斎藤さんちの小噺

真堂 美木 (しんどう みき)

第1話 小さな笑い

 テレビ画面の馬刺しを見て「おいしそう~」と夫が声を上げる。

 

 ジビエの嫌いな私は「いらん、ぎゅう、うし、ぶただけで十分!普通の肉で十分」と、言い放つ。


 「......」


沈黙の後、夫が笑い声をあげて上から目線でニヤニヤして言う。


 「ふ~ん、ぎゅう、うし、ぶたでいいんやね」


 「しつこいなぁ、だから、...」

 「うん?」 

 「あっ!」

 「ぎゅう、うし、ぶた...」

 「と、とり、忘れてた!」

 「ぎゅうとうし、一緒やん」

 気づいて大笑いした。自分で自分が面白かった。


 また、言い間違えてしまった。このことを夫は次の面白いことができるまでしばらく言い続けるだろう。それならいっそのことクスッと笑えることを書き留めていこう。


嫌なことや辛い気持ちになった時のために。

 

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