第38話 奴隷だから言ったことはなんでもする

ソラの家の中に入ると、よくあるような普通の家だった。

......悪い言い方かもしれないけど......。

というか、森にある家ってどうなの?って最初思ったが、意外に普通なんだな......。

なんか、ツリーハウスみたいな感じを想像していたから......。

「ソラの家ってこうなってるんだな......」

俺は、家の内装を見ながら言う。

「あ、あはは......そ、そんなに物とかはないんですけど......」

ソラは、乾いた笑いをしながら言う。

「いいんじゃないの、そういうのって。逆にゴチャゴチャしているっていうはあんまり好きじゃないかな......だから、ソラみたいな家っていいなぁって思って」

「あ、ありがとうございます......でいいんですか?」

「え?あ、まあ、うん......」

ソラは、多分褒められたことがあんまりないのだろう。

俺もなんだけど......。

「と、とりあえず......こっちに来てください」

俺と燐は、ソラに連れられると、広いリビングルームに連れられた。

「お茶出しますね」

「あ、お気遣いどうも......」

俺と燐は、リビングにある椅子というかソファーというか、そこに座った。

「ソラって、燐からして見るとどうなの?」

「えっ?あ、うーん......私からして見てもかわいいし、なにより気が利くってことかな。あと......誰に対しても優しいとかかな」

「なるほど......」

ちなみに、俺のタイプとしては優しい人なので、ソラもタイプ......だと思う。

「はい、ちょっと遅くなっちゃないましたけど......」

「全然大丈夫ー」

と、そこへ、お茶を入れたコップを持ってソラが来た。

「あの、お口に会うか分かりませんけど.....」

「......いや、普通に美味しい」

ソラからもらったお茶を一口飲むと、普通に美味しかった。

「そう言えば......ソラってここにずっと住んでるの?」

「あ、はい、そうですね......大体、5年ぐらい前から」

「へぇ......その前ってどこに?」

「その前は......たしか、今はもう無いんですけど、昔、アリンっていう場所というか街みたいなところに住んでいて、それで、奴隷として教会にいる身分が高い人に着くことになって......今思うと、なぜ私がその奴隷としてやったんだろうと思います。それに......なぜ奴隷になったのかが分からないままです」

