鴉の落とし物かしら


数日前のこと。


サンルームに洗濯を干そうとしたら、オレンジ色の何かが視界に入った。

半透明のルーフ越しに5㎝ほどの何か。

改めて見上げると枯れ葉にしては、何だか立体ぽいような。


直接目視しようと、二階の窓から確認した。

みかんに見える。

朝一番に窓の結露を取った時には多分なかったと思う。

あれば、気になるはず。

枯れ葉なら気にしないけど、みかんなら放っておけない。

だって、腐ったりカビが生えたら嫌だもの。

窓から身を乗り出し、柄の長い箒を使い何とか触れた。

下に落とそうと箒を動かすけど、なかなか思い通りに動かない。

これで転落したらちょっと恥ずかしいなと頭によぎったが、更に窓から身を乗り出し格闘した。


ぽと。


すぐさま階段を降り外に出た。

コンクリート上に温州みかんがとあった。

箒でひっくり返してみた。

中身がない。

皮だけ。

でも、一般的な剥き方ではないような。ほぼそのままの形。


それにしても、何故サンルームのルーフ上の中央付近に落ちていたんだろうか。

私は、それをごみ袋に入れながらふと前方を見た。

50mほど先の道沿いにある家が目に入った。


ああ、そういえば。

今朝、玄関前を掃いていた時に、二羽の鴉がその家の裏庭付近を上下していたのが見えた。

いつもは、近くの電柱の上で鳴き声を響かせたり屋根の上付近をうろうろとしてるけど。

「珍しいな…」

遠目だけど、しばらく鴉が上下するのを観察してしまった。


もしかしたら。

みかんは、その家からの略奪物だったのかも。

「何見てんだよ。見るんじゃあねえよ」と、じっと見ていた私への鴉の嫌がらせだったのかもしれない。

だって、鴉は頭が良いらしいから。

それとも、おすそ分けのつもりかしら。

いやいや、単に上空からの落とし物かしら。


う~ん、今年も変な世界観に没入しそうだわ。

わたし、大丈夫かしら。









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