第三話 「楽シイイツモノ日常③」

キーンコーンカーンコーン……

朝のHR5分前の予鈴が学校中に響き渡る。


「ふえええ間に合った~」

 シュウカが席に座り、両手は伸ばし机に顔を突っ伏していた。

「あはは大げさ~」

その脇に立っているツナギは呆れた顔でシュウカを見て言った。

「だってぇ~シウ、運動苦手なんだも~ん……」

頬を膨らませぶーぶーと文句を言うシュウカ。

そこへごろごろごろとタイヤ音が近づいてきた。

「おっ朝からやってますなぁー」

「あ、ユーちゃん!おはよ~」

「おはよう、夕」

 シュウカがにへらと笑い、ユーちゃんと呼んだ少女。ツナギも続けておはようの挨拶をする。

網走あばしり ゆう』ポニーテールをし、いかにもスポーツが得意そうな見た目をした彼女は今日も車椅子に座っていた。

「やー、にしても秋叶は今日も可愛いなぁ~」

「ほえ~?褒めてもなにも出てこないよ~?」

「いや、こうしたら出るかもしれん」

不敵な笑みを浮かべたユウはシュウカが両手を伸ばしていたのを逆手にとり、がら空きのボディに両手を忍び込ませた。

「ひゃっ止めてよユーちゃ……ひゃはははははは」

「こんにゃろーなんか出せー!」

「ひひひひひふふふふふでな、でないってぇ……ひゃはははは、て、てかツーちゃん見てないで助けてぇ~」

「ふふふふ、そのくらいにしたら?夕、先生そろそろ来ちゃうよ?」

「そうだねっ」

ツナギがそう言った直後にユウはピタッと動きを止め、両手を上げた。

「ふええ助かったぁ……」

安心したのもつかの間、ユウは席に戻る際にシュウカににやけながらこう言った。

「ねぇ?くすぐられてたら暫くはその手の動きで思い出して笑っちゃうんだって」

とユウは空中でくすぐるような動きを両手でやって見せる。

「ひゃあっせ、先生来たらやらないでよ~!」

涙目になりながらシュウカは時々振り返り様にユウがしてくる遠隔攻撃に耐えながら朝のHRをやり過ごしたのであった。





「…………。」

そのやり取りを遠目に見ていたクラスメイトが一人。

は、残酷ね。」

なんの色も取って見えない声で独り言を呟いた。

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