恐ろしきDNA?
「ねえ、何食べたい」
「そうめん」
「また~」
最近、夫とこのやり取りを繰り返している。
暑いから仕方がないかと素麺を茹で、時に仏壇にお供えする。
亡き舅は、素麵が好きで見舞いに訪れたある時「そうめんが食べたい」と言った。看護師さんに確認し病院近くのスーパーで買って届けた。すると食べ切った後で言った。
「あのな、旨あないな。」
「ごめん、スーパーのだからね。」スーパーに失礼でした。ごめんなさい。
夫の実家がある場所は我が家から車で片道3~4時間を要する。だから舅の入院先も同じく遠い。月に一回夫と休みを合わせて、見舞いに行くのがやっとだった。
だから、急に言われてもスーパーで買ってくるしかない。
「今度来るとき家で準備してくるわ」
「いやあ、台所にあるんじゃ。〇年物の素麺が。今から茹でてきてくれ~」
「無理、無理。今食べたとこなのに。今日はもう看護師さんに聞いても無理だと思うよ」と、必死で断った。そう必死で。なぜなら夫の実家は掃除が苦手で姑が存命時でさえ帰省すると、まず台所の掃除から始めた。そうしないと安全に料理ができなかった。もちろん、大っ嫌いなGもひょんなところからよくお出ましになり、幾度叫び声をあげたことか。そんな実家に誰も住まなくなってどのくらいの月日が経っていただろうか。私にとってはお化け屋敷よりも断然恐怖だった。
話が逸れてしまったが、ここ数年素麺が好物になった夫。その夫が座る居間の周囲は多くの物が広げる様に置かれる。片付けても直ぐに広がっていく。まるで鳥の巣状態。時計やスマホ、万歩計は可愛い。今日なんかは、ラグの上におかきやナッツの大袋たち、何かの説明書なども投げ出されている。
舅が元気なころの実家の居間に近づきつつある。
「御飯が食べれんのよ」と、言いつつ駄菓子屋のように置かれた菓子を食べていた舅を、当時は笑って見ていた夫。今は、全く同じ。
ちなみにお顔もそっくりそのまま。
結婚前に舅に初めてお会いした時の第一印象は、眉がないことだったのだけどね。
本当にそっくりだわ。
DNAって恐ろしいわ。
「好き勝手、言っとるなあ」と、舅の声が聞こえそう。
ごめんなさい。
「えっ、私も亡き母にそっくりだって。どうしよう~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます