第22話 メイはドSだけど、ちょっとだけエロい

モンスターを倒し続け、気が付けば空は夕焼けになっていた。

「これぐらいでいいんじゃないか?」

俺はメイにそう言うと、

「あ、うん。じゃあ、この後ご飯いこーよ」

と陽気な感じで言った。

「あ、ねぇお兄ちゃん?」

「うん?」

すると燐は俺に抱き着きながら俺に問いかけてきた。

「あ、あの.......え、と......」

「......?」

燐は何が言いたいんだろうか。

もしかして俺は燐に嫌われたとか?

だったらなぜ俺に抱き着いているのか。

矛盾が生じていた。

そして数秒が経つと、燐がようやく口を開いた。

「あの!」

「わっ!?」

燐は俺とキスがてきるぐらいの距離に燐の顔があった。

燐はそこまで言ってまた黙ってしまった。

しかも顔をちょっと赤くして。

「ええと.....燐?」

「――!?」

俺は燐の額に手を当ててみた。

俺の手が燐の額に触れると、燐はちょっと驚いたような感じを出した。

「......大丈夫か」

熱は無いらしい。

だけど......なぜ?

「や、やっぱり、家に帰ったら言うから.....そ、その、い、今は......!」

「あ、う、うん......?」

なんか燐が急にツンデレっぽくなった気が......?

「あははっ、まあ、女の子ってのはそういうものなんだよお兄さんっ」

とメイが一言と同時に、俺の左腕に抱き着いてきた。

「......むぅ......」

右腕に抱き着いている燐はなぜか唸り声を出していた。

俺にも他人の心が読める魔法が欲しいなぁ......。


そして時刻は夜中。

もうすっかり空は真っ暗になり、明かりが無いと見えない状況だった。

日本時間で例えるのなら......深夜11時ぐらいかな。

今いるのは帰りのタクシー。

燐はずっと窓の外を眺めていた。

あの後は、美味しいご飯を食べ、ミリエンのお酒をちょっと飲んだぐらい。

そこから話が進んでいき気が付けば1時間以上もメイと一緒に話をしていた。

話の内容としては......お金はどうやったら稼げるのかとか、今後もしも一人で生活しなきゃいけなくなったらどうしたらいいのか等々......。

その話の中には、ちょっとだけエロい話なんかも入ったりしていた。

「......お兄ちゃん」

今まで窓の外を眺めていた燐が俺の方に体を寄せてきた。

「......好き......」

「えっ?」

「な、なんでもない......っ!」

燐は何か言ったのかと思ったけど、声が小さすぎて聞き取れなった。

「とりあえず、アークに着くまで寝てていいよ」

「......ん......」

燐は声を漏らすと、俺の膝の上に頭を乗せてきた。

しばらくすると燐の寝息が聞こえてきた。

「......ん.....すぅ......」

なんというかこういう光景はものすごく可愛く感じる。

『お客さん、仲が良いんですね』

すると運転手は小さな声でそんなことを言ってきた。

「あ、まあ......そうですね」

『そっか、私も一応、妹はいるんですよ。でも、お客さんのような仲じゃないんですよね』

と、運転手は笑いながらそう言う。

「仲が良くない?」

俺はそう聞き返すと、運転手は少し笑いながら続ける。

『そうなんですよ。なんというか、つまんないことで喧嘩とかすることが多くて......そんなことをしている内に、もうすっかり妹には嫌われちゃいましたけど』

運転手は最後の部分だけ、少し悲しそうに言ってきた。

「それは......お気の毒ですね......」

『......だから、お客さんのような人を見ると、まだ喧嘩していなかった妹との記憶が出てくるんですよ』

「じゃあ、仲が良かった時期っていうのはあったんですね」

『そう、ですね......』

そしてそこで一回話が終わった。

「妹さんとまた仲良くしたいって思ったりしてます?」

数分後、俺はある問いかけを運転手にしてみた。

『できることなら、仲良くなりたいですね。これでも、妹の事はけっこう可愛がってあげてたくらいなので......』

やっぱり妹さんとは仲良くなりたいようだ。

俺は一度、燐に視線を移す。

そこには可愛い顔で寝ている燐の寝顔があった。

俺はなにか出来ることは無いかと以前本屋らしきところで買った、魔法大百科みたいな本をバックから取り出した。

「えーと......仲良くなるには......これ、かな?」

俺は小さなライトでその本を照らしながらページをめくっていく。

すると、ある魔法が目に留まった。

ウィッチゾーン。

この魔法は、どんなに嫌われても必ずと言っていいほど仲良くなれる魔法......というか、薬と言うのか。

どういう仕組みなのかは知らないが......そういう事だろう。

俺はそのことを運転手に伝える。

「――っていう魔法というか薬というか、そんなのがあるらしいんですよ」

『必ず!?ほ、本当ですか!?』

と、運転手は少し声を大きくして言った。

「あ、はい......あの、一応あることはあるらしいんですけど......」

『じゃあ、休日にその魔法を探してきます!あ、ありがとうございます!』

「あ、いや、そんな大したこと......」

と言っている内に、アークに着いた。

「じゃあ、仲直りしてくださいね」

『は、はい!あ、あなたこそ妹さんを大事に!』

そして運転手は去って行った。

「ふぅ......久しぶりに人助けをしたけど、やっぱり疲れるもんなんだな......」

こんなことはあまり言わない方がいいかもしれない。

「はぁぁ......燐どうするかな......」

一応燐はお姫様抱っこの状態だ。

「......まあいいや」

俺はあまり考えずに家へと帰っていった。








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