第二話 「イツモノ日常ノ変化②」
いつもの通学路、いつもの空気、いつもの教室、いつもの音、いつもの挨拶、いつもの声。
なにもかも全ていつも通りだ。違うのは昨日の出来事だけ。なんなら、今なら昨日のはやっぱり夢で現実じゃないとさえ思えてくる。自分の幻想だと。そうツナギは少しばかり思っていた。そう思いたかったから。
「おはよう、夕」
「はよ~」
「ん?あぁ、おはよう津凪!秋叶!」
いつもの友人の笑顔にこんなにも安心感を覚えたことはない。
「あの、さ、昨日の帰り道……なんか、なかった?」
「ん?昨日?パンケーキのあと?」
「そう、私達と別れたあと」
「なんかって?」
「えっとほら~スプラッタ映画~?みたいな~」
「ちょ、シュウちゃん!?」
いきなり具体例を出すシュウカに焦るツナギ。
「スプラッタ映画?ふふふなにそれー」
「あ、いや、ほ、ほら昨日帰ったらそんな映画のテレビやってなかったっけー?みたいな……はは」
「あーそういう?あたしは観てないなぁ」
「そう!なら、いいんだけど……」
友人は巻き込まれてなかったことにホッとするツナギ。
「あ、あと、冬乃さん……見なかったかな?」
「冬乃さん?最近話題にでるねーなんで?」
「あ、いや、そのほら!冬乃さんがスプラッタ映画好きっていう噂を聞いてね!?昨日観たやつの感想というか……」
「なるほど?でも今日はまだ見てないなぁ……」
「そっか!ありがとう、夕!あ、先生来ちゃうし、その前にトイレ行かなきゃ!じゃあまた休み時間に!」
「うん、また後でー……」
ツナギはシュウカを連れ教室を一回出ていく。
(なんか、ツナギの様子変……だったな。)
ユウは友人達の違和感に少しだけ心配しながらポケットの中に手を入れ、小さな袋を出す。
「冬乃さん……か」
ポケットから取り出したものを眺めながらユウは独り呟いた。
「ツーちゃん、冬乃さんいなかったね~」
「そうだね……でも、夕が巻き込まれてなかったみたいでよかったよ」
教室から少し離れた廊下で話す二人。
「これからどうするの~?」
「うーん、でも学校来ちゃったし、とりあえずは授業出ないとね」
「うーだよねー」
少ししょんぼりするシュウカ。勉強もだが授業自体苦手らしい。
「お昼は夕も一緒だし、冬乃さん……は今日は来ないのかな……」
「そうだね~」
「じゃあまた放課後探そうか」
「探すって、ツーちゃん冬乃さんのお家とか知ってるの~?」
「あ……知らない……」
「…………」
考え込む二人。
キーンコーンカーンコーン……
朝のHRが始まる鐘が鳴る。
「わわっ」
「とりあえず私、授業中に少し考えておくね、この話はまた放課後で!」
「うん~」
「じゃあシュウちゃんはちゃんと授業聞くんだよ!」
「ふぇ~~」
シュウカの情けない声が響く。
「こら、そこの二人、教室に入りなさい」
「は、はい」
別のクラスの先生に声をかけられた二人は自分達の教室へ急ぎ足で戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます