第10話 最終的な目的とは

「今日はこれぐらいにしとこうよー」

「......結構やったけど、ほんとにお金になるのか?」

このエリアにいる最後の精霊を倒してやった。

「ていうかここどこ......?」

精霊を倒すのに夢中になり過ぎて、気づいたら知らないところに来てしまっていた。

「とりあえずー......歩こうよ」

「そうだな......」

帰るには歩かなくてはいけないのでとりあえず歩き続けてみた。

「わー、川だー」

歩くこと数分、開けたところに来たと思ったら川があった。

「異世界にも川ってあるのか......」

異世界にも川があることが俺は嬉しかった。

嬉しいというかなんというか。

「うお、普通に冷たい」

川の水を触ってみると普通に冷たかった。

「あそこにいるのは......?」

向こう岸の岩に寄りかかっている緑髪の少女が目に留まった。

「あれはー......一見普通の女の子に見えるでしょ?」

「え?あ、まあ......」

よく見てみても普通の女の子だ。

だけど......なぜこんなところに?

「普通の女の子に見えるんだけど、あれはモンスターだよ」

「あの子が?」

その緑髪の少女は俺に笑顔を見せていた。

......ていうか普通に可愛い。

「そうだよー」

「でもなんであの子がモンスター?」

なぜ少女がモンスターなのか。

それぐらい凶暴なのか......?

「まあ色々と言われているけど、基本的には近寄ってきた男性を捕食するとかね」

捕食......?

たしかに言われてみればそうだ。

あんだけ可愛ければ、無意識に男性は近寄るだろう。

......特に性が強い人は。

まあ俺には燐が居るので......。

「中には怪我をした少女もいるらしくて、そっちの方が捕食されることが多いみたい。なぜかというと、怪我をしていて笑顔でこっちを見てくる。痛そうな雰囲気を出して大丈夫かというように近寄ったりすると食べられるんだってー」

燐が詳しく説明してくれた。

俺は少女に目を向けると、笑顔で俺を見ていた。

「あ、あれ......?体が勝手に......」

すると俺はなぜか体がその少女の方に行こうとしていた。

「......仕方ないなー、よいしょっと......あの子には悪いけどお兄ちゃんを取られたくないから」

すると燐はその少女の所に何かを持って歩いて行った。

「お兄ちゃんは待っててね」

そして燐はその子の元に行くと何かを話していた。

しばらくすると燐は戻ってきた。

俺は引っ張られるような感じはなくなっていた。

「それじゃいこっかお兄ちゃん」

「う、うん......」

俺は少女がいた場所を見てみると......すごいことになっていた。


燐は何を考えているのか分からない。

何をしようとするのかも分からない。

燐は多分......人を殺せるくらいの力はあるんだと思う。

俺もそうなるのかもな......。

先ほどの少女の件について。

一言で言えば......その場所は血だった。

あえて何が起きた、とは言わない。

細かく書けば分かるかもしれないが......まあそのことは察してくれ。

考えれば分かるはず。

「......ちゃん。お兄ちゃんってばー」

「え、えっ?」

「お兄ちゃんってばどうしたのー?」

「あ、いや、なんでもない......」

相変わらず燐はニコニコしていた。

その表情の裏には何があるのか......。

いや考えない方がよさそうだ。

どうせ俺もあんなことになるだろうに......。

「............」

俺はさっきの少女がいたところを振り返る。

「......っ」

俺はその少女の顔が頭に浮かんだ。

笑顔な少女が。

心が痛くなった。

燐に関して色々と怖い事があるな......。

サイコパス疑惑。

「ふひひっ......」

俺はちょっと燐から距離を取った。

後はヤンデレ疑惑。

それはちよっと違うか......?

俺は思った。このまま燐の近くにいていいのかと。

アークに帰ったらイリアに聞いてみるか......。

「......そういえば、燐について俺まだ知らないことがあるんだけど」

「え?急にどうしたのー?」

「いや、あの......燐について色々と知りたいと思って......」

「う、うーん?......いいけど......?」

「......とりあえずこれで......」

俺はなんとか燐の過去について聞き出せそうだ。

その後、森から出ると同時に燐の過去について聞き出した。

細かい所はイリアに聞こうかな......。


「あの......私はちょっと色々とありすぎなんだよね......こういうのは出来るだけ言いたくなかったんだけど、でもお兄ちゃんだから......その......」

燐の過去を聞いた俺。

普通にいい過去もあればよくない過去もあった。

というかそれが普通なんだけど、燐は違かった。

簡単に言う。燐はヤンデレだった。

「う、あうぅぅ......」

今いるのはギルド内のテーブルにて。

先ほどクエストの報告をして報酬と言う事でお金を手に入れた。

そして燐から過去を聞くためにテーブルの所に来たという訳。

「なるほど......」

俺は燐と一緒にいた方がいいのかと考えた。

「ご、ごめんなさい......そ、その、どうしたらお兄ちゃんの好みの女の子になれるかな......?」

答えはすぐに出てきた。一緒にいた方かいいと。

なぜかというと色々あるが......初めて会ったのは燐だったし、俺のそばにいてくれるのももちろん燐だった。

それに頼りになるし、分からない俺にとって色々と教えてくれる。

そんな人と近くに居なかくなったら間違いなく振り出しに戻ってしまう。

燐がいるからこうして生きている。

燐がいるから魔法が使えるし、モンスターが駆れる。

燐がいるからこうして楽しく過ごしている。

燐がいるから色々と出来るんだと。

例え嫌な部分があっても、それを認めればいいと思う。

「......」

燐を見てみると俯いて俺の返答を待っているようだった。

「......怒ってたりするかな......?」

「なぜこれだけで怒る?そんな事無いよ。......好きな女の子ねー......」

好きな女の子、つまり好きなタイプと言う事だろう。

俺はこの空気を直すべく明るく言った。

「普通に燐は燐でいいんだよ。......強いて言えば......サキュバス?」

「さきゅばす......?」

燐は知らないようだった。

サキュバス、簡単に言えば......いや、やめとこう。

「そう、俺は妹の燐よりも好きなものがある。それがサキュバスだよ」

「さきゅばすってなにー?」

「ええと......家に帰ったら教えるよ......うん」

「家に帰ったら?なんで今じゃダメなの?」

「ちょっと......ね」

「ふーん......それじゃあ家に帰ったらねー」

燐も明るくなっていた。

いつもの燐だった。

「それじゃ帰ろうよー」

「あ、うん......あ、それと、俺のっていうか目的って何?」

席を立とうとする燐に俺がそれを阻止するべく言う。

「目的?......あー、前にも言ったけどサンティール・ゴアーズっていう場所に行ってボスを倒すのが最終的な目的だね」

「それを達成したら何があるの?」

「ふひひっ......それはねー」

すると燐は立ち上がって、俺のそばに来るとゆっくりと言った。


「女神と結婚できる事になるんだー」


女神と結婚、つまり燐と結婚ということになる。

「ふひひっ!私はいつでも待ってるからねー。ボスを倒したらキスしてあーげるっ」

すると燐は俺のおでこに軽くキスをした。

俺は呆然とした。

「そういう事だから頑張ってねっ!ほら、早く帰ろっ?」

「あ、はい......」

俺はなんとか言葉を見つけ出して言った。

いつものように燐は俺の腕に抱き着いてきた。

外はもう暗くなっていた。

俺は燐に抱き着かれるまま家へと帰るのだった。


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