姑さん Ⅱ

 夫の両親が元気だった頃のこと。

舅も姑もとても話好きで帰省時には暇があるとずっと話相手をする羽目になっていた。ひどい時はそこに夫までもが加わって三者三様の話を同時にする。一人は食事のこと、もう一人は親戚の話、あとの一人は仕事のことなど。全くもって統一性がない話をそれぞれが同時にする。もちろん会話なのでそれぞれに返事も必要。そんな時は沼に嵌まってしまった感と共に同時に三人の話を聞くことについて、一度に十人の話が聞きわけられる聖徳太子とまではもちろん言わないが、心の中でほんの少し自画自賛していた。

 

 その時は姑さんと二人きりだったので三方向に意識を向ける必要もなくリラックスしていた。


「変わった方言があるんよ。」と、姑さん。

「えっ、聞きたい。教えて」


「水道の蛇口のことを言うんよ」

「うん?本当に、、、」思わず怪訝な表情で聞いた。


「うんそうよ。他にも面白いのがあるよ」

「なに、なに」不信感を抱きつつも本当のことなのかもと思い聞いてみる。

「自転車のことはね、

「えっ、そのまんま」

「そうそう他にもね」と言って自動販売機のことも教えてくれた記憶はあるが何というのだったかは忘れてしまった。


 その会話のあと夫に確認したが「そうだったかな~」程度ではっきりとはしなかった。最近になって思い出しネットで調べてみたが出てこない。

直接聞きたいが後悔先に立たずで姑さんはすでに他界している。



 そういえばあの時の姑さんの笑顔はいつもの天真爛漫な感じとはちょっと違っていたかも。

 

 やはり(騙され)ていたのかな。


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