雷 (今日は少しまじめです)

 昨夜は久しぶりに激しい雨が降った。

その音の強さにもしかして雹なのだろうかと玄関ドアを開けると大粒の雨が地面を叩きつけていた。

 しばらくすると雷鳴が轟き、時折あたりに光が走った。

雷が鳴るとわくわくする私でさえ恐怖を感じるほどのその状況に亡き母を思い出した。


 母は雷がとてつもなく苦手でよく怯えていた。

雷が鳴りだすと母は慌てて仏壇から位牌を取り出して数少ない貴重品と共に大切に風呂敷に包んだ。

そして、雷が鳴っている間ずっとその風呂敷包みを抱えて畳の上で丸くなっていた。

雷が遠のいたことを確信してからやっと起き上がり風呂敷包みの中身をもとに戻した。

 雷が鳴り出すたびに風呂敷が活躍するのだから、子供のころはその様子を見て「また始まった」とあきれながら笑っていた。

その包まれた位牌は生後間もなく亡くなった私の兄のもので、亡き子への母としての思いなのだろう。


 ただ、生きている私たちにはあまり手をかけてもらっていなかったなあ。


 半世紀を超える齢を重ねても自分の心の中に小さな子供の部分が残っていることに気づいた。

 でも、子供の部分があるからこそ小説らしきものを書けるのかな。

 いつか風呂敷包みを抱えた母のことを小説にかけたらいいと思う。

 


 

 

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