん」
二人は特に盛り上がる話題もなく、黙々と食べていた。
(シュウちゃん、大丈夫かなぁ……)
(もし風邪だったら。私、早めに帰らないと……)
ツナギは今日の予定を思い出す。
(そういえば、鳳来さん達との話し合いがあったな……)
「…………」
「ねぇ津凪?」
「えっなに?」
「もし、秋叶が心配なら……」
「あっ……」
「だ、大丈夫だよ!きっと。夕が言ってたみたいにただ寝てるだけかもしれないし!」
「そう……?でも……」
「人との約束は、約束だから!」
「それに、シュウちゃんも小さい子供じゃないんだし、私がいなくても……」
「そうだよね。高校生だし、1日くらい一人きりでもそんなに大したことじゃないかぁ」
「うん……話し合い終わったらなるべく早く帰るようにするけど……」
「…………」
「夕……?」
「ううん、そう、だね」
「うん」
そうして昼休みも終わり、午後の授業も終わりに近づく。
教室の窓の外はずっと雨続きだった。
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