ソラは、自分のお茶をすすりながら言う。

「なるほど......結構大変だったんだな」

「まあ、そうでしたね。あははっ、今思えば笑いが出てきますけど......でも、当時は結構ひどかったんですけど......」

「あー......で、その生活を抜け出して、この森に?」

「言っちゃえばそう言う感じですね。とはいえ、詳しく言うと――」

そして、ソラの昔の事の話が始まった。


「――まあ、そういう事です」

「......うん、分かった」

というか、その話を聞いたからってどうという事は無いのだが。

まあでも、そういう話を聞くことで、昔何があったのかを知ることが出来る。

「なんか、こんな話させてごめんな......」

「あ、いえ、その、私も前にいた所とかを思い出せましたし......その、ありがとうございますっ」

笑顔で言うソラ。

その表情は、なんとも可愛いものだった。

「ふーん......前にも話を聞いたこともあったけど、そんなときがあったんだねー」

と、今まで黙ってお茶を飲んでいた燐が言い出した。

「そうですね......結構いろいろあったので......」

ソラは、ちよっと声のトーンを落として言う。

「まあ、なんだ......その......」

またもや、どう言ったらいいか分からなくなってしまった。

「あ、そうだ、ソラもアークに来たらいいじゃん」

と、燐がそんな提案をソラにした。

ソラは、その提案に少し首をかしげていた。

「私が......ですか?いいんですか?」

「うん、いいよー」

「いや、あの......べ、別に、アークに用と言うものは無いんですけど......それとは違うのかな......?」

「まーいいから、とりあえず来てみなって!」

「あ、じ、じゃあ、燐様が言うのなら......」

と言う事で、ソラがアークに来ることになったらしい。

「ん?というか、ソラってどこ連れて行くの?」

「え?あ、私の家?」

「......」

なんとなーく予想はしていた。

基本的に誰かがアークに来るときは、燐の家なのだ。

別に嫌とか悪いという訳ではなく、そういうのが多いよねっていう話。

燐の家に来る人、まあイリアとかメイとか......なぜかその人たちは、俺を目当てにやってくる。

「ダメかな?」

「あ、いや、そんな事無いって......ただ......」

「ただ?」

「えーと......あ、いや、やっぱりなんでもない」

結局、言いたいことを忘れる俺氏だった。


「はぁぁ......つっかれたー!」

そう言いながら、ベッドに身を投げ出す私。

あの後、お兄ちゃんと私、そしてソラと一緒にアークまで車で帰ってきた。

そして今、私の家に帰ってきて、私の部屋にはソラと私がいるという事。

「ねぇソラ?」

「あ、はい、なんでしょうか?」

「ソラって元々奴隷でしょ?」

「そうですけど......?」

「それならー......私のお兄ちゃんの奴隷になって貰おっかなーなんて!」

「あ、燐様のお兄様に、ですか?」

「そうだけど、やる?」

「えっと......は、はい、なんとなくお兄様は優しそうな人なので、やってもいいかなと......」

「おー、いいじゃん!」

私は、ソラに奴隷をしてほしいと頼むと、ソラはそれを受け入れてくれた。

「あ、あの......燐様?」

「えっ?なにー?」

「その......お仕置きとかってない、ですよね......?」

よほど、昔の生活が嫌で、怖かったのだろう。

というか、こんなかわいいこにそんな事させるかなー......。

「大丈夫、お兄ちゃんはそんな事しないから」

「そ、そうですか......」


「――奴隷!?」

「は、はい!お兄様の奴隷を、今日かぎりやってほしいと、燐様に言われましたので......!」

「......そりゃ、またなんで......俺の扱いが嫌になったとか?!」

「そんなことないってば......、ただ、ソラも元々奴隷としてやってきたから、奴隷生活なんてのもいいかなーって」

「あー......」

というか、どこからその発想が。

「と、とりあえず、お兄様、してほしい事ってありますか?」

「してほしいこと......?うーん、あんまり浮かばないな......」

「じゃあさ、膝枕とかいいんじゃない?」

「あー、いいかも――って!?どうしてそうなるんだ!?」

「いや、その、お兄ちゃんもそう言うのが好きなのかなーって」

「......」

たしかに、膝枕はされたいとは思っている。

でも、好きとかじゃないんだよな......。

あれは、たんなる憧れと言うもので......。

「膝枕......ですか?」

ソラも、燐にそんなこと言われて混乱している。

「あ、えっと、やっぱ別な――」

「や、やってみます!」

「――ええっ!?」

まさか、膝枕をしてもらえるとは......。

「や、やったことは無いけど......で、でも、お兄様が満足してもらえるように私、頑張ります!」

どうしてそうなるんだ......。

「あ、えっと......む、無理しなくていいよ?」

俺は一応ソラにそう言うが。

「い、いえ!言われたことはちゃんとやるのが奴隷ですから!た、たとえ、エッチなものでも......そ、それは、場合によりますが......」

ソラはそう言いながら、顔を赤くしている。

エッチなものでも......?

......いや、止めておこう。

「と、とにかく、膝枕ですよね?」

「あ、まあ、うん.....」

ソラは、リビングにあるソファーに腰かけると、自分の膝をポンポと叩いた。

多分、いいよという合図だろう。

「じ、じゃあ......」

俺は、そのソラの柔らかい太ももに頭をつける。

......これって、普通逆じゃないか?

あのほら、頭をつけるのって女の子の方だと俺は思うのだが......。

「ど、どうですか?」

「あ、うん、柔らかくていいよ」

「そ、そう言うのじゃなくて......!」

「えっ?」

「......もういいですよ」

ソラは、唸りながら若干諦めたように言う。

......なんか、俺ダメだったかな?

「なんか......ごめん」

「いえ、いいんですよ。その、足の感想はまあいいですけど......その、それ以外に何か聞きたかったです......」

あー......俺、そういうの苦手なのよね。

「いや、でも、いい太ももだよ?」

「ち、違いますって!......ま、まあ、その感想は嬉しいですけど......」

「ねぇ、お兄ちゃん?」

「うん?」

「あとで、私の膝枕も試してみてよ」

「あ、うん......分かったよ」

その後、俺はソラの膝枕を堪能することになった。







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