第9話 今回はモンスター討伐

三日目の朝。

俺は、誰からも起こされることなく起きれた。

昨日は......まあ燐が色々とあったんだよな......。

「ふぁぁ......」

「あ、お兄ちゃん......」

大きな欠伸と共に目を開けると、俺の隣に座っている燐がいた。

「お、おはよ......」

燐はおずおずと俺に話しかけてくる。

いつもの燐はどこへ......?

「......大丈夫か?」

「えっ?あ、うん......」

俺は頭を掻きながら布団から出る。

「あれ、そういえばイリアは......」

「私ならここだよ~」

するとイリアは俺が寝ていた布団から這い出てくる。

「なぜに......」

「お兄さんと一緒に寝たかったんだもん」

なんか燐が言うセリフだな。

「んっしょっと......それじゃあ私お店の方があるから、またね~」

「あ、うん......?」

イリアはなぜかパジャマ姿のまま玄関の扉を開けて出て行ってしまった。


「あ、あの、お兄ちゃん......?」

イリアが出て行ってから数分後。

燐はなぜかおずおずと俺に言ってくる。

「どうした?」

「その、昨日の事で......ご、ごめんね......?」

燐は昨日のことで謝りたかったらしい。

「あー、大丈夫だって。それに......なんというか、ああいう燐もいいなーって思ったし......?」

「......!」

すると燐の頬が徐々に赤く染まっていった。

「と、とりあえず、起きようよ、ね?」

「あ、うん......」

燐はその恥ずかしさをごまかすように、俺の背中を押した。

「きょ、今日はティール以外の所と、モンスター討伐やってもらうけどいい?」

モンスター討伐か......。

昨日ぐらいに、魔法を覚えたばかりなのでその魔法を使いたい。

「うんいいよ」

死なないように気を付けないと。

そして俺はいつものようにツヒールを飲むことにした。


「へぇ、これが......」

「それが、モンスターを倒したりする......いわゆるギルド的な感じかなー?」

アークから車で一時間ほどの所にある、アントスという田舎町というか。

アークやティールとは違って、家の数もそこまで多いってわけじゃない。

それに、ここはモンスターが一番......なのかは分からないが、よく駆れる場所らしい。

たしかにここの街から離れるとほんとに森とか川とか、よく言えば自然豊かな場所だという事。

で、今俺が居る所はクエストというのか、そういう所に来ている。

簡単に言えば、モンスターとかの依頼が受けられる所。

モンスター以外にも、普通に飲み屋としてもやっているらしい。

周りを見渡すと、酒で酔っ払った人もいる。

ここではそれが普通なのだろう。

大半が男性が占めていて、女性というのはあんまりいなかった。

なので、燐がここにいる以上その男性達からものすごい視線が痛いほど俺に来る。

受付の人は女性だった。

......なのになぜ燐?

