第5話 臭いパニック
もう何年も前のこと、寮で暮らす息子が帰ってきた。
「ただいまぁ~」
その声に一つ年上のお姉ちゃんが居間から玄関のほうに顔を出した。
「おかえり~。。。うっ、くっ、臭い!」笑顔が瞬間的に豹変した。娘はその場をグルグル回りパニック状態になった。
「なっ、何、この臭い!ど、ど、どうした!」
「どっどうしよう、に、においがこっちまで入ってくる。こんなとこでご飯食べられへん!」
「そっそうや、風呂行って足洗っておいで。早く!」と、言いながら娘は消臭剤を直接息子にまでかけそうな勢いでスプレーしていた。
確かに息子の足は臭かった。寮まで車で迎えに行ったのだが息子が車に乗り込み5分もしないうちに車内には耐え難い異臭が立ち込めていた。
だが、数か月ぶりに返った我が家で風呂場に直行させられる息子の後ろ姿は哀れだった。
玄関の外に出された息子の靴は臭いだけでなく哀愁も醸し出しているように見えた。
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