斎藤さんちの小噺

効果があったってことかしら

　ドンドンと、床がきしむ。

　最近の我が家の見慣れた光景。

　朝から夫が、狭い家の中をぐるぐると上半身を揺らしながら速足で歩いている。　　

　歩き終わると体重測定。

　「変わらんな～」

　「そりゃあそうでしょ。今日は、体重量るの何回目なん」

　「うーん、３回」といって、先程着たばかりの服を脱ぎ再び体重計へ乗る。

　「ほら、０．６㎏も違う」と、にんまり顔で言う。

　夫は、休日の早朝はウオーキングに出かけるが、平日や他の時間帯は暇があれば家の中を歩いている。田舎なので外を歩いていると車から「どこの誰べえなんだ」と、見られるのが嫌らしい。

　そして、日に何度も体重計に乗っては一喜一憂している。

　夫が膨らんだお腹を少しでも軽減すべく努力しているのは分かる。分るけどこちらとしては、埃はたつし何だか落ち着かない。いい迷惑だ。掃除が増える。

　でも、仕事を辞めた専業主婦としては文句も言えず、日々掃除に励んでいる。

　夫が買い物から帰ってきた。

　エコバッグから買った品をテーブルに並べていく。

　ニコニコとして最後に取り出したのはエクレアだった。

　そう、買い物が好きな夫は、休日になると自ら進んで行ってくれるので助かる。

　そして、必ず何かしら甘い品を嬉しそうに買ってくる。

　うん、夫の体重が減らないのはそりゃあそうだ。

　あれ、私は退職した当初に少し増えただけ。家でごろごろしている割には、ほとんど体重は変わらない。

　夫が埃をたててくれるおかげなのかな。

　掃除とイライラ気分で、消費エネルギーが増えているのかも。

　これって私には、効果があったってことかしら。