第43話 ラスボスと言われる何か#2

「ふぅ......危うく、見つかる所だった......」

「まあ、逃げれたんだし良いんじゃない?」

「そ、そうだな......」

テレポートをして、兵士から逃げれたことに安心している俺と燐。

まあでも、ここで安心していてもまた来るかもしれない。

「そういえば、メイたちはどうしてるんだろうか?」

俺は、行くあてもなく、ただ適当に歩きながら隣にいる燐に訊いてみた。

「まあ、適当に遊んだりしてるんじゃないかな?......メイがいるから、兵士とかに見つかったとしても大丈夫だと思うし」

「まあそうだよな。なんたって、メイってほとんどの魔法使えるもんな」

「そう、だね......」

燐はそれを聞いてか、なぜか悲しそうな目をしていた。


「イリアってば――って、なにしてるの?」

「ん~?ああ、猫さん~」

「......見れば分かるけどさ......でも、ここで遊んでたらいつ兵士が来るか分からないし......」

「だいじょうぶっだってば~、なんたってメイちゃんって、ほとんどの魔法を使えるんでしょ~?」

「まあ、そうだけど......」

イリアと同行して、早くも2時間が経った。

イリアは、道端にいた茶色の猫を見て楽しそうにしている。

「......まったく」

私は、イリアにちょっと呆れたけど、でも私も猫は嫌いじゃない。

だから、私もイリアの隣に行き猫を触ったりする。

猫の毛は、ものすごくさらさらしていて気持ちがいい。

しかし、その茶色の毛は抜けしまう事が多々。

「ふんふ~ん♪」

イリアは、猫を触りながら鼻歌なんか歌っている。

その余裕さはどこから出てくるのか......。

......同性だけど、横からイリアを見ても、ものすごくかわいいことがわかる。

銀髪で、その顔と言うのは幼いような顔立ち。

だから......この子は、モテるのだろう。

いつも優しい表情、時には泣いたり、悲しそうな表情はするが......怒るような表情は、一切私たちには見せない。

心では怒っているかもしれないが、怒るという感情は、決して表情には出さない。

街の人から聞いても、『イリアちゃんが怒る?いやいや、そんなの見たこともないし聞いたこともないよ。むしろ、ずっと笑顔なままだよ?』と。

やはり、優しい人がモテるという、そういう世界なのだろう。

......考えてみればそうか。怒る人には、人は近づかない。

むしろ、優しい子の方に近づいて行くだろう。

優しくて、言われたことは何でもする......そういう女の子が、一番強いんだろうと私は思う。

「んふふ~......あれ、どうしたのメイちゃん?」

「――えっ?」

「なんか、ずっとぼーっとしてたよ?」

どうやら、私はイリアの横顔に目を奪われていたらしい。

「ああ......その、ちょっと考え事......」

「そっか~、実は私も猫を触っているときに考え事してたの~」

「どんな?」

「......猫がこの世界からいなくなったらどうなるんだろうってね」

「............え?」

「猫が好きな人から、猫が消えていったら、その人たちは絶対悲しむだろうなって」

イリアが考えることは、大体は面白い話なのだが......この話は、絶対違う。むしろ、深い方の話だ。

「まあでも......私の家では、猫は飼えないし、こういう風に、街中で猫と出会うと、新しい人と出会う感じがあって......って、多分言ってることがメイちゃんには分からないかな」

イリアは、猫を触るのを止め立ち上がるとそう言う。

「......ううん、全然、むしろ、そういう考えがあるっていうのは良いと思うよ」

「ほんとっ?」

嬉しそうに顔をほころばせて言うイリア。

「うん、逆に、そういう考えを持っていなくてもいいと思うけど......」

「うーん......?まあ、とりあえず、行こっかメイちゃん」

「あ、うん......」

イリアは徐に《おもむろ》私の右手を掴むと、その場から歩き出した。


「なあ、今日はどこで寝たらいいんだ?」

俺と燐は、特に行くところも無く適当に周辺をブラブラと歩いてた。

「うーん......そもそも、ここの街中とかって私知らないからさ......どこに宿とかがあるかが分からないんだよね......」

結局、燐もこのサンティの街中を知らないらしい。

普通に考えればそうか......?だって、ここの街って、他の国の人たちって入れないからさ、あと女神も。

「まあでも......一個当てがあるんだよねーそれが!」

燐はそう言うと、勢いよく俺の腕に抱き着いてきた。

それほどでもない胸が......って、何回も経験してるだろ。

「......で?その当てっていうのは?」

「ふひひっ!着いたら分かるからさ!」

「お、おう......」

燐は抱き着く力を一層強くした。




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