ダイエットが近道って。

 私の夫は一日に幾度も体重計に乗る。

 「睡眠時の無呼吸のためにも瘦せんとな」と、大きな腹を叩きながら笑顔で夫が言った。

 私は、「確かにね」と、一応相槌を打った。


 診断はしてもらっていないのだけど、多分、夫は睡眠時無呼吸症候群があると思う。定期受診時に相談するよう促してみるけど、本人にその気はない様子。まあ、日中の眠気が強くなったら、危険だから相談するだろう。 他人に迷惑を掛けたらいけないので、私もそれとなく見守っている。 


 でもね、それと別にいろいろと突っ込みたいことがある。

 だって、体重計に乗るたびに服を脱ぐ必要はないし、トイレの前後で量る必要もない。それもこの寒い季節にね。

 更には、狭い家の中をぐるぐると運動のために歩きまわる。歩きながら、時々「ポッポー」と言うものだから、さすがの私も目が点になる。

 歩く姿を横目に、「また掃除しなくっちゃ」と、心の奥底で溜息をもらす。

 だって、夫婦二人の生活なのに結構埃が溜まるんだもの。

 面倒だわ。

 まあ、掃除機にたまったごみを捨てるときに、戦利品みたいな感覚で「二日分でこんなにか」と、得意げになる私も変なのだけど。

 

 そんな変な者同士の夫婦には、毎日続く小競り合いがある。

 体重がらみでね。

 夫は、日に何度も体重を量るが、私は入浴後だけ量ることにしている。

 私が体重計に乗ると、必ず夫が値を見ようと覗き込む。別に見られてもかまわない。ただ、邪魔なだけ。夫の頭が邪魔をして見えにくいんだもの。


 「わあ~。〇〇歳かあ~」と、夫が嬉しそうに私の体年齢を言う。

 悔しいことに夫は私より6歳年上なのだけど、体重計に表示される体年齢は2~3歳しか差が無い。

 日々、得意顔で私の体年齢をチェックしてくる夫が鬱陶しい。

 でもね、私のBMIはぎりぎり正常内。夫は、立派に肥満の値。

 筋肉量や推定骨量の関係で、夫の体年齢は若く出ているような。

 でも、私の筋肉量や骨量も少ないわけではないので、増やすことは難しい気がする。

 だから、体年齢を若くするには体重を減らすのが近道のはず。


 あれ…ダイエットが近道って、何だかねえ。

 困難な道のりだわ。

 う~ん、ダイエットの神様降りてこないかしら。

 

  

 


 

 


 

 


 

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