まあどちらにせよ、男性はそういうものなんだという事。

「......ふひひっ」

すると燐はその周りからの視線を受けると、とっさに俺の腕に抱き着いてきた。

「な、まさか......!?」

「嘘だ......あんな可愛い子がよりにもよってあんな......」

その行動が間違いだったようだ。

周りにいる男性達は、俺の批判をしていた。

燐の行動で、周りからの目はものすごく痛かった。


「......なんであんなことを?」

俺は周りからの目を避けるべく、端っこのテーブルの椅子に座った。

「えっと......妬かれたかったからかな」

なるほど、多分付き合ってますよっていうような感じを出したかったんたな。

「そうか......」

俺はなぜか落ち込んだように言う。

すると燐は俺の隣にやってきて、俺の耳元で言ってきた。

「だいじょーぶ......私は、お兄ちゃんだけの物だからね?」

なんか卑猥に聞こえるんだが......。

「にひひっ......私はどこにもいかないから。ずっとお兄ちゃんのそばにいてあげるー」

「や、それは、どうも......?」

それはそれで俺は安心した。

いやなぜ安心するんだ......。

「どうしてそこまで?」

「えっ?そりゃあね......じゃあお兄ちゃんでも分かるように言ってあげるー」

すると燐は俺の耳から口を離し、俺の前に座ると一呼吸置いて言い出した。


「お兄ちゃんの事が好きだからだよ」


俺は目をぱちくりとした。

すると燐は恥ずかしかったのか、すぐに下を向いてしまった。

「う、うぅぅ......わ、分かったでしょ?」

「う、うん......」

「そ、そういう事だから......ね」

燐は体をモジモジとしながらそう言う。

俺としてはその言葉は嬉しかった。


「それじゃあ、まず簡単なものからいこっか」

あの後から数分後。

今していることは、どのクエストを受けようかとしている所。

普通に掲示板に張り紙がいっぱい貼ってあるので、どのクエストを受けようかが悩む。

燐が言った通りまずは簡単なものから行くべきなのだろう。

「それじゃあ行ってらっしゃいませ」

受付のお姉さんが笑顔でそう言ってくれた。

俺はクエストを受ける店から出て、どこに行くのかを燐に尋ねた。

「えっとー......このまま真っ直ぐ行くと森の入口があるからそこに入って、精霊を倒せばいいんだってー」

俺が受けたクエストは一番難易度が低い精霊を倒す事。

「俺が持ってる魔法で足りるか......?」

精霊と言えども、もしかしたら魔法が足りなくなるとかがあるかもしれない。

「大丈夫、その時は私が助けてあげるから。あと......死なないでよ?」

「分かってるって」

「死んだとしても生き返らせることは出来るけど、もしも死体ごと無くなったら生き返らせれないからね?」

急に燐が怖い事言い出した。

「わ、分かった......」

俺は燐の忠告にしっかりと頷いた。

「それじゃ行こうよ」

「うん」

俺と燐はその森の入口まで歩いて行った。


歩くこと十分くらいして、ようやく森の入口というか看板が見えてきた。

その看板を見て見ると、文字が書いてあった。

「うん......?」

「この先精霊がいる......って書いてあるよ」

「あ、うん......」

森に入っていくと、燐が言った通りそこは精霊が普通にいた。

精霊とは言うものの、全部が小さいものだと俺は思っていた。

「攻撃しなければ何もしてこないけどねー」

たしかに精霊の前を通ったとしても何もしてこなかった。

「それじゃ倒していこー」

すると燐は杖らしきものをブンブン振り回して精霊を倒していった。

「精霊に攻撃すると、こんな風に一斉に攻撃してくるんだー」

燐は笑いながらそう言う。

「大丈夫なの?」

「うん、私ぐらいのレベルになるとこれくらいの攻撃はダメージとして入らないからね」

「へぇぇ......」

俺はしばらくの間その光景を眺めていた。

「それじゃあ、お兄ちゃんにやってもらうよ」

「う、うん」

俺は若干緊張していた。

本当に魔法が使えるのかと。

「......『ハイン!』」

俺は右手を前に出し、そう叫ぶと精霊たちが一気に飛んで行った。

「おー、良いねー」

燐はぱちぱちと拍手をしながら言う。

「ハインはそこまで威力は無いけど、今みたいに多くの敵を飛ばすっていう使い方があるんだよ」

「そうなんだ、てか俺でも使えたんだ......」

俺が気になっていた使えるのかと言う疑問は消えていった。

「だから、お兄ちゃんはもっと魔法を覚えよーね」

「あ、はい......でも、なぜ?」

なぜ俺が多くの魔法を覚えなくいけない?

「それはねー、最終的には多くのっていうかほとんどの魔法を覚えてもらって、魔王というかボスを倒してほしいんだよー」

「ボス?」

「うん、前に言ったけどサンティール・ゴアーズっていう所があるって言ったでしょ?そこに行ってボスを倒してもらいたいんだー」

サンティール・ゴアーズ。

そこには一部の人しか入れないという、最強の街。

そこに居る人たちは、レベルが100以上という驚異的な人たちしかいない。

最終的にはそこに行くのが目的みたいだ。

「そこに行くとき燐も行くの?」

「もちろんだよー、だってもしもお兄ちゃんが死んだときのためにね」

「あー......なるほど」

「そういうことだから頑張ってね?」

「はい」

俺はそう言うと、その後残りの精霊たちを倒していった。


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