おまけ 番外編(本編はエピローグまで)

「ある少女の娯楽」

 色のない桜は常に咲き誇り、花びらを散らしている。

そして地上には真っ赤な彼岸花と薔薇が咲き乱れている。

そんな異常な空間。


 其処に、時間というモノはなかった。


故に、其処に在るものは全て成長せず、衰えもせず、ただ其処に存在するだけ。


そんな場所に少女は500年ほど前から存在していた──



「あ、お帰りなさい」

「…………」

「お勤めご苦労様~」

「…………」

 労いの言葉をかけるその少女は、寝っ転がり、巨大な本のページを捲りながら続けて話し始める。

「とてもよかったわね!」

「特にの最後の選択は最高だったわ」

「あれはさすがに予想しなかったわ。これだから人間は面白い」

少女は手を口元にあて、ククククッっと肩を震わせながら笑っていた。

「貴女もそう思わない??」

「……その呼び方は……」

「えーせっかく名前をつけてあげたのに」

子供らしく頬を膨らませる少女。

「名前といえば!『錬金少女』ってネーミング、よかったって思わない?」

「だって、バラバラになったりした彼女達にぴったりでしょう?」

少女はケラケラ笑いながら楽しそうに話している。

チョウチョそれを無感情のまま聞いていた。

「……どうせ全て知っていらしたのでしょう?」

「……なんのことかしら?」

「…………」


「貴女が角ノ森白世に助言をしたこと?それとも最終的な結末?」

「ちなみに、結末を先に見ることはしてないわ!だってそれじゃあ面白味がないもの!」

「角ノ森白世の件に関しては、放っておくほうが面白そうだったから~」

「そうですか」

「そうよー」


其処に居る少女。

彼女の名前はフィーユ。全てなる魔女。

そして全世界の最厄たる少女。

感情で瞳の色が変わる。

彼女が願えばなんでも叶う。

全ての魔法を使うことができる。

彼女が其処にいるのは、それらを恐れた人間がこの場所に閉じ込めたからだろう。



そしてフユノチョウチョは彼女に生みだされた。

今回の儀式の取り纏め役として。

外の世界で彼女が動くための代わりとして。


「にしても……」

「思った以上に感情的になるものね」

「?」

「最初は本当にただの人形のようだったのに……」

「どうしてそんな悲しい顔をしてるの?」

「…………」

「それじゃあ、まるで私が悪者みたいじゃない」

「私はただ、機会を与えただけ。……だってカワイソウだったんだもの」

「…………」

「彼女達は自分で運命を決めた。それだけのことよ」

「…………」

「まぁ、私が暇だったからっていう気まぐれなんだけど」

「…………」

「人間って退屈しないもの」

「…………」

「私も一応人間だけど」

「…………」


「ねえ?貴女はどう思うかしら?」

そう言ってフィーユは、視界上のチョウチョに重ねるように手を伸ばす。

「…………」

返事はない。



「……結局、退屈なのは変わらないんだけどね」

其処には、少女が独り、居ただけだった。

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錬金少女-Alchemy Girls- 散花 @sanka_sweera

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