第30話 女神と結婚するのかしないのか、難しい質問だ

イリアの家を後にした俺とイリア。

イリアに関しては、俺の右腕に抱き着いているという状況。

なんというか、抱き着かれるのが心地よくなってきたというか......まあ、燐ので散々経験しているからさ......。

というか、燐がいないっていうのもなんか新鮮である。

いつもは、燐が隣にいるので、燐がいないと少し不安が出てきた。

「ふぅ......」

俺はイリアと一緒に歩きながらため息をつく。

「どうしたの~?」

俺の様子を見ていたイリアが一言。

「あ、いや、大丈夫だよ」

「そうなの~?」

するとイリアは、抱き着く力を少し強めた。


「そういえばさ、イリアはどこで燐と出会ったの?」

「んっ?あ、えーと......最初のころは~、燐もまだ女神っていう職業にはついていなかったんだ~」

今いるのは、公園。

以前にも、何回かは来たことがあるアークにある公園。

その公園のベンチに座って、イリアと話をしていた。

「だから~、あたしが働いている店に、たまたま燐が来たから~、それでお友達になったの~」

「へぇぇ、そんな経緯が......なるほど......それって、いつぐらいの話?」

「うーんとね......2年ぐらい前かな?」

「へぇ、2年前......って、イリアはいつから働いてるの?」

俺の疑問はそこだった。

「えっと、5年ぐらい前かな~」

「ご、5年前!?」

俺はその数字にびっくりした。

「ええと......たしか、燐が今14で?イリアが13?」

「うんっ、そうだよ~、もしかして、お兄さんって小さい子好き?」

「え?な、なぜ......?」

「ん~、一応聞いてみただけ~」

話を戻すけど、イリアが今13ってことは......8才の時から店で働いていたって訳か......。

異世界と言うのは恐るべし。

というか、何歳から働けるんだ......その基準と言うのが分からん。

「あっ、ちなみに~、アークの規則と言うか法律では、小さい子に手を出しても何にもならないからね~、だから、気が向いたらあたしとか燐に手を出すといいよ~」

「......え......っ」

イリアは、サラッととんでもない発言をした。

小さい子に手を出しても何にもならない?

......あ、あー......そういう......。

こういうのは、ロリコンが嬉しがるんじゃないかな。

何とは言わないけど......さすがに言ったら、ね......。

「まあ~、とりあえず行こうよ~」

「あ、うん」

イリアは、ベンチから立ち上がると俺に手を差し伸べてくれた。

俺はその手を取ると、ベンチから立ち上がりこの辺りを散歩した。


「――で、その後ご飯行ったり、動物園......じゃなくて、モンスター園?みたいな所行ったり......、公園の遊具で遊んだりと、なんだかんだで結構楽しかったよ」

「そっかー、それは良かったねー」

燐は俺の話を頷いて聞いてくれた。

あの後、俺はイリアを家まで送り、そのまま帰ろうとした。

その時、イリアに「泊まってってくれないの~?」と言われたけど、俺は「いや、燐がいるからさ。その、また近いうち泊まりに来るよ」と笑いながら言った。

イリアはそのことを聞いて嬉しそうに「うんっ、待ってるね~!」と言って、扉を閉めた。

そして帰ってきて、燐の部屋でイリアと何をしてきたかを今言ったところって訳。

「ねぇお兄ちゃん?お兄ちゃんの目的覚えてる?」

「えっ?あ、うん......サンティール・ゴアーズのボスを倒す事」

「うん、なぜか分かる?」

「いいや......」

「私も分かんないんだー」

「なんでよ!?」

俺は盛大にそこでずっこけた。

「......というか、俺は燐なら知ってると思ってたんだけど......」

「いや、私も正直な所知らないんだよねー。まあでも?そのボスを倒せば、女神と結婚出来るってことだね」

「あー......」

俺は燐とは結婚してもしなくてもいい。

したらしたで、夫婦という生活が待ってるし、しないってなったら、いつもの恋人のような生活になる。

どっちがいいかって言われると、迷うんだけど......結局の所、燐が「結婚したい」っていうのなら、俺はそれに従うだけであって。

でも燐が「お兄ちゃんが決めてよ」と言われると、結構迷ってしまう。

そうだなー......今決めようとしても決まらないから、その日に決めればいいか。

時間はまだまだある......と思っている。

「それじゃあ、今日も一緒に寝よーね、お兄ちゃんっ」

「う、うん......」

そして俺は燐のベッドで燐と一緒に寝ることになった。


「......燐?」

「んんっ......なーに?」

「あ、ごめん、寝てた?」

「ん......ちょっと......」

燐と一緒に寝て、30分ぐらいが経った。

俺は一向に寝れなかった。

いや、あの.....すげー甘いいい匂いがする、女の子のベッドで寝るっていうのもあるし、そもそも燐と一緒に寝るっていうのもあるんだけど......それ以上に、このあとの生活がどうなるかを頭の中で想像していた。

夫婦だったらこういう生活とか......恋人だったらこういう生活とかっていう風に。

なので俺は、ここは燐に聞いてみようと思った。

「あのさ......燐だったら、俺と結婚したい?」

「急にどうしたのー?」

「いや、その......ボスを倒したとしてさ、その後どんな生活が待ってるのかなって想像しててさ......その、女神と結婚したら夫婦というような生活になるし......逆に、結婚しなかったら、今みたいな恋人のような生活になるから、じゃあ、結局の所、俺はどっちがいいんだろうって思ってて......」

「そうだなー......私は、どっちでもいいと思ってるよ。今みたいな、恋人の生活もいいと思ってるし、夫婦みたいな生活もいいと思ってるし......どっちかっていうと......決められないけど......」

燐はそこまで言って黙ってしまった。

「イリアの事を考えれば......結婚はしない方がいいかもしれない」

数分後、俺は燐はもう寝てしまったのかと思っていたのだが言葉を発した。

「イリアの事?」

「うん、一応、イリアもお兄ちゃんの事好きみたいだから」

「あ、あー、なるほど......」

「だから、そのことを考えるとなると、結婚は......しない方が、いいと思う」

燐は、どこか味気のないように最後まで言った。

「うん、分かった」

俺はそう言うと、再び目を閉じた。









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