第45話 ラスボスと言われる何か 最終回......?
「そういえばさ、ここって宿とかってあるの~?」
「うーん......私、この街については知らないからなぁ......」
イリアと同行して結構な時間が経った。
その証拠に、もうすっかり空は暗闇に包まれていた。
結局どこに行けばいいのかが分からず、ずっと店の中にいたのだ。
それで、さすがに野宿するわけにはいかないので、なんとか宿を見つけようという事。
「どうする~?」
「うーん......」
魔法で何とかなるならとっくに宿にはついているはず。
もちろん魔法ではどうにもならない。
「とりあえず、周りを探索してみようよ」
「そうだね~」
店の中にいても意味がないので、どこか泊まれるところは無いのかと周りを探索していった。
「あ、あの......わ、私を呼んだのって、あなたでしたか?」
サキュバスを待ってから20分ほどが経ち、扉が開いたかと思えば、ものすごくかわいらしい女の子がいた。
「君が、このサキュバス?」
俺はテーブルの上に置いていたカタログをその子に見せる。
「あ、はい、そうです......ええと、私はロイって言います」
「ロイか......今日はよろしく」
「は、はい......!」
ロイと名乗るこの少女は、結構緊張しているのが見た目からハッキリと分かる。
「別に固くなくていいよ?とりあえず、こっちきなよ」
俺はロイに手招きをすると、ロイはすんなりと俺の所に来てくれた。
「それで......どうしたらいいの?」
「えっ?あ、ええと......お兄様がやりたいことを言ってもらえれば、なんでもしますけど......」
「うーん......?そうなの?実は、俺ってこういう店に来たことが無くてさ」
「ああ、そうだったんですね。だから、私の扱い方が妙だと思いました」
「......ん?君の扱い?」
ロイに関しては、何か特別な扱い方というのがあるのか?
「あははっ、まあ、一言で言えば......奴隷です」
「......奴隷?サキュバスが?」
「はい、もちろん人それぞれ好みとか、やることっていうのは違うので、私なんかは結構小さい子好きの男性の奴隷とかですね。あとは、お姉さん系とか、痴女とか......お客さんはこういうのが好きなんだなっていうのは、大体分かります」
「へぇぇ......別に、俺はロイを奴隷とかにはしないけど......」
「お兄様は、見た目からして優しそうなので......」
ロイは一度、ふぅっと小さく息を吐き出すとこういった。
「私の事を選んでくれてありがとうございます。実は、ここ最近私の出番が無かったので、お兄様が私を選んでくれなかったから......処分されるところでした」
「ああ、別に――って、処分ってなに?」
「処分っていうのは――というよりまずは、昔のお話しからしましょうか」
俺はベッドに腰掛けてロイの話を聞いてみた。
「――まあ、いつの日か私は、お客さんから忘れられてたみたいなんです」
ロイはそこで話を切ると、一息ついた。
「なるほど......」
というか、なぜこの子は今まで忘れられてたのだろうか?
「なぜ私が忘れられたのかは分かりませんが......でも、一つこれじゃないかなって思うものがあるんです」
「小さい子が好きな人なんか、今ではもういませんから」
ロイは、一つ謎の発言した。
「......ほんとに?」
「うん、多分大丈夫だと思うけど......」
結局泊まれるところは見つからない。
じゃあどこで寝泊まりするか?
