夫よ、ごめんね。

 夫よ、ごめんね。

 先に謝っておくわ。

 あなたは、きっと知らないのだけど、あなたのことを度々笑いの種にさせてもらってるの。

 なぜかと言うと平和のためなの。

 平和には、きっと笑いが必要だから。


 なんてね…


 少し前の真夜中のこと。

 どこか近くで赤ちゃんネコの鳴き声で目が覚めた。

 我が家にネコはいない。

 う~ん、何処から聞こえてくるのだろうか。

 まさか壁の中に入り込むこともないだろうし、頭側の窓の下にガレージの屋根があるのだけどその上にでもいるのかしら。

 外は雨、大丈夫かなと心配になるけど、ごそごそとすると夫を起こしてしまう。

 どうしようか。

 ……あれ、よく聞くと鳴き声は、平行移動した先のよう。

 ……あれ、もしかして夫のベッドの方かな。そういえば夫のいびきが聞こえない。

 冷静になって夫の方に耳をそばだてた。

 「キューッ、キューッ」

 もしかして、いや、もしかしなくてもネコの赤ちゃんの泣き声だと思っていたのは、夫のいびきだったのか。

 こんないびきは、初めて聞いたわ。いつもなら「ゴー・ゴー」という音なのに。

 ああ、花粉症で鼻がつまっているからか。

 それにしてもあり得ないいびき。

 「さすが、夫だわ」と、布団の中で笑いを堪えた。


 翌朝、いつもの通り寝不足気味の私は、起床後直ぐに窓を開け、下を見下ろし確認したが、やはりガレージの屋根の上に赤ちゃんネコは、いなくてほっとした。


 数日後、夫はやっと耳鼻科受診をして、昨夜はいびきも軽かった。

 めでたしめでたし。


 何だかね私の夫って面白い。

 やはり最近のこと。

 夫の枕カバーを洗濯しようと枕から外したあとにファスナーを閉めようとしたら、中にカメムシがお歩きになっていて、これまたびっくり。

 逃がしてなるものかと、とりあえずファスナーを閉め、ガムテープを取りに行って戻ってきて、ファスナーを開けた。

 ……あれ、カメムシ動いてないような。もしかして、死んだふりかな。

 ガムテープで押さえてみた。

 ……あれ、反応がない。ピクリとも動かない。お亡くなりになってる。

 動いてたと思ったけど、私の見間違いだったのかしら。

 ううん、歩いてたわ。

 何故。

 もしかして、夫の枕カバーの匂いにカメムシが負けたのかしら。

 あとで夫に伝えたら「そういえば、数日程カメムシ臭い気がした」とのこと。

 う~ん、なかなかだわ。


 職場で面白いから暴露しちゃったけど、夫も今日外出先で私の黒歴史をお披露目したらしいからいいわよね。

 お互いに笑いの種なら喜んで……と、言うことで。


 


 


 

 

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