こたつ布団

 昨日は暑いと言えるほどのお天気だった。

 日中の気温は25℃で室内も暖かかった。

 「よし、今日こそは掃除のついでにこたつ布団を取り除こう」

 天気が良いと洗濯物はよく乾くし心身ともにエネルギーが補給された気分になり、軽快に動くことができる。

 ただ、その後の夫の反応が気になる。どのような反応かは、容易に想像できるのだけど。落胆する様を半分、いやそれ以上楽しみにしている。

 夫のことを私は、寒がり猫君と呼んでいる。

 毎年のこと半纏をクリーニングに出す際やこたつを片付ける時には、全身全霊かというほどに抵抗する。

 だから、いつも夫が不在の時に実行する。


 「疲れた~」と、お日様の下での業務が多かったのか赤っぽくなった顔で帰宅した夫が居間に座って言う。

 「お疲れ~、お茶入れようか」

 「うん」

 お茶を差し出しつつ夫の顔を見た。

 何の反応もない。面白みがないなあ。いつもなら居間に入るなり気が付いて大げさな反応をするのに。やっぱり今日はかなり疲れたのか。まあ、歳をとって反応も薄くなってきたのかなあ。

 心の中であれこれ思い諦めたころ、急に夫が座椅子から飛び跳ねるような動作を見せ言った。

 「こ、こたつが。わ、わしの布団が。こたつ布団がない」

 やっといつもの反応があった。すっきりした気分。

 でも、時差というか間延びはやはり歳の影響かな。

 確かに私自身、鏡をのぞくとこんな顔だったかしらと残念に思うことが増えた今日この頃。

 多少の違いはあるかもしれないが、年だけは平等にとっていくもの。

 諦めるべきか足掻くべきか。

 まあ、ゆっくり考えよ。

 いや、その間にも時計の針は刻まれているんだったわ。



 

 

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