第44話 ラスボスと言われる何か#3
空の様子はすっかり朱く染まっていた。
サンティにはまだ分からないことがいっぱいある。
そもそも、どこにボスの拠点があるかとか、どこに宿があるか......など。
「――いらっしゃいませー!」
「..................マジか」
燐に連れられると、そこはまさかの......サキュバスの店だった。
「どうかな?お兄ちゃんなら喜んでもらえると思うんだけど......」
「......」
俺は無言で、そのサキュバスたちを見ていた。
「お兄ちゃんってばー!」
「――はっ!」
「ぼーっとしてどうしたのー?」
「あ、いや、なんでもない......というか、ここって宿?」
「うんそうだよー」
燐は笑顔でそう言うが、ここにいる人たちは全員男性だった。
「というかここって......燐が来ちゃダメなとこじゃないのか?」
「んー?......多分、大丈夫ー」
多分って......。
「......というか、なぜわざわざサキュバスの店?」
「私言ったでしょー?一個当てがあるって」
「その店っていうのが......ここって訳か」
というかなぜ燐が、サンティにサキュバスの店があるって知ってたんだろうか。
......謎だ。
「で、ここで一週間過ごせっていう事だよな」
「そうそう、でー、ここってただの宿じゃなくて――」
「言わなくても分かるって......サキュバスってことは......アレしかないだろ?」
「さすがお兄ちゃん!話が分かるねー」
サキュバスと言えば......アレだ。
まあでも、サキュバスって言っても色々あるからな......。
「さてと......あのすいません、ここって本当に宿なんですか?」
俺は、本題に入るべく受付のサキュバスに訊いてみた。
「もしかして......ここは初めての方ですか?」
「え、あ、まあ......」
そもそもサキュバスの店なんか一度も行ったことが無い。
「なるほど......ここの店はどういう店かを説明すると、サキュバスっていう事なので、まあ......性に関することがほとんどですけど......他には、サキュバスとお話ししたり、なんならお持ち帰りしたり......まあ、色々と遊び方は自由な店です」
......遊び方って......。
「あと、一番の特徴としたら......サキュバスを選べるってことですかね」
「へぇ......色々あるんですね」
「そうですね、お兄さんは、ここに泊まったりします?」
「あ、はい、一応妹と......」
「妹さんがいるんですね!じゃあ......」
するとそのサキュバスは、なにかのカタログらしきものを俺に見せてきた。
「うーん......今空いてる部屋は、ここぐらいしかないですね。本当だったら、妹さんと一緒の部屋にしたいところなんですけど......でも、個別の部屋しか空いてませんけどどうします?」
「あー......じゃあ、それでお願いします」
「分かりました、少々お待ちください」
ここの宿に泊まれなかったら、完全に野宿する羽目になるので、俺はともかく燐が嫌がると思うからここを逃すわけにはいかないのだ。
「それで、部屋は取れたの?」
と、俺の後ろからそんな声が聞こえた。
「ま、まあ一応......というかどこ行ってた?」
「んー?トイレ」
「ああ......」
「それでは、ご案内しますので、ついてきてください」
「あ、はい」
受付のサキュバスではなく、別のサキュバスの後ろについて行き少し歩くと。
「はい、こっちがお兄さんで、こっちが妹さんの部屋です」
「ど、どうも......」
「それでは、ごゆっくりー」
サキュバスはそう言うと、すぐにこの場から歩き去って行った。
「ふぁぁ......疲れた」
部屋の中に入ると、そこは一つのベッド......だと最初は思ったのだが、まさかのダブルベッドだった。
つまりは......サキュバスと一緒に寝る用ってことか?......だって、ここ個別の部屋だぞ?
意外に中は広い。
ベッド以外には、クローゼットやテーブル......ここら辺は、ミリエンとかのホテルに似てるかな。
「これは......?」
テーブルの上には、なにかのカタログらしきものが置いてあった。
「なるほど......そういう事ね」
そのカタログには、色々なサキュバスの特徴などが書かれていた。
「......」
俺は無言でカタログを手に取ると、パラパラとめくってみた。
そして数分後。
「この子かな......」
最後ら辺に、俺に合いそうなサキュバスを見つけた。
「で......注文は受け付けまでか......」
最後の表紙には、『注文は受け付けまでお願いします』と書かれていた。
俺はそのカタログを受け付けまで持って行き、さっき決めた子を受け付けの人に言った。
「それでは、ご自分の部屋に戻っていてください、ちょっと時間がかかるかもしれませんけど......」
「あ、全然大丈夫ですよ」
「できるだけ、早めに準備しますので......」
俺はその後、自分の部屋に戻り、いつ来るのかとワクワクしていた。
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