第一章 「始マリ」
第一話 「楽シイイツモノ日常①」
ノイズ走った声が聞こえてくる。
「──やく、──さな──と──」
「あ──が、──い─さ──いと──」
「たい──な───とに──」
「はや──おも──して────」
ピピピピッピピピピッ
「んーーーるさ……」
ピピピピッピピピピッ
「うーーーん」
ピピピピッピピ
ダンッ
「あー……」
寝ぼけ眼で音のなる時計を止め、時刻をみた。
「まだ寝れ……る」
バタリと全身の力が抜けまた眠りに……
バンッ!
部屋の扉が勢いよく開いた。
「あーー!こらー!もう寝ちゃだめ~~!起きて~ツーちゃん!!」
開いた扉から出てきたのは制服の上にエプロンをし、左手にはフライ返しを持った少女。
顔が少ししかめっている。頬を膨らませ腰に両手を当てて怒ってるようだ。
プリプリとしているその様子は幼児を連想させ、全くもって恐くない。
と、ベッドの上から仰向け逆さまにその子をみていると上から覗き込まれた。
「ツーちゃん!朝ごはんだよ!」
「早起きだねぇシュウちゃんは~」
ツーちゃんと呼ばれたベッドに仰向けのままの少女は、喋りながら膨れっ面のほっぺたを抑えてみる。
「もー、ツーちゃんの分、作っちゃったんだから早く来ないと冷めちゃうよ~」
「ごめんごめん、今起きるよー」
「じゃあ準備してるから早く来てね」
「うんー」
制服エプロンの少女が部屋から去っていくのを見送り、さて、と起き上がる。パジャマのボタンに手をかけながら、『ツーちゃん』はふと今しがたみていた夢が気になった。
(なにか夢の中で聞いた気がする……けど、なんの夢かも覚えてないし……)
「夢だし、まあいっか」
と独り言を呟き、それからは思い出すこともなく朝の準備をした。
階段を降りながら、すでに鼻腔には朝ごはんのふんわりした匂いが充満していた。
「わー今日はパンの日?」
「そうだよ~あと卵作った!」
「スクランブルドエッグじゃん~おいしそー」
4人掛けの四角いテーブルと椅子に2人分の朝ごはんが向かいあって用意されていた。いつもの光景。
「「いただきます」」
時刻は7時半、8時に家を出れば学校に間に合うため時間に余裕はある。
「ツーちゃん、今日寝起き悪かったね?」
前にいる制服エプロン姿の少女、シュウちゃん。『
「そーお?」
疑問を投げかけられたツーちゃん。ツーちゃんと呼ぶのは彼女だけで本名は『
「うん、あとなんかうなされてた?気がする……」
「えー全然覚えてないなぁ……」
「そう?ならいいんだけど……」
「夢だしうなされてても問題ないよ、元気元気~」
「そっか!」
不安がぬぐえたのかシュウカは砕けたふにゃんとした笑顔を見せる。
「シュウちゃんはかわいいなぁ~」
つい本音が漏れてしまう。それほどまでにシュウカという少女はそういう雰囲気をも持ち合わせている。
「え~?ツーちゃんも可愛いよ?」
「そういうんじゃなくてさー」
とホワっとした空間を過ごす2人。
いつもの朝。
「ほら、でもそんなゆっくり食べてると時間なくなるよ?」
食べ終わりそうなツナギに対して、まだ半分なシュウカは慌てて食べだす。それを見ながら小動物的な可愛さに頬が緩んでしまう。
(本当に可愛いなぁ、いつまでもこんなでいてほしいなぁ)
と身勝手だが、友人の変わらない未来を想像して、安易に想像できてしまい、口から笑いが溢れる。
「ふぁにふぁふぁっふぇんの~?」
「んー?なんでもー?」
「ひぃふぃわる」
頬張りながらいじける姿も愛らしく、同じ人間だと思えないくらいだな。と思うツナギであった。
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