鴉さん、大丈夫ですか
一昨日の午後。
「カッ、カァア~…カッ、カァア~」と、大きな鴉の泣き声が突如響いた。
でも、……いつもと違う。初めて聞く鳴き方。
「カッ、カァア~…カッ、カァア~」
うん、やっぱり変だ。いつもなら「カアー。カアー」みたいな感じ。
おもちゃか何かなのだろうか。
「カッ、カァア~…カッ、カァア~」
いや、生の声っぽい。
移動する鴉の声を追いかける様にキッチンにいた私はサンルームに出た。
鴉がおかしな鳴き声を響かせながら西の空へと去っていくのが見えた。
上空は雨雲が覆い始めていて、その刹那強い風が吹き始めた。
変な鴉の鳴き方。
天変地異の予兆か。
竜巻でも発生するのか。
ドキドキしながら慌てて、サンルームの窓を閉めた。
風は、それ以上強く吹くことはなくほっとしたのだけど、キッチンの出窓にはじかれる雨音が聞こえ出した。
そうよね。降るわよね。
納得して逆方向にあるサンルームから外を眺めると、雨粒が落ちていない。
逆方向と言っても小さな我が家。ほんの数メートルのこと。
キッチンに戻り確認するとやはり雨が降っている。
サンルームに出たがまだ雨は降っていない。
しばらくして、二階にいた夫が降りてきたきた。
「さっき、鴉がね」
「うん、変な鳴き方だったな。風もな」
「そう。雨も。ちょうどこの付近が雨雲の境なのかな」と、夫に家の裏表で雨が降っていると降ってないことを説明した。
夫も確認して不思議そうな顔をした。
どのくらい後だろうか。
周囲全体を大粒の雨が斜めに叩きつけられだしたのは。
う~ん。それにしてもあの鴉の鳴き方。
何だったのだろうか。仲間に天候の変化をお知らせしたのだろうか。
それとも……。栗でも喉に詰まらせたのだろうか。
「カア‐カア‐カア‐カア‐カアー」
ちょうど今、上空で鴉の声が聞こえている。
いつもの鳴き方っぽいけど、何だか今日は忙しないような。
「鴉さん、大丈夫ですか」
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