第11話 女神と結婚ね......

「えっと?......ふーん、モンスターによって効く魔法とかあるんだ......」

帰りの車にて。

まあ車と言ってもタクシーみたいな......っていうかタクシーなんだけど。

その車内で俺はある本を読んでいた。

「んっ......すぅ......」

で、隣には俺の肩に頭を乗っけて寝ている燐がいた。

「お客さん、着くところはアークでいいんだね?」

「あ、はい、アークでいいです」

俺は運転手にそう言うと、本を読んでいった。

この本は、帰る際に本屋みたいなところがあったので、ギルドで貰ったお金をこの本に使ったのだ。

燐がお金を出すと言ったけど、せっかくお金があるんだから俺が払うと言ったのだった。

「お客さんはなにか仕事してるのかい?」

本を読んでいると運転手に聞かれたので、俺は本を閉じて答えた。

「いや、仕事っていうか、今日モンスターを退治したばかりなんですよね」

「へぇそうか、それと隣にいるお嬢ちゃんは?」

「この子は......」

俺はそこで言葉を詰まらせた。

いや、女神と言いたかったのだが俺はある言葉を思い出した。

『あ、あの......誰にも言わないでよ?』

そう、異世界に初めて来て初めてのご飯を食べているとき、つまりイリアと出会った日。

その時に燐が言った言葉だった。(2話をご参照ください......byゆん)

......。

「......俺と同じモンスターを倒す仕事ですよ」

俺は運転手にそう言った。

「そうか......でも、モンスターを倒すっていうような感じではないんだけど......?」

俺はドキッとした。

「......まあ、人それぞれだからな。仕事って......」

運転手は疑問を持ちながらそう言うようだった。

「時間があれば、ここでちょっと話してもいいかい?」

その運転手はバックミラーで俺の方をチラッと見てそう言った。

「え?あ、まあ、良いですけど......」

俺はそう言うと、運転手は静かに話をしてくれた。


『......その昔、アークで優秀な女神がいた。その名はケールと言ったそうだ。そのケールは不思議な力を持つ女神だったとされ、貧しかったアークを都会の街にした。その後、色々な話や伝説を残したとされ、ケールの後を継ぐ女神はこの出来事は頭にあるだろう。伝説上で残っている話としては、この世界で一番のサンティール・ゴアーズのボス、もとい魔王を倒したとされている。その女神は言った「......これから、ボスを倒したものは女神と結婚できることにする」と。当然、女神と結婚するなんて話は今まで聞いたことも実際に結婚したことも無い。でも、ケールは違かった。「女神と結婚したければ、ボスを倒せ」と言い放ったそうだ。それからというもの、ボスを倒すべくいろんな人たちが頑張っていった。しかし、これまで誰もボスを倒したことが無かった。人々はこう思った「本当に魔王を倒せるのか?」と。それでも、人々はボスを倒すために日々頑張っていた。一部の人はこう思った「どうしてそこまで女神と結婚したいのか?」と。冷静になって考えてみればそう思うはず。でも、他の人たちは違かったのだ。ある考えからは「女神と結婚したらとんでもなく強い力が手に入る」とか「女神と結婚したら死なない」とか言う人もいた。......まあ、実際に結婚した事例は無いのだ』


運転手の話が終わると俺は燐を見てみた。

「ふひひっ......おにいひゃん......」

あどけない寝顔の燐がいた。

「......はい、アークについたよ。お金は1000イリーね」

「あ、はい」

俺はポケットから財布を出し1000イリーを支払うと、燐をお姫様抱っこの状態でタクシーから出た。

「まいどー」

そしてタクシーは走り去って行った。

「......女神と結婚ね」

俺はその後、アークの門をくぐり一度イリアの元に行った。

「いらっしゃーい......ってお兄さんどうしたの~?」

「え、ああ......モンスター狩りでアントスにちょっとな......」

「で、燐はどうしたの~?」

「普通に寝てるよ」

「それだったら......ここに燐を置いていいよ~」

「や、どうも......」

俺はイリアに案内されたソファーに寝ている燐を置くと、カウンターの椅子に座った。

「とりあえず......コーヒーを」

「は~い」

イリアは上機嫌でマグカップにコーヒーを注ぐと、俺の前に置いた。

「お金払わなくていいからね~」

「え?でも......」

俺はポケットから財布を出そうとするとイリアがそう言った。

「だってお兄さんだもん、払わなくていいって~」

「うん......?そ、そう言うなら......」

俺は財布をポケットにしまった。

俺だから......?

まあとりあえず俺はコーヒーを飲んだ。

「そういえば、ここっていつまでやってるの?」

「んー......気分かな。お客があんまり来ないときはすぐ閉めちゃうし、逆に多かったら朝までやることもあるしね」

気分か......。

正確な時間は決まっていないらしい。

「ちなみに今日は?」

「今日は、まあまあお客は来たからもう少しで閉めようかなって思ってたら、お兄さんが来たから」

「ふーん......」

「最近になって、私目当てで来る男性もいるんだ~」

するとイリアは嬉しそうに言う。

「たまには、お持ち帰りされちゃったり~......あとは、色々と」

意味深なことを言うイリア。

俺はその意味があまり分からなかった。

「まあでも~、お兄さんほどかっこよくていい人っていないけど......ね」

ちょっとイリアの言う事が分からなくなってきた。

疲れてるからかな......?

「そうだ、今度の日曜日私空いてるから一緒にどこか行こうよ~」

「え?あ、うん、いいけど......」

ていうかこの世界に曜日という概念があるんだな。

「もちろん燐もね」

「ふぁぁ......あれ、ここどこ?」

すると今まで寝ていた燐が起きた。

「んん......?」

目をこすりながらあたりを見渡す燐。

「あれっ、いつの間にイリアの店に?」

燐はここがどこだか分かったようだ。

「ちなみに......今何時?」

「今は6時だよ~」

「そうか......うん?」

俺は時間の事で疑問に思った。

外が暗いのに6時って......え、これって日本でいう朝の6時ってことか?

午後の6時......ではないよな。

うん、午前の6時だな......。

なるほど、ここの世界は日本とは時間が逆になっているらしい。

つまり......ブラジルという事だろうな。

日本が朝だったらブラジルは夜......それとはちょっと違うか?

どちらにせよ、昼夜逆転という事だろう。

「イリア、私にもコーヒーちょうだいー」

「はいはい~」

燐は俺の隣に座りながらそう言う。

しばらくすると、燐にもコーヒーが来た。

「燐にも一応言っておくけど、今度の日曜日に遊びに行っていいよね~?」

「え?あ、うん、いいけどー......変なことしないでよー?」

燐は上目遣いでイリアを見ながらそういう。

「分かってるって~、さすがにお兄さんを取ったりはしないから」

「それならいいんだけどねー」

「そんじゃあ、日曜日でいいんだな?」

「うんっ、わたしが来るまでに、済ませておきたいことがあるなら先に済ませちゃてね~。例えば、燐とエッチしたいっていう事とかね~」

相変わらずイリアは性が強い。

「あ、あはは......」

俺は苦笑いをすると、となりにいる燐は何かブツブツ言っていた。

とりあえずその後、コーヒーを堪能した俺と燐だった。



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