「なんで、人の家に入り込むかな......」
「だって、泊まれるところなんかないしさ......」
「......まあ、良いけど......」
人の家に入り込むなんて非常識すぎる。
でも、この子はそんな事を知らない。
「大体、この家の人に見つかったらどうするの?」
「うーん......それはその時だよ」
「...........」
イリアが言う事は私にはあまり分からない。
というより、今の状況を説明した方がいいか。
まあ、泊まれるところがないなら人の家に入り込むという、非常識な行動をイリアはとった。
私はイリアの後をついて行ったけど。
ここで一週間過ごせるなら、ここにいようという考えだろう。
屋根裏から侵入した私とイリア。
途中、この家の人に見つかりそうになったけど、でもなんとか2階にたどり着いた私たち。
本当にここで一週間も過ごせるのかという疑問はあるが......でも、泊まる所が無いのなら、最悪人の家に侵入しないといけないのかもしれない。
「とりあえず、これで一安心ってとこかな」
私はこの二階の部屋を漁りながらつぶやく。
「じゃあ、今から寝床探そうよ」
「そうだね」
私はイリアと一緒に、この家に空いてる部屋が無いかと探していった。
「あ、あった」
部屋探しから数分後。
そんなに時間はかからず、空いていた一部屋を見つけた。
2階には全部で4つほどの部屋があり、その内の3部屋にはすでにこの家に住む人たちがいた。
まあでも、運よく見つかりはせずに、空いていた1部屋を見つけたって訳。
「さてと......ひとまず、落ち着けそうかな」
「そうだね~」
その部屋に入ると、ちょっと埃っぽかったけどなんとか、ここ一週間ぐらいは過ごせると思った。
「ねぇメイちゃん、お腹空いた~」
「たしかにそうだね......うーん、どうしよっかな......」
あいにく、私はご飯を出せるような魔法は持っていない。
「じゃあ、テレポートでどっか行こうか」
「うんっ」
「じゃあ行くよ、テレポート!」
私とイリアは、ひとまずテレポートでご飯が食べれるところに向かった。
「――小さい子が好きな人はいない?どういう......」
ロイが謎発言をし、その言葉が俺にはよく分からなかった。
「そうです。それでいうと、お兄様は小さい子が好きなようですねっ」
ロイは少し笑いながら言う。
「あ、まあ......」
「......お兄様は、このことについては否定しないんですね。ふふっ......それなら好きになれそうです」
またしても、ロイは謎発言をする。
「お兄様は、この後の予定とかってあるんですか?」
「あ、そうだった、その、ここにいるボスを倒そうと思ってね......」
「ああ、ということは......ロンディースを倒してくれるという事ですか?」
「まあ、そうだけど――って、そのロンディースって誰?」
「あれ、もしかしてロンディースを知らないんですか?......ということは、外の人っていう訳ですか......」
「あ......」
マズい、バレたか......。
「ふふっ、大丈夫ですよ、別に誰かに言ったりはしませんから」
「あ、ありがと......」
「それで、ロンディースについてですよね。一言でいえば、ここのボスの名前です」
「へぇ......というか、ここの人たちはその名前を知ってるの?」
「はい、ここに居る人たち全員は知っていますよ。知っていないのは、ここ以外の地域の人たちだけですね」
サンティにいる人たちは、ここのボスの名前を知っているらしい。
ロンディースか......なんか強そう。
「ロンディースは、昔からいる王様で、基本的にはいらないと思った人はすぐに消すらしいです」
やっぱり......たしかに、そういう話はここに来るまでに聞いたことがある。
「それで、ここの人たちはそのロンディースの征服から逃れたいと思い、サンティール・ゴアーズから出て行こうとするんです。そうすると、ほとんどは兵士に捕まり、殺されるか独房の中にいれられます」
なにそれ怖い......。
「でも......そんな征服は、この一年で終わらせたいと人々は思っていたんです。そしたら、お兄様が現れた......お兄様、どうかロンディースを倒してください......!」
ロイは、俺に
......しかも、上目づかいで......。
「も、もちろん!」
そこまで言われた俺は、もちろん拒否するわけは無く、そのことについて了承した。
「それで......いつ倒すんですか?」
「ああそれなんだよ......時期的には、夏ぐらいには倒す予定なんだが......」
「夏ですか......あ、だったら私もついて行ってもいいですか?これでも、一応魔法は使えるんですよ」
「へぇそうなんだ、それはありがたい」
魔法が使える人たちがいるという事、そして魔法が使える人が増えることは非常に俺としてもありがたかった。
「じゃあ、今日はもう遅いので......さっそく寝ましょうか」
「そう、だな......」
俺は、この幼女のロイと一緒にベッドに入り、若干興奮気味だが、それでも俺は、サンティール・ゴアーズのボス、ロンディースを倒す事だけを頭に入れ眠りに入っていった。
(目が覚めたら、そこは夏、つまりロンディースを倒すことになる。この街の平和を取り戻すんだ......!)
心の中でそう思っていると、左手が柔らかい何かに包まれていった